第5章 生放送を始めてみた

なにもしないということ

 世界はずいぶんと騒がしくなっていた。


 無関係な国など存在しない。今となっては『どちらに』つくのか、大事なのはまずそれ。


 †ダンテ†を手に入れてすべての国へとケンカをふっかける国がある。王は言う。すべてを変えるために、終わらせないために私はなんと言われても進み続ける。その国に素直に従い、あるいは抵抗をした挙句に打ち負けた国が傘下にいる。それらに対向するべくいくつもの国がまとまりあって、一時的な合衆国となってこれに対抗を続けていた。


 が、雪那にはひとまず関係のないことになっていた。与えられた部屋の中でベッドに腰掛けて、ただ天井を眺めていた。


 闘いから離れたことで喉の調子は回復してきた。しかしひとりごとを口にする趣味は雪那は持ち合わせていない。自然と部屋の中は静寂に包まれていて、だから部屋の外の声が紛れ込んでくることも多い。部屋の外は騒がしかった。けれどもやっぱり雪那には関係のないことだった。


「でも本当にいいのかな。私なにもしないでも」


 言うつもりはなかったのに、考えていたことを口に出していて、自分に独り言をいう趣味が実はあるんじゃないかと、首を傾げる。


 この国、カーヴェに匿われてから1週間が経とうとしていた。びっくりするほどにヒマである。


 この国の王は雪那を戦場に出すつもりは無かった。これは私たちの問題であると、冴橋にもこれ以上関わることを拒んできた。これって軟禁ってのなんじゃないかなぁ。と思ったりはするが口にはしない。


 こうしていれば二度と戦場に行くこともないからだ。

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