最後の喧嘩 3

私「ねぇってば。何で物に当たるの?」














彦さんに何度かそう聞きながらも

私は室内物干しの無惨な壊れかたを見ていた…














『もう使えないな、』














そう確信すると彦さんへ目をやった。














彦さんの右手の拳から腕にかけて血が滲み出ていて

血の雫がぽたりとフローリングに落ちていた。














『私の大切な物を壊して…フローリングまで汚して…』














そう思うと私は完全にキレてしまった。














何を叫び、どうしたのか覚えていない。














気がつくと私は息を切らしながらも

ベットの上に立ち、彦さんを見下ろしながら

ガードされている彦さんの頭や顔を必死になって殴っていた。















気がついてはいたけれど音の無い世界で

時々、ガードしている腕と腕の間から見え隠れする彦さんの切なげな目が印象的で…

私は心の中で『ごめんなさい。止めて』そう思いながらも体は自分では止められなくなっていた














どれくらい私の暴力が続いていたのか解らないけれど、私は体力の限界が来ていて彦さんを殴りながらもフラフラになっているのがわかった。…













それでも止まらない私の身体を

彦さんは一瞬のスキをみて抱きしめ止めてくれた…














彦「ごめん、もえ…本当にごめん。」














そう言ってくれた彦さんの腕の中で

私は今までずっと我慢してた感情を涙という形で思いっきり、いつまでも吐き出した。














この日、私は気を失うかのように眠った。














彦さんはどうだったのかは知らないけれど














久し振りに…本当に久し振りに『無』の状態で眠りにつき朝までぐっすりと眠れた。














そして、この喧嘩が私達夫婦の喧嘩らしい喧嘩の最後となっている。














ちょっとした口喧嘩はあるけれど今現在まで

どちらかがグッと押さえ喧嘩を回避させてきている。













この形がいいのかどうかは解らないけれど

私達夫婦はそうすることでお互いが爆発することなく平和に過ごせている。




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