防御本能。
彼女の人目を気にしない遊びは彦さんの大きな声で終息した。
彦「もう終わり!降りて!重たい!(笑)」
彼女「何で~?キャー!やだぁ(笑)」
何をどうやって終わらせたのか声しか聞こえてないから解らないけど、彦さんは息を切らしながら私のもとへやってきた。
彦「はぁ…少しちょうだい。」
そう言うと彦さんは私の飲みかけのビールを勢い良く飲み干した。
彦「そろそろ子供達はお風呂だから帰る?」
そう聞いてきた彦さんに私は
私「片付けを手伝ってから帰るから。」
そう言って彦さんの目を見ることなく笑ってみせた。
彦「そうか、気を付けて帰れよ」
そう言うと彦さんは大きな声で子供達にお風呂に入るように指示し、親御さん達は片付けを始めた。
ある程度片付いた所で私は集まったゴミを捨てに行き帰ると親御さんに告げ挨拶をしてゴミ捨て場に向かった。
この時の私は不思議と『無』だった。
考えようとしなかったのか、もうどうでも良かったのか、さっき目の前で行われていたのは頭の可笑しい人達の悪ふざけ…私には何の関係もない。
そう思っていたのかも知れない。
そんな私に誰かが駆け寄ってくる音がして
私は振り返った。
辺りは暗く始めは駆け寄ってくるのが誰なのか全く解らなかったけれど、人影が近付くにつれて彼女だと分かり私は身構えた。
彼女「奥さん!今日はお疲れ様でした。
このまま帰られると聞いたので」
私「お疲れ様です。
突然、部外者が参加してしまってすみませんでした。」
彼女「いえ。彦コーチの奥様ですもの。
ぜんぜん大丈夫ですよ(笑)」
立ち止まり話している彼女の顔が
街灯近くの木々が風に揺れ一瞬見えた。
不適な笑みを浮かべてで彼女は私を見ていた。
私は思わず息を飲んだ…
彼女の笑みがとても不気味で、どれくらいの時間だったのかは定かじゃないけれど私達を沈黙が包み込んでいた。
そして、その沈黙を破ったのは彼女だった…
彼女「あの~正直に言いますね、
私、ご主人と寝てます。」
彼女の言動が衝撃過ぎて私は何かを思うことなく
ただ、凍りついてしまった…
彼女「聞こえてます?(笑)大丈夫ですか?(笑)」
そんなことを彼女は言ったと思う…
彼女の声がとても遠くで聞こえてた
この時の感覚は今思い出してみると
卵管ガンを疑われて奥先生から説明を受けている時の私の中の誰かが彼女の話を聞いているかのような、私の頭の中を大きなバリアが守ってくれてるような、そんな感覚だったと思う。
だから、この後彼女と話したのかは正直覚えていない
ただ、時々見える彼女の顔だけが記憶に残っている。
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