逝ってよし

 何度体験してもこの王の登壇を待つ間の空気に慣れなかった。


 自室に戻ってきた雪那は全身の疲れを癒やすようにベッドに倒れ込む。


 会ってほしいと言われた時は緊張したが、実際は広い部屋に二人きりで会うというわけでもなく、多数の大臣たちもいる中で王の言葉を聞くというものだった。それでも緊張はしたし、その時の王からの言葉を思い出してため息を吐いた。


「仕方ないんだよね、もう」


 ゴソゴソと服のポケットにしまいこんだ封書を取り出す。


 王の話が終わったあとに側近のものからひっそりと渡された封書。封はされたままでまだ中になにが書いてあるのかはわからない。しかしこれを渡してきた相手が相手なので、良いことは書いていないだろうとは予測できた。けれどもこのまま封をしたままというわけにはいかない。意を決して封書に手をかけた。


 慎重にビリビリと破っていって、中の紙を取り出す。キレイに折り畳まれた紙を開いて、上下が逆だったのでひっくり返す。書かれている文字を読む。苦い顔をして読み終わったかと思ったら、もう一度頭から読み出す。苦い顔がますます濃くなる。


 同じ手順で紙を折りたたんで封書にしまい込む。ポケットにしまい込むところまで再現して、がっくりと肩を落とした。


 紙に書かれた内容は雪那が思っていた内容とほとんど変わらなかった。


『ジャマをするような、荒し行為をする人間はこの世界には必要がない。

 こちらとしてはアカウントをBANをするのみ』


 わざわざ日本語でしかも言い回し方がわざわざネットの専門用語を交えてきて、雪那はそんなところに若干イラッとした。


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