最後の喧嘩 2
この時の私は完全に全てをシャットアウトしている状況だったと思う。
私の中の怒りを圧し殺した後の状態…。
彦さんに「死んで欲しい」と伝え
出ていく彦さんを見ても何の感情も湧かず
淡々と夕食を作り、淡々と食べ、片付けをした。
することが無くなると
『あの人、上手にしてくれるかな?
とりあえず警察から連絡があったら泣いた方がいいのかな?
身分証が無い場合はどうやって調べるんだろう?
明日にでも失踪届けとかって出す?
ま、いいか、』
フッとそんなことを考えた。
しばらくして玄関が開く音がした。
彦「ごめん…ベルトが切れて死ねなかった。」
首に赤い後をつけて彦さんが帰ってきた。
私「そう…」
私は一瞬だけ彦さんをみたけれど直ぐに音の出ていないTV画面に目をやった。
彦「お願いだから感情を表に出してくれよ…
俺はお前に言われた通り感情を出すように努力したよ!親も捨てた!なのにこれかよ!」
彦「なぁ!こっちを見ろよ!おい!」
彦さんはそう叫ぶと私の視界に入るようにTVの前に移動し、私の顔を両手で包み私の顔を上げた。
それでも無表情の無感情の私は何も思わなかったし
言いたいこともなかった。
彦「もう、いい加減にしてくれ!」
そう叫ぶと彦さんはまた玄関へと向かった。
玄関に向かう途中、きっと彦さんの目にとまったんだろうと思う。
私が彦さんにお願いして2人で探し回って購入した室内洗濯干し…私が拘って選んだもの。
彦さんは怒りに任せ、それを叫びながら殴って壊し始めた…
その破壊行為はどんどん音が大きくなり
その音を聞いている内に私の怒りがまた沸々とわき始めた…
私「ねぇ、何で物に当たるの?」
私の声にハッした感じの彦さんは
私の顔を見て一瞬ホッとしたかのように見えた。
私「ねぇ、何で?
それ、私が欲しくて探し回ってやっと見つけたやつなんだけど。」
今度は彦さんが黙りを決め込んだかのように何も言わなくなった。
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