病院
不妊治療再開は彦さんにも私の家族にも内緒だった。
井奥先生と出会ったあの病院へ久し振りに行ってみたらたまたまなのか、その日外来にいた先生は
堕胎手術をしてくれた先生だった。
先「今日はどうされましたか?」
私「不妊治療していたんですが、卵巣が腫れてしまいしばらく休んでいたんです。
が…また再開しようと思いまして…」
先「そうですか、カルテによると…あ、あの時の…
あれから妊娠は?」
私「いえ。」
先「そうですか。では子宮と卵巣の状態を見てみたいので診察してみますか、」
堕胎手術の時の印象とこんな話し方で
私はこの先生の事をあまり好ましく思ってなかった。
私「はい。」
それでも、診察はしてもらわなければ話は進まない。
私は診察台へ上がり、診察を受けた。
先「もえさん、これが貴方の今の子宮の状態です…
えっと、腺筋症がかなり大きくなっています…
で、腺筋症というのはかさぶたのような物だと思ってくだされば解りやすいかと思いますが…
妊娠されると、子宮は子供の成長に伴い柔軟に大きくなります。
ですが、かさぶたがあるとその部分は固くなっている為、大きくなりません…
と、言うことはですね、早産や流産…最悪は子宮破裂を伴ってしまうという事です…」
あまり、好ましく思っていない先生の言葉は
私をイラつかせた…
私「それは、どういう意味ですか?
不妊治療をしても子供を授かれないという事ですか?」
先「そうとは言いきれないのが難しいんですが…
貴方の妊娠は危険を伴うという事だとご理解頂きたいんです…」
私「あ、はい。解りました。」
先「で、ですね…腺筋症のオペ方法なんですが…」
私「それは、調べて知っています。
ただ、その手術はまだ確立されてるものではないし、成功したとしても妊娠へ繋がるかどうかも解らないというやつですよね?
子宮本来の柔軟性も、機能も戻るかどうかは解らない。ですよね?」
先「そうです…
えっと、今日のご来院はご主人もご承知ですか?
出来ればご夫婦でお越し頂いて本当に今の状態でお子さんを望まれているのかお話をさせて頂きたいんですが…」
私「私1人で突っ走っていると?」
先「いえ、そうではありませんが…
もう一度…ご夫婦でお話あいをされてからの方がいいかと…
腺筋症の裏には筋腫のような物もありますし…」
私「卵巣は?腫れは引いてましたか?」
先「卵巣は前回と比べてみて少し縮小は見られましたが、まだ腫れている状態でした…」
私「そうですか…解りました。」
『とうとう、来るべき時が来たのかも知れない』
私はそう思った。
と、同時に
『お前は一生子供は産めない』
そう誰かに言われたような気になってしまい
この後、私は個人病院も大きな総合病院も車で通える範囲の産科を探し渡り歩き
『大丈夫ですよ』
そう言ってもらえる所を探した…
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