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翌日、ひたすらベルトコンベアに教材を流しながら、ひっそりと泣いた。なぜ涙が出るのかわからなかった。
昼食のときも、小休憩のときも誰とも喋りたくなくてずっとトイレにいた。
「具合悪いなら帰れば?」と誰かに冷たく言われたけれど「大丈夫です」と返した。
わたしは誠司さんというひとを男性としてではなく、人間として好きで、失いたくなかった。こういう感情を誠司さんにも強要するなんて絶対無理な話だ。
家に帰ると苦しさは増した。することがないと、考えることはそれしか用意されていない。
普段は電話なんてかけないのに、向こう見ずに誠司さんに電話をかけてしまった。彼は二コール目で出た。
「織ちゃん?」
「あ、誠司さんこんばんは」
「こんばんは。何かあった?」
誠司さんはいつも通り優しい口調だった。
「あの、誠司さん。きのうはごめんなさい」
きのうのこと。自分のこと、セクシャリティのこと。自分のことばかりを話してしまったけれど誠司さんは優しくきいてくれた。
「突然、すみません。こんなこと」
「ううん。話してくれてありがとう」
そう言う誠司さんの顔が想像できなかった。彼は俳優だから、優しさを演じていたのかもしれないなんて普段は考えないことを考えてしまった。
「また、俺から連絡するね」
つまり、お前からは連絡してくるなということだ。
「電話ありがとう。おやすみ」
「おやすみなさい」
布団に突っ伏して、泣いた。自分の涙で溺れそうになるくらい、鼻が詰まって、息ができなくなるくらい、泣いた。
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