最後の喧嘩 1

次の日、彦さんは帰ってくるなり私の顔色を伺うかのように私の居るキッチンとリビングを行ったり来たりしていた。














何かを話すわけでもなく、ただウロウロする彦さんに対して思わず「うざい。」と言ってしまった私。














その私の一言がきっかけで彦さんは私に話しかけてきはじめた。













彦「実はあれからさ~」「今朝はね~」「お前の隣に座ってた人はね~」














次々に話される出来事。














それを無言で聞き流す私。













彦「もえ?機嫌が悪そうだね…」



私「ちゃんと話す気がないならしゃべるな。」



彦「何の事?」



私「わかってんじゃないの?」




彦「何をそんなに怒ってるの?」



私「怒ってるんじゃない。」



彦「だって、怒ってるじゃん。」



私「…そう言う風に思ってるんならもういい。」



彦「だから何?!」



私「本気?」



彦「……松田さんのこと?」



私「あの人、松田って言うんだ」



彦「何を言われたの?」



私「聞いたんじゃないの?」



彦「いや、聞いてない。話してもない。」



私「聞いてないし話してもないのに

帰ってきてから落ち着きもなくウロウロしてたの?」



彦「だから何を言われたの?」



私「私の口から言わせるの?」



彦「………もういい。」



私「笑えるね」



彦「何が?」



私「別に。」



彦「明日でも本人に聞くわ。」



私「そうしてもらえる?」













この日から私達は3日程、話も目を合わせることもしなかった。













我慢の限界だったのか、3日目の夜に彦さんがまた聞いてきた。













彦「なぁ?このまま口聞かないの?」



私「彼女から聞いたの?」



彦「俺はどうすればいいの?」



私「話は聞いたの?」



彦「頼むから俺を見て話してくれる?」













私は彦さんの目を3日振りに見た。














彦「もえ?俺はどうすればいいの?」














真っ直ぐに私を見る彦さんに私は














私「死んで。」














無表情でそう言った。














彦「そうか、そこまでだったんだ…解った。」














彦さんはそう言うと家を出て行った。

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