挑戦状その1
あれは、夏前だった。
彦さんは相変わらずバスケットの為に1日だけ
県外に行ってる時だった。
午前中に家事をそれなりにこなして
午後から彦さんの車を洗車しようと私は思い立ち
車の中を掃除している最中だった。
足元のマットを取り外し、外で払い
掃除機をかけようと助手席の足元にハンド掃除機を潜り込ませた時だった。
何かを吸い込んだのか、大きな音を立て
掃除機は急に吸い込まなくなった…
掃除機が吸い込もうとしていたものを確認してみると可愛い柄のハンドタオルが出てきた。
初めはそのハンドタオルはフミちゃんか
フミちゃんの娘ちゃんのものだと思った。
掃除機から取り出したハンドタオルを
私は手に持ったまま掃除を続けた。
今度は後部座席を掃除していると、シートと背もたれの間の隙間から何か出てきた。
それを良く見てみると
女性のパンスト生地の薄手の靴下だった…
嫌な予感がして、手に持っていたハンドタオルを良く見てみると趣味の悪い口紅が付いていた…
『車にこんなものを忘れる人は流石に居ない…
これは挑戦状だ。』
私はそう思い、車の中を念入りにチェックしながら掃除を続けた…。
結局、この他に出てきたのは助手席のドアポケットの中から片一方のピアス…
ご丁寧に留め具までしっかりと止めてあった。
そして私は考え、ある答えにたどり着いた。
『これは1人の女性からだ。』
例えば、彦さんが不特定多数の人と遊んだとして
皆が皆、こんな証拠を見つけて!と言わんばかりに置いて行くだろうか?
初めて会って、1度セックスしただけで
相手にバレないように隠すだろうか?
そう考えると、やっぱり何度も会っていて
何度も体を重ねて身も心も常に寄り添いたくなって私に気付いて欲しくての行動としか思えなくなった。
そして、私が取った行動は
また、不妊治療だった…
『子供さえ出来れば私は彦さんの浮気の1つや2つに、こんなに怯えることなく過ごせる』
そう、思ってしまった。
と、同時に私の彦さんへの監視が始まった…
彦さんの事を失いたくなかったのか、大好きだったのか、私の嫁としてのプライドだけだったのか
この時の感情を思い出そうとしても思い出せないけど…私はまたあの日々に戻ることが1番なんだと思い込んだ。
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