第9話 思い出す記憶と暗黒騎士

 始まりの鐘に着いて暗黒騎士らしきキャラを探すが見当たらない。まだ来ていないのか?

 始まりの鐘は、よくあるカップルで鳴らせば幸せになるとか言われてるような鐘を何十倍も大きくしたようなかんじだった。近くに行くと石碑があるので暇つぶしに読んでみる。


【100年前、冒険者が魔王討伐前に鳴らしたとされる鐘。鐘の音は始まりを告げる。低確率で鳴らすことが出来る。鐘の音を聴いたプレイヤーは1時間、HPとMPに+100される】


 暇だし運試しで鳴らしてみよう。鐘の真下に行き、鐘から出ている自分の体より太い紐を掴む。周りのプレイヤーがこちらを見ている。子どもが鳴らせるわけないって思っているんだろう。やって見ないとわからないだろ。っと思い、引っ張る。ピポーン。何か頭の中でクイズの時に押すボタンみたいな音がした。

 すると意外に軽く簡単に鳴らせた。カラーーンカラーーンカラーーンカラーーン

 よくドラマの結婚式とかで聞く鐘の音だな。結構うるさいな。

「すげー鳴らした!」「マジかよ!この鐘が鳴っているの始めて聴いた!」「本当に100増えてる」「嘘じゃなかったんだ」「俺試したけど鳴らせなかったのに」

 周りが凄い盛り上げっている。鐘の下から少し離れ、人が居ない場所で未だに鳴っている鐘を見つめる。まだ勢いよくカラーーンカラーーンと鳴っている鐘を見つめていると前に同じ光景を見た気がする…。

 頭の中に記憶が蘇る。


 黒い鎧を着た俺が鐘の紐を持ち、鳴らしている。周りのプレイヤー達が呆れ気味でこちらを見ている。鐘を鳴らすとプレイヤーたちは驚き俺を讃えてくれた。その中を歩き、ちょうど今俺がいる場所から、始まりを告げる鐘を見ながら冒険の始まりに興奮していたのを思い出した。



「思い出した…俺はこのゲームを本当にやっていたんだ」

 

こんなくだらない記憶だけど思い出したことが嬉しくて少し泣けてくる。


「凄いね。また鳴らすなんて運ヤバすぎ」


後ろから突然声を掛けられ声の方向に振り向くと漆黒の鎧を着た180センチほどの、声的には男であろうキャラが立っていた。漆黒の鎧には紫色の唐草模様のような線が腕や胸部、脚に綺麗に入っている。

そういえばさっき思い出した記憶で俺が着ていた鎧にそっくりだ

「もしかしてマリアか?」

「そうだよ。よく分かったね、ユーゴ」


記憶を思い出さなかったら多分気付かなかっただろうなと考えながら、まじまじと暗黒騎士の姿を観察する。


「どう?かっこいいでしょ?ユーゴの汗と努力の結晶だよ」


暗黒騎士を見ても先程のような記憶が戻るようなことはない。


「それより始まりの鐘を鳴らすの2回目だって知ってた?」


さっき思い出した。暗黒騎士の格好をした俺が冒険に出る前に鳴らした時のことか?

「ああ、冒険出発前に鳴らしたの合わせたら、これで2回目だ」

「そうそう冒険前に鳴らしたのと合わせて2回目…え?!記憶戻ったの?」

 

ノリツッコミをしながら驚く。暗黒騎士の見た目とは違いコミカルな驚き方をする。


「いや、ここで鐘を鳴らしたことがあることしか思い出してない」

「まだ借りれるっ…じゃなくて、凄いね!この調子ならあっという間に記憶戻りそうだね!」


 このゲームをしていればきっと戻ると俺も心の中で確信した。


「何のジョブにしたとか聞きたいけど、私たち目立つから場所変えよっか」


たしかに周りを見ればジロジロと俺たちを見てくるプレイヤーが多い。黒い鎧を着た奴と美少女は目立つな。


「マイルームに行こっか、一度私とパーティー組んで」

 

マリアは空中で指をを動かして何かし始めると、ポーンと頭の中に音が気こえ勝手にメニューが開き【暗黒騎士からパーティーに誘われました。加わりますか?〈YES〉〈NO〉】と表示される。暗黒騎士を見ると頷かれたので〈YES〉を選択する。

「それじゃあ、付いて来て」

 マリアが歩き出すので付いて行く。

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