新たな出会い

私の横に腰を降ろした看護師さんは

穏やかな声でこう言った。






看護「ごめんなさいね、大変な思いをされてるとは思うけど…決まりだから…これ、書いて頂けますか?」





看護師さんの手には問診表があった。






私は黙ってそれを受け取り目を通した。







今日で2度目の問診表…






『今日はどうされましたか?』






の文字がジワリとやってきた涙のせいで

だんだんと滲んで目を凝らさなきゃ見えなくなり始めた…






看護「ごめんなさいね、怖いよね…

大丈夫。今、先生が来てくれるから…」






看護師さんはそう言いながら

私の背中にそっと手を当て

ゆっくりと撫でてくれた…







『どうして…こんなことに?』






看護師さんの優しさは私の涙腺を崩壊させ

私はそんな事を思いながら泣き崩れそうになった時だった。







「コツコツコツコツ」と、足早にかける

誰かの足音が遠くから近付いてきた。







看護「あ!先生がきてくれた…

先生!こちらです!」






看護師さんはそう言うと席を立ち

診察室のドアを開け駆け足でやってきた長身の医師を招き入れた。







私は問診表を書く間もなく直ぐに呼ばれ

診察台に横たわった。







医師「○○だね…○○を…」





看護「○○ですか?はい。」





私に何の説明もなく診察は続いた。








そして、診察が終わり私は先生の説明を聞くために

先生と初めて向かい合った。






医師「あ、もえさんですね。

今日は大変でしたね…あ、井奥と言います。

宜しくお願いします。」






私「あ、はい。」





先生は井奥先生と名乗った。





私の心を救ってくれた救世主のように私は思った。






井奥「えっと、今日お持ち頂いた紹介状には

子宮外妊娠の疑いとあったんですが、それは私の診断では大丈夫でした。

が、残念ながら自然流産です…

後、2、3日もすれば出血も落ち着くと思いますが

もし、落ち着かなければ堕胎手術も視野に入れて考えたいと思います。」







井奥先生は淡々と、でも私に解りやすい言葉で話してくれた。






私「あ、はい…」







井奥「で、ですね…本題はここからなんですが…

卵管ガンの疑いがあります。」






私「はい?」






井奥先生は私に見えやすいように

パソコンの画面を私に向け静かに話し始めた。

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