第4話 装備はステータスにゃん

 二人は、冒険者ギルドの建物内に入った。そこには、二本足で立っている猫達でいっぱいだ! しかも鎧やローブを身に着けている。


 「凄いわ。おとぎ話の中にいるみたい」


 「……まあ、似たようなモノかもしれないけど。メルヘンな世界ではないからね」


 「おぉクロ。どうした?」


 カウンターにいる猫おやじは、片目に傷があり凄腕そうに見える。彼は、ギルド役員のタマ。名前は凄く平凡だ。


 「一応、召喚師になれたから登録に来た」


 「そうか。おめでとう……。で、召喚した者は?」


 「そのおば……人間」


 「だ、大丈夫なのか?」


 「たぶん大丈夫だと……」


 「お前より強そうだけど制御出来てるのか!?」


 「にゃ!? 強くないし! じゃなかった……制御出来てるし! 早く登録して」


 「おい、あれ……」


 クロが文句を言っていると、奥から声が聞こえ振り向き驚いた。


 ――なんで、ここにプレイヤーがいるにゃん!


 この地域に来るのには、強くなければこれないのと、イベントがないと入れないのだ。つまりこのプレイヤー達は、イベントを見つけ来た事になる。


 剣士の格好をした金髪の男、ローブを羽織った赤髪の男に金髪の美女。三人パーティーの様だ。


 「あら人間もいるのね」


 「プレイヤーだよ」


 その三人は、メデルを見て大笑いしている。


 「私、笑われている?」


 「たぶん、その格好だからじゃない?」


 「そんなに変かしら? 普通の格好よね? まあお出かけスタイルではないけれど」


 「ファンタジーの服装でもないけどにゃ!」


 ――どこにそんな格好でプレイするプレイヤーがいると言うんだにゃん!


 「おばさん。始めたばかり? ここがスタート地点?」


 「笑える~。何その格好。まさかここで、日本人・・・に会うなんて」


 「エプロン姿萌え~ってか? おばちゃん勘違いしすぎ」


 三人は、腹を抱えながら出て行った。


 「この世界では、エプロンって勝手に燃える・・・の?」


 「萌えないから! 現実世界から切り離された世界なのに、現実のまんまだからおかしいと言われたんだにゃん! 少しは、自覚してほしいにゃん!」


 ――逆に目立ってばれてないみたい。僕が召喚師に見えないのもあるかもだけど……。


 「なるほど。じゃ私もローブでも着ようかしら?」


 「気軽に言わないでほしいんだけど。この世界も服は作るか買うかするしかないんだよ。つまりお金を稼がないとダメなの!」


 「え? じゃ、クエスト受けないとね」


 「そうだよ。でもそれ出来るの僕だから」


 「え? 私は無理なの?」


 「メデルは、僕の眷属じゃにゃいか!」


 「大丈夫か? クロ……ほれ、登録証」


 「にゃ!? ……大丈夫。ちょっとここの常識を教えていただけです。それよりクエスト受けたいんだけど」


 「クロが受けられそうなのはこの辺か?」


 カウンターに、討伐に採取のカードが並べられた。


 「これにしましょう」


 採取のカードをメデルが指差す。


 「そうか。無難だな」


 ――にゃ!? 何故僕に聞かないで決めるにゃん!


 「頑張れよクロ」


 マの花の採取を二人は請け負った。

 二人は、建物の外へ出て目的地へと向かう。


 「はぁ……まあ、これなら難しくないか」


 「ねえ、所でクロちゃんはなぜ装備をしていないの?」


 「にゃ!?」


 クロは、古ぼけた木の杖を持っているだけだった。冒険者ギルドの建物内の猫族達は、それなりの装備をしていたのだ。


 「……装備は、この猫族地域ではステータスにゃん」


 「ステータス?」


 「つまり凄い装備している程、凄腕だって事」


 ギルド役員のタマが、制御できるのかと聞いたのは、メデルが装備・・をしていたからだった。


 「あら、じゃ……」


 メデルは、左手を口元に持っていき、かわいそうな目つきでクロを見つめた。


 「な、なんだにゃん!」


 「ううん。何でもないわ」


 二人は、無言で歩く。


 「結構山の上に行くの?」


 静かな時間は、三分も持たなかった。


 「すぐさきに、黒の草原がある……」


 「まあ、クロちゃんの草原?」


 「違うにゃん! マの花が咲いた草原があるにゃん! 色が黒いからそういう名にゃん!」


 「へえ。黒い花なのね。見てみたいわ」


 「……すぐに見れるにゃん」


 「それにしても私、疲れないわ。この坂を上ってるのに」


 「本来は歩くだけでスタミナが減るけど、メデルは僕の眷属だから移動ではスタミナは減らないんだよ」


 「まあ。クロちゃんのおかげなのね。ありがとう」


 ――この人、意味わかってないにゃん!


 「感謝するにゃん! で、ついたよ。ほら真っ黒でしょ?」


 目の前に広がる草原は、黒の中に緑があるぐらい黒かった。


 「す、凄いわね」


 「これから採取の仕方を説明するからちゃんと聞いてよ」


 「うん。宜しくお願いね」


 ブチ。

 そういいながらメデルは、マの花を摘む採取


 「うんといいながら何採取してるにゃ~!」


 「え? ちょっと見てみようと思って。ごめんね。採取の話ししていいわよ」


 まったく採取の意味を知らないメデルだった。

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