第13話 妖精と小芝居
「なんか在り来たりのセリフなんだよね〜、もっと驚いてほしいし、私のテンションを上げることを言ってほしいの」
「…たとえば?」
少しイラつきながら、フヨフヨと飛びながら偉そうにしている妖精に聞く。
「そうだな〜、たとえば『ど、どひゃ〜!よ・妖精様〜!!あぶない!あまりにも可愛くて失神するところだった !こんな可愛い妖精様を召喚できるなんて、私って本当に幸せ者だ〜!!」
話をしながら凄い器用に動き回ってたな。最後の『幸せ者だ〜』のところはアキレス腱を伸ばす運動のような動きをしながら両手を天に万歳しながら叫んでいた。
「恥ずかしくないのか?」
「全然恥ずかしくない!これが本来の私を見たときのリアクションだから!はい、これやって!」
なんて図太い神経してんだ…。恥ずかしいが仕方ない。心の中で『これは自分のせい』と何度も唱え、深呼吸を数回繰り返し覚悟を決める。
「よし!いつでも良いぜ」
「それじゃあ、いくよ!ボフン!」
「ど、どひゃ〜!よ・妖精様〜!!あ…あぶない!あまりにも可愛くて失神するところだった。こんな可愛い妖精を召喚できるなんて、俺って本当に幸せ者だ〜!!」
恥ずかしい!!動きまで全て見様見真似で再現したから余計に恥ずかしい!!今の俺の体勢は天に万歳している状態だ。天に万歳っていうか妖精に対して万歳している。顔が熱い。これで満足なんだろ!
「う〜ん、やっぱり『幸せ者だ〜』のあとに『これで私の冒険は安泰だ〜!』も付け加えて、もう1回やろうか」
さすがに我慢の限界だ。
「それでは、妖精様。今から帰る方法を探すので少し待っていて下さい。そしてもう2度と会う事はないでしょう」
「わ〜!ウソウソ!冗談だよ冗談!フェアリージョークだよ!」
俺の右の人差し指にまとわり付く。柔らかく暖かい体温があることにドキリとする。
「分かったから離れろ!メニューから帰す方法探さないから!こっちこそ最初冷たい態度して悪かったよ」
「ホントに…?離した瞬間に探さない?」
ガッシリと全身を使って手の甲にしがみついている妖精を説得する。
「しないから。離してくれよ。まだお互いに自己紹介してないし、離してくれないと自己紹介出来ないだろ?」
「うん…。なら離す…グスッ」
ゆっくり指から離れて目の前で泣きそうになりながら停滞している。おいおい。さっきまであんなに元気だったのに、なに泣いてるんだよ
「ごめんごめん。泣き止んでくれよ。俺も少し言い過ぎたよ」
泣いている女の子なんてどうすればいいのか分からなかったが、とりあえず妖精の頭を人差し指と中指で優しく撫でてやる。記憶をなくす前の俺!教えてくれ!
「泣いてないし…。あなたの自己紹介して」
「お、おう、俺はマリーだ。よろしくな」
妖精の頭から指を離し、俺からするのかよっと思いながらも簡単に自己紹介する。
「私の名前は『エリー』ちなみに言っておくとレアリティは8だよ」
「レアリティ?」
召喚士の説明にも書いてあったな、マリアに聞いておけばよかった。
「もしかしてこのゲーム初めましての人?」
「初めましての人…?ああ、初めてやるな」
言い方にクセがあって一瞬何言ってるか分からなかった。
「じゃあ説明するね。レアリティはマックス10だよ。でも伝説でレアリティ11とか12も存在するとかしないとか」
「てことは、エリーってめちゃくちゃレアじゃん!すっげー!エリーマジすげー!」
「それほどでもないよ〜、私なんて只の羽根の生えた小人ですって〜」
すっごい照れてる。意外と褒められるの苦手なんだな。
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