初対面。

自分の身体のことでいっぱいだった。














だから彦さんにも優しくなれず、日々働いてくれている彦さんに対して労いの言葉も感謝もなかったのは確かだった。














だからだったのかも知れない…














気がつけば彦さんは携帯を手放さなくなっていて

常に誰かと繋がっているようだった。













私に気付かれたくなかったのか着信音は消していたけど、頻繁に何かを打ち込んでいる指の動き。














私はそれに気付きながらも見てみぬ振りを続けていた…














そのうち、電話が鳴るようになっていった。














会話はほとんどが相づち。














けれど、携帯から漏れてくる相手の声は明らかに女性…














『私がこんなに悩んでるのに…』














繰り返されるメールと電話に私は腹が立ち

「いい加減にしたら?バレてないとでも思ってる?」

と、思わず言ってしまった。













この事を彦さんが彼女に言ったのかどうかは分からない。

けれど余裕のない私に対し彼女は益々大胆な行動をするようになったような気がする…













彼女と初めて顔を合わせたのは私が勤めていた旅館だった。













季節は忘年会シーズン。














この日は何組かの地元企業の小規模な忘年会があり

私達は忙しく仕事をしていた。













いつも私は仕事が終わると私服に着替えてから

お風呂に入らせてもらい帰宅していた。













この日は少し遅くなり慌てて浴場へ向かうと

とあるグループのお客様達が丁度お風呂に入っていた。













そのグループの中でひときわ目を引いた女性…

お風呂に入るでもなく、服を着たまま脱衣所でニコニコしていた女性…














女「あれ?お疲れ様です♪

これからお風呂ですか?」














彼女は私を見るなりそう言ってきた。














『お客様みたいだけど…何で私がここの従業員だと知ってるんだろ?館内で会ったかな?』














そう思ったけれど、お客様という頭があった私は













私「はい。

お客様はお風呂には入られないんですか?

当館のお風呂は全て源泉かけ流しなので是非お浸かりになって日頃の疲れと心を癒して下さい。」













そう、笑顔で答えながら服を脱ぎ始めた。














なんとなく、なんとなくだけど彼女の視線を感じながらも服を脱ぎ私は足早に浴場へ向かった…














お風呂から上がると彼女の姿はなく少しホッとした。














彼女の私の第一印象は『変な人』だった。

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