第8話 ようこそ【Ner Equip Adventure World】
『いざ冒険の旅へ!』
カッと急に真っ暗な部屋が光る。眩しくなり目を瞑る。
数秒後、周りの賑やかな話し声と水の音が聞こえ少しずつ目を開けていく。目の前には今までの真っ暗な空間ではなく明るい外に居た。中世ヨーロッパ風の建物が並ぶ街、上を見れば太陽がある。下を見ればレンガが敷き詰められた地面がある。本当にゲームの中かよ…信じられない。耳を澄ませば人の声や鎧のガチャガチャする音も聞こえる、風も吹いているのを肌で分かる、匂いも風の匂いとなんだか甘い匂いがする。
自分の服装を確認すると『召喚士の装備』を装備していた。ローブの袖が少し長く萌え袖みたいになっているのが嫌だな。
すると目の前に魔法陣が出現する、そこから赤いハチマキをしたしっかりとした冒険者の格好をした20代くらいの男の人が出現した。
なるほど、自分もこういう風に出てきたのか。そういえば設定終わったらマリアに連絡しないといけないんだった。たしかメニューから接続したスマホで連絡できるんだったな。……メニューとは?
キャラクター設定で念じたら出来たし、もしかしたらさっきみたいに念じたら…
「メニュー出ろ〜メニュ〜」
思った通り目の前に透き通った水色をしたメニューの板が現れた。やった!上手くいった!と思っていると視線を感じて周りを見ると色々な人が俺を見ていた。さっきの念じてるとこ見られたのか…恥ずかしっ!
周りのみんなが俺の事をめちゃくちゃ見てる。何でだろう…と考えてすぐに分かった。そういえば、今見た目がマリアだった!こんなに美少女が独り言を言っていたら、みんなから見られるわけだ。そうだよな、こんな美少女がいたらそりゃ見るわな!恥ずかしくて頭の中が混乱する。
早くマリアに連絡して場所を変えよう!急いでメニュー画面からスマホの項目があり連絡先からマリアを探してメールを送る。
『無事に設定終わった。どうしたらいい?』
10秒ほどでメールが返ってきた。
『始まりの鐘の前で待ってて』
始まりの鐘とは?そういえば、メニュー画面にマップがあったな。マップを開くと『始まりの鐘』は真っ直ぐに歩いたら行けるみたいだ。もう向かっておくか。
「ねぇ、君1人?良かったら一緒にどう?」
歩き出そうとしたら声を掛けられる。さっき召喚陣から現れた赤いハチマキをした男だった。
「すみません。待ち合わせしてるんで」
歩き出そうとすると目の前に回り込まれ遮られる。改めて思うがマリア目線だと普通の男がデカく見えて怖く見えるな。
「待って待って、待ってる子も一緒で良いからさ、それに俺って結構強いしマリーちゃんの格好的に後衛の魔法使いでしょ?前衛の俺みたいのがいた方が良いって!ねぇ?一回だけパーティー組まない?」
コイツ、なんで俺の名前分かるんだと思い、バンダナ男の頭の上を見ると青い逆さまの三角形の矢印の上に名前が表示されている。なるほど、全然気づかなかった。にしても、この見た目の所為で嫌なことは皆無だと思ったけど、あったわ。うぜ〜、早く待ち合わせ場所に行きたいのに…
「すみません。絶対に待ち合わせしてる子も知らない人とパーティーを組まないので行きますね」
ハチマキ男を避けて歩き出す。回り込まれ前を遮られる。
「絶対に後悔させないし楽にレベルも上がるし得だと思うから一回だけ!ね!?」
鬱陶し!この場合はどうしようシカトして行こうかと困っていると後ろから声が聞こえた。
「おい、兄ちゃんナンパなんてみっともねぇからやめとけって」
え?もしかしてマリアか?勢いよく振り向くと、マリアではなく山賊か何かと思ってしまう様な汚い格好をした20代半ば程の男がいた。
「兄ちゃん、そのお嬢ちゃんも嫌がってんだ諦めた方がいいと思うぜ」
「て、てめぇ何なんだ!関係ないだろ!」
ハチマキ男が少し焦っている。一瞬マリアが来てくれたのかと期待して、知らない奴でガッカリしていたけど結構良い人だ。頑張ってくれ山賊みたいな人。
「ここでやめとくのはお前のためでもあるんだぜ。そこのお嬢ちゃんが通報したらお前は終わりだし、周りにいるプレイヤーもそろそろ通報するかもしれないしな。だから、ここで諦める事だな」
「うっ、分かったよ!くそが!カッコつけやがって!」
ハチマキ男は走って逃げていく。通報なんて機能があるのか次もあるかもしれないから覚えておこう。
「お嬢ちゃん、大丈夫だったか?おっと、安心しろよ。俺は別に礼やナンパ目的で助けたわけじゃねぇからな」
「ありがとうございました。もし欲しいって言われても、始めたばかりなのでお礼なんて出来ないですけどね」
見た目の割に凄い優しい人だ。これからは見た目で決めつけないようにしよう。
「気にするな。それじゃあナンパに気をつけてな!ハハハハハハッ」
豪快に笑いながらその場を後にする。頭の上の名前を見ると『黄金騎士』と表示されている。黄金騎士?名前と見た目が全く違うだろと思いながら、その背中を見送った。
周りが少しざわつき始めたので俺も逃げるように始まりの鐘に向かった。
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