体の奇跡
井奥先生が私に見せてくれたのはエコー画面。
井奥「ここが卵管がある場所なんですが…
ここ、解りますか?
モヤモヤとしたものが見えますよね?
エコーでこのように見える場合…
卵管ガンの可能性があります…
まだ、詳しい検査をしてみなくては解りませんが
このように写る場合はほぼ…と考えていいでしょう…
で、ですね
腫瘍マーカーの検査をされませんか?
外注になるので結果が出るまでに1週間はかかりますが…それとMRIの予約を入れさせて下さい…
1番早い予約はいつなのか問い合わせてくれる?」
井奥先生の言葉を一語一句忘れないように、
間違って記憶しないように私は固唾を飲んで聞いた。
イメージ的には子供の頃にいたもう一人の私が聞いてる感じ…。
看護師「先生…木曜の10時です。」
井奥先生に指示され、内線をかけていた看護師さんがそう答えた。
井奥「木曜の10時にMRIの予約が取れましたが
腫瘍マーカーの検査はどうされますか?」
私「その、MRIでの診断を受けてから腫瘍マーカーの検査というのは遅いですか?」
私は自分でも驚くほど冷静だった。
井奥「いえ。遅くはないですよ
では、そうしましょう。」
私「すみません…」
私「あの…後1ついいですか?
私は卵管を1つ取ってるんですが…確か右側の卵管だったと思うんですけど…モヤモヤしたものが見えたのは…?」
井奥「右の卵管を切除されてるんですか?
……写ったのは右ですが、学会で切除された卵管が何らかの形で形成されたという症例が報告されてます。
人間の体の不思議な力の成せる出来事ですが
もし、その体の不思議がもえさんの中で起こったとしたら…と考えるとあり得ない話ではありません。」
私「そうですか、解りました。」
井奥「では、次の診察の予約を木曜の8時30に入れますので、来院されましたらまずはここに来て頂けますか?
それまでに出血が更に多くなったり、痛みを伴ったりした場合は直ぐに来院してください。」
私「はい。」
『子供達が寂しくて私を呼んでいるのかな?』
私はそんな風に思ってしまった。
『それならそれでもいいか。』
とも思った。
MRIの予約の木曜までの4日間、私は彦さんに話すか悩んだ…
初めての緊急手術が無事に終わり彦さんと落ち着いて話した時、彦さんは「もう大切な人をオペ室に送るのは嫌だ」と、言っていたのを思い出して…
結局、前日の夜に話すことにしたけれど
この時の私は不思議なくらい落ち着いていて
誰にも何も疑われず、心配をかけることなく前日まで過ごせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます