第12話 妖精召喚!

 扉を開けて外に出ると宿屋の前だった。玄関と部屋が直結してるんだな。


「それじゃあ、お互いに冒険頑張ろうね」

「ああ。マリアもな」


 マリアが何処かに歩き始め、その背中を見送る…ということはせず、召喚士のスキルで召喚獣を召喚して契約?だったかをしようかと思い、もう一度マイルームに入ろうとすると


「そういえばマリー!ステータスも確認しとかないとダメだぞ!」


 と少し離れた場所からマリアが叫ぶ。本当に何故、3個目出なかった。本番に弱いのかな。

 宿屋『安心し亭』にもう一度入ると、先ほどのような〈YES/NO〉の質問はされず気づけばマリアと話していた部屋の中にいた。


「よしっ!今から1人で記憶を戻す冒険の始まりか!なんだかワクワクしてきたぜ!早速俺のパートナーになる召喚獣第1号を召喚しよう!」


 テンションが上がりすぎて何故か大きめの声で独り言を言う。


「よしっ!……どうやって召喚するんだろう…。そうだ!こういう時のメニュー画面だ!」


 メニューを慣れた手つきで開き、『召喚士』と『格闘家』という項目があったので『召喚士』を選択すると、召喚士のスキル一覧を見ると1つだけしかなかった。その1つだけのスキルが『召喚獣召喚』だったのでこれだろうと思い選択する。


【召喚獣を召喚しますか?(残3回)〈YES/NO〉】


 YESを選択すると目の前の床に魔法陣が出現される。


「す、すげぇ…これが召喚…」


 正直、初心者の気持ち的に強そうなのが召喚されると嬉しいな。最悪、男心的に強くなくても見た目がカッコいいのが良いなぁと考えていたら魔法陣が光り出しボフンと白い煙が勢いよく上がる。


「召喚された!」


 煙が消えていくと、15センチほどの大きさ。ピンク色の長い髪、前髪は切り揃えており頭の後ろ付いた大きな白いリボンが目立つ。白い肌には白い布がクロスしたビキニと短めのスカートと結構布面積が少ない。背中には半透明な白色の蝶のような羽根が生えている。見た目は妖精な妖精がポツンと空中に佇んでいた。


「よし…。まあ…な。あと2回あるし、次こそは…!いくぜー!」


 メニューを開き、先程のように召喚士の項目を選択しよとすると


「ちょっと!なんで無視するの?!」


 どうやったら召喚獣は戻せるのだろうかとメニュー画面で戻す方法を探す。


「ちょっと探さないで!私の帰し方を探さないで!!」

「チッ。気づかれたか」

「なにその舌打ち?!ありえないよ!一応言っとくけど私、妖精だよ!!妖精って、すんごいレアだからね!」


 なに?やっぱり妖精だったのか。でも期待していたのと見た目が完全に的外れだったから、勢いあまって強制送還させるところだった。とりあえず話を聞いてみよう。


「ごめん。つい思っていた召喚獣と違って冷たい態度とって」

「やり直して…」

「え?」


 なんかボソっと小さい声で何か言ったので聞き返す。


「やり直して!召喚して私が出てきたところのリアクション、やり直して!」

「えーと、つまり」


 突然意味の分からないことを言う。


「だから、私が今から『ボフン!』って言うから、あなたは私が召喚されたかんじで、気の利いたことを言うの!分かった?」


 何故、そんな小芝居をしないといけないんだと思ったが、最初に俺が冷たい態度をとってしまったのが悪いんだし、仕方ないか。


「分かった…。いつでも良いぞ」

「じゃあ、いくよ!ボフン!」

「うわーようせいだーすげー」


 どうだ、これで満足なんだろ。


「はい、やり直し!このB級大根役者!棒読みにもほどがあるよ!ちゃんと心を込めて言って!本物の妖精に会った時ってそんな驚き方しないでしょ?」

「分かったよ」


 酷い言われようだな。『これは俺のせいなんだ』と心の中で何度も唱えてイライラを抑え込む。次は100%で今回は言おうとしよう。


「よし、良いぞ」

「じゃあ、いくよ!ボフン!」

「う、うわー!妖精だー!!すげー!!」


 完璧だ。自分でも本当に目の前に妖精がいるんじゃないかと思ってしまうような芝居だった。


「はぁ〜、なんか違うな〜」

「はぁ?!」


 デカイ溜め息をされて呆れられる。どこが違うんだよ!ていうか早く冒険に行きたいのに、こんなしょうもない事で時間潰したくないな。

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