1章7節4項(45枚目) 屋敷に侵入した者たちのその後の行動①
どこかの変質者のせいでクーシャと感動の対面にはならなかったけど、ひとまず彼女と再会できたのはよかった。服を
別に私が
それはともかく、私の愛しき御方と合流できたのだから、私たちは本来の目的である、
正確に言えば、100枚の仮面全ては回収できないけど。
その枚数はともかく、クーシャの
正直に言えば、私はこのままクーシャを連れて、キャッキャッウフフな展開に持ち込みたい。
しかしそうはいかない。
レオレたちに反対されたからではない。
クーシャが譲らないから、どうしようもない。彼女自身、仮面を目的に
今さら反対しない。不満がないわけではないけど、今さら決定を覆すつもりはない。どうにかなるのなら、クーシャ1人を送り出す前にどうにかしている。頑なに聞き入れてもらえないようであれば、もう諦めるしかない。
私は彼女の
だから目的とする仮面がある場所、屋敷の
正確に言えば、その部屋に備えつけられている隠し扉の先に仮面が置かれている。力技を除けば、その隠し部屋に入る方法は他にないため、ひとまず
地下通路にあった邪魔な岩を取り除いたように
しかし仮面を壊してしまう危険性があったため、無難な手段で部屋への侵入を試みることにした。
そういう裏事情は
灯りで道を照らさずに進んでいる。自分たちの居場所を教えるようなものだから、
地下通路のときと同じことをやった。戦闘準備が整っているレオレを先頭にして、その後ろに私たちが続く形で進んでいる。
そのときと違うのはクーシャがいることであり、さらに彼女の指示で動いていること。
クーシャが約1か月、潜伏していたときに手にした情報を基に屋敷内を進んでいる。
とは言っても、彼女が直接指示しているわけではないけど。
今、彼女は
地下通路のときのようにピルクに背負われていれば、それは叶わないから、クーシャの隣に並んでいる。私が
その先から伝わってくる温もりと柔らかさが何とも気持ちがいい。ああ、すごく心地いい。
勘違いしないでもらいたいが、クーシャの側から離れたくないからやっているわけではない。クーシャが動きやすいよう、補佐する目的でやっている。
このときばかりはレオレも私を
通常であれば、その上下関係が覆ることはないが、このときばかりは違う。
何故なら、本作戦に
この場に
私に対する見下した態度が鳴りを潜め、従順になる。
実際、腹ただしく思ってはいないだろうが、怒り狂っていたとしても私の言い分を聞き入れる。
今なら、クーシャを盾にして、彼を
けれどだ、今はしないし、そもそも清く
愛おしいクーシャの品格を
そのようなことよりも私は今、感激の極みに至っているから気にもしないし、思い返そうともしない。久しぶりに彼女の役に立てていることに歓喜しているから、レオレに対する怒りは些末にすぎず、問題としてどうでもよく、私を揺るがす価値にもならない。
ああ、本当に泣きそうになる。目的を放り出して、浸っていたいけど、そうもいかないから、我慢しよう。クーシャが果たしたいことを潰さないためにも、気持ちを引き締めよう。
しかしここまで順調だと気が緩んでしまうのも仕方がない。
つい油断してしまうほどに屋敷の中が静かだ。熱意が全て外に向いているから、空のように感じてしまう。聞こえてくる声や
そのことからして、
だからそこまで警戒せずに進めている。
そしてそのおかげで愛するクーシャの裸が
今は私の上着で露出を減らせているが、そこに行きつくまでは生まれたての姿でうろついていた。
彼女は全く気にすることなく、先頭で道案内をしていたが、私は気が気でなかった。酷く
あの姿は
それだけの価値があったとしても許されることではない。ときどき、がっつく気を起こしてしまう・・・いや、久しぶりに見られた整えられた肉体美に、
クーシャに服を着せていなかったことからして、なかったわけがない。性欲を
断言はできるが、その矛先を向けるべき相手・・・散々痛めつけてやった、あの
本当なら、ズボンも
その不安を消し去りたかったけど、断念した。クーシャの歩みを止められなかったから。呼びかけては無視、後ろから
仲間も彼女の姿を気にしなかったから、手伝ってくれなかった。一緒になって、後に続いていた。
どうしようもなかったから諦めるしかなかった。
だから一部でも隠すことにした。
見られる角度を限定させるため、移動中のクーシャに私の上着を着せた。袖を通し、ボタンを留めた。私が手伝って。
さらにクーシャを下がらせた。
指揮官がやられては不味いため、戦闘態勢が取れている、レオレに先陣を譲るように進言した。素早く敵を排除できる観点からしてもその方が安全だと主張した。言葉で説明するよりも行動を起こす方が手っ取り早いとしても、万が一を考えれば、用心に越したことはないと
本当は
説得が成功して、今に至り、そして目的地の
当然、レオレを先に行かせる。今までの流れを変えることなく、扉を開けさせ、中を確認させる。クーシャに危険が及ばないよう、細心の注意を払って。
先に入ったレオレから合図を貰ったから、残る3人、一緒に
大窓から照らされる月明かりのおかげで誰もいないことが分かった。1人くらい守りについているかと思えば、そうでもなかった。
初見で仮面の保管場所を探し当てられるとは思っていないからであろうか。
それとも余裕がないからであろうか。
いずれにしても私たちにとって、都合がいいことには変わりない。
「壁に
そこから入ろう、と言おうしたところで急に体が重くなった。壁を指差し、隠し扉を探させようとした、そのとき、異変が起きた。
私だけではなかった。仲間全員、例外なく、床へと叩きつけられた。無理矢理、平伏す形となった。
体を動かすことがままならないほどに強い力が働いている。このまま圧し潰されないよう、起き上がろうとすることくらいしかできない。実際に起き上がれないだろうが、せめてものの抵抗は死ぬまでの時間を稼ぐくらい。
しかしそれだけでは足りない。
このままでは本当に死にかねない。脱しなければ、その未来は確実に訪れる。何が原因でこのような目に
何とかして、この状況を抜け出そうとした、そのとき、また異変が起きた。
私たちが探していた隠し扉が現れた。壁の一部が崩れ、音を立てて、扉が開いた。
そこに目を向ければ、
体は満足に動かせなくても、顔くらいは動かせる。ゆっくりではあったものの、物音がした方向に視線を向けることはできた。
何故、私が早々に目の先にいる奴らの正体を断定できたのか。勘ではない。理由がある。
少なくとも当てずっぽうではない。
前もってクーシャから教えられていた仮面の1つを目にしたから、悩まなかった。1人は不明だが、確実に分かる、もう1人は
だから
同時に私たちが苦しむ原因も理解できた。この者の仕業で私たちは身動きを封じられているのだと。
そして
そうでもなければ、仲良く側にいるはずがない。明確な敵、もしくは怪しむ関係であれば、荒立てていないことが
「こんばんは、スニーカーズ。俺様は
ご丁寧にも挨拶をしてきた。予想通り、もう1人は
頭目自ら仮面の守りに入っていたとは。てっきり、
「殺す前に勧告だけはしておこう。君たち、俺たちの仲間にならないか。火事場泥棒の真似事を止め、素直に俺たちに汲みしないか。仮面を欲しがっているのであれば、その利益、争うことなく、手にしないか」
どういうことか。捕らえておきながら、交渉を持ちかけるとは。明らかに有利にも関わらず、何故、その特権を利用しない。命を盾に脅せばいいものの。
そして何故、自軍に引き込もうとするのか。
仲間との連係を乱す、最悪、身内から反目される危険性を買ってまで、行う価値はあるのだろうか。目に見える不満を作ってまでやる必要はあるのであろうか。
ところで、スニーカーズ、とは何を指しているんだろうか。
こうして落ち着いているわけにもいかない状況だが、疑問が増えるばかりだ。
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