他人事
私の4度目の妊娠は順調にみえた。
あの日は朝からいつものように過ごしていたけれど、皆を送り出し掃除をしている途中で気付いた…
トイレに行きたくなり、トイレへ…
いつものように拭き立ち上がり流すために便器を見ると真っ赤になっていた…。
それを目にした瞬間、私は血の気が去り
立ちくらみに似た感じになった。
『どうしよう…』
血に染まった便器を眺め私はどれくらいそこに立ち尽くしていたんだろう…
気が付くと滴り落ちる血に気付き
慌ててナプキンを当て新しい下着をつけ通っていた産婦人科に電話した。
私「あの…もえですけど今朝急に出血して…』
医師「今すぐに近くの産科へ行きなさい。」
先生はその言葉を聞いて私は我に返ったかのように急いで車を走らせた。
車を走らせながらどこの産婦人科が近いのか必死で考えとある産婦人科へ辿り着いた。
私「すみません、初めてなんですが…」
そこは最近出来たばかりの産婦人科にもかかわらず患者さんも多かったように記憶している。
受付「ではこれを書いてもらえますか?
後、保険証をお願いします。」
私「はい…」
私は保険証を出そうとして忘れて来た事に気付いた。
私「すみません…
保険証を忘れて来たみたいなんですが…」
受付「あ、なら取ってきてもらえますか?」
私「実は、私は妊娠していて
今朝出血し始めて…後で必ず持って来ますので
先に診て頂く訳にはいきませんか?」
受付「は?保険証ないんですよね?」
私「はい。今は手元にないです。」
受付「じゃぁ、ダメです(笑)」
忘れもしない。
決して若くない年頃のこの受付の人は
呆れたように笑ってこう言った…。
私は病院を出て直ぐに彦母に電話をした。
事情を説明すると、彦母は彦父に電話するように助言してくれた。
そして、彦父に電話し説明すると
彦父「直ぐに持って行ってやるから!」
そう言ってくれた。
私はまた受付に戻った。
受付「保険証お持ち頂けましたか?(笑)」
私「いえ、まだですが今舅が持って来てくれるので問診と受付だけでもさせて下さい。」
受付「は?保険証まだなんですよね?
なら、無理です。」
私「後30分くらいで届くんですけど…
それでも受付もさせてもらえないんですか?」
受付「はい。そうですね。」
私「あの…最初に私、伝えましたよね?
流産しかけてるって。出血が多いんです。
…だから早く診てもらいたいんですけどそれでもダメですか?」
受付「ですね、だって保険証ないんですよね?(笑)」
私「保険証ってそんなに大切ですか?
命より大切なんですか?」
受付「仕事なので、すみませんが保険証をお持ちになってからお願いします。」
人と話していてこんなに泣きたい気持ちになったのは初めてだった。
苛立ちと、焦りと、切なさと…
悔しさと、悲しさと、情けなさと…
とにかく色んな感情が私の中でごちゃ混ぜになって
ただ、雨の中立ち尽くして彦父を待つしか私には出来なかった。
もっと私が上手に説明できたら、何か変わってたのかな…そんな事を思うと急に泣けてきた…
彦父「もえ!これ!
それより何で傘もささずに…」
彦父が車を路上に止め駆け寄ってきてくれた。
私「ごめんなさい。ありがとうございます。」
彦父「それより…大丈夫か?」
私「私は大丈夫。」
彦父「そっか…、とりあえずしっかり診て貰って来い!」
私「はい…」
彦父「じゃぁ、お父さんは仕事に戻るから!」
私「お忙しいのにありがとうございました!」
私は彦父が持って来てくれた保険証を持って
やっと問診票を書く事ができた…
問診票には『どうされましたか?』という項目があり『不正出血』をチェックし詳しく書き進めていく内にまた涙が溢れてしまった…
結局、私が受付を済ませる事ができたのは
病院についてから1時間経ってから…
そして、診察してもらえたのは来院して2時間30後だった。
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