可愛くない嫁。
彦さんにぶちまけれるチャンスは
引っ越した次の年の秋の夜に来た。
あの日は私は休みでそろそろ寝ようと思ってた23時過ぎだった。
珍しく彦さんは寝室で来ていてウトウトしていた。
テレビを消して静かだった寝室で
彦さんの携帯が鳴った。
慌てて電話に出た彦さんはリビングへやって来て
私をみるとなにも言わず頷いた。
私は彦さんの意図をくみ彦さんと交代で寝室へ行った
いつもなら(仕事でもプライベートでも)10分も話せば電話を切る彦さんがこの日の電話は切る気配がなく
30分経っても話している様子だった。
私は静かに忍び寄り彦さんの声に耳を済ませた
彦「うん、うん…大丈夫か?
うん。…うん、1人で帰れる?」
聞こえてきた会話は電話の相手を心配している彦さんと、話をし続けている相手という感じにとれた。
彦「うん。わかったから、今から行くから…
ちゃんとそこ俺が行くまでにいろよ。
大丈夫。嫁は寝たから。
とにかく今から行くから…もう泣かないでいいから」
私は自分の聞き間違いだと思いたかった…
けれど、彦さんは電話を切り上着を羽織り
玄関へ向かうために私のいる廊下へと出てきた…
私「どこかに行くの?」
私の姿をみて驚いた顔をした彦さんに
私は聞いてみた。
彦「ちょっと…ね、出掛けてくる」
彦さんは私から目をそらしそう言った。
私「山田さん?何かあったの?大丈夫なの?」
彦「解んない。けど泣いてたから…」
私「泣いてたから行くの?
こんな時間に既婚者に泣きながら電話してきてたの?
ねぇ?おかしくない?
私が寝てたら黙って行ってたよね?」
彦「いや、ちゃんと言って行くつもりだったよ」
私「行くのは行くんだね。
1ついい?私が泣きながらこんな時間に男の人に電話かけてさ、その相手が来てくれるってなってさ、
彦さんは何にも思わない?」
彦「泣いてんだよ…酔っぱらってるみたいだし
仕事の仲間をどっかの馬の骨みたいなこと言うなよ」
私「その仕事仲間の周りの人達はあんたらの浮気をネタに盛り上がってんの知らないの?
バカじゃないの?(笑)
手料理に新しい下着にYシャツや肌着に口紅…毎週理由つけて休みの日に家まで行って仕事仲間です?(笑)本当に頭おかしいって!
100歩譲って仲間だとして、学生やないんよ?
行きたかったら行けばいいけどさ、少しは考えたら?」
決定的な証拠ではなかったけど
やっと言いたい事が言えた瞬間だった…
彦さんは得意の頬ピクピクになってたけど
私はスッキリして寝室へ戻った。
この日の夜は結局、彦さんは山田さんの所へは行かなかったけど、明け方まで話し込んでた…
何が山田さんにあったのか、分からないままだったけど…この日以来、お泊まり残業は少なくなり
休日に出掛けることはなくなった。
この時、可愛く泣きながら嫌だと彦さんに言えてたら私達の夫婦の形は違ってたのかも知れないと
今更ながらに時々思う…。
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