第6話 ただいま、おうち

 兄とマリアが見舞いに来た次の日、午前中にお母さんが向かえに来てくれて病院で諸々の手続きを済ませ昼前に我が家に到着した。

 家は綺麗な一軒家だった。緊張しながら家の中に入り、お母さんにリビングやトイレやお風呂の場所を教えてもらい。2階に上がりお母さんに案内されて自室に入る。ここが俺の部屋。結構綺麗だ。ベットに勉強机と本棚があるだけで特徴がそんなにない。

 強いて言うなら全部黒い。ベットも勉強机も本棚もカーテンも黒い。記憶無くす前の俺は病んでたのか?


「相変わらず真っ黒な部屋だなぁ」


 後ろからお母さんとは違う声が聞こえ驚いて振り返るとお母さんは居らず兄がいた。お母さん、いつの間に下に降りて行ったんだ。


「俺とマリアは夕方には帰らないといけないからな、ちゃっちゃと入れ替えて帰るぜ」


 そう言いながら兄は持っていた紙袋から白いヘルメットのような物を取り出す。


「これがマリアのヘッドギアだ、そんでそこに置いてあるのがお前のヘッドギアだろ」


 指を指す方向を見ると机の上に段ボール箱と兄が出したヘッドギアとは色が違う黒色のヘッドギアが置いてある。どんでけ黒色好きなんだよ。


「これをどうするんだ?」


 机の上に置いてあるヘッドギアを両手で持ち兄に差し出す。


「何にもしねぇよ、ただ単にマリアのとお前のヘッドギアを入れ替えるだけだ」


 なんだデータとかをゴチャゴチャしたりするのかと考えていたが案外単純だな。

 兄は白いヘッドギアを差し出してくる、俺はそれを片手で受け取るともう片方に持っていた黒いヘッドギアを兄が持っていく。


「これで良いな、どうだ?今からゲーム内でマリアと会ってみたらどうだ?」

「良いのか?帰る時間とか大丈夫なのか?」


 さっきちゃっちゃと終わらせて帰るとか言ってなかったか?


「2、30分なら大丈夫だよ、先にお前はジョブとか色々決めないといけないから早く準備しろ」


 何故こんなにも焦ってやらないといけないのかと思いながら準備を始めようとするが


「これってどうやってやるんだ?」


 始めようかと動こうとしたが、全く分からず兄に聞く


「このコードをパソコンに繋いで携帯もゲーム中にイジりたいならこのコードとも繋いでおけ」


 テキパキと線を繋げていく。そういえばマリアがいないけど何処にいるんだろう?


「そういえばマリアは?」

「下で母さんとケーキ食ってるよ、初孫だからな甘々に可愛がられてるよ」


 なるほど、俺よりマリアを優先したから居なくなるのが早かったのか。


「セット終わり、あとはベットに横になってヘッドギアのおでこ部分にある電源ボタンを長押ししたらゲームできる」


 そう言われてベットに横になりヘッドギアを被る。


「チュートリアルが終わってキャラの設定も終わったらマリアに連絡してくれ。ゲームん中のメニューかなんかでパソコンに繋いであるスマホでゲームしてても電話かメールができたはずだから」


「OK、色々とありがと。あと俺がゲームしてる間に変なことすんなよ」


 冗談を言い、電源ボタンを長押しする。キィーーンと音がし出して眠たくなってくる。薄れゆく意識の中で『するかバカ』と兄の声が聞こえ意識がなくなる。

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