1章6節
1章6節1項(33枚目) 野次馬根性
「はああ、何だろうねえ」
途中、道に迷ったせいで予定していた日数よりもかかってしまった。
陽は昇っては沈み、沈むと同時に月が昇っては沈み、また陽は昇っては、を繰り返して約7回。雲に
1週間近くかかって、待望していた町に着いた。
到着が遅れたのは土地勘がなかったからだけではない。
正しい情報とはいえなかったから、難航した。適当だったから、すんなりとはいかなかった。俺に分かるよう、説明してくれなかったから、上手く事が運ばなかった。
そのことで怒りに震えた。道をまともに教えられないことに。痛めつけられた腹いせで俺に嘘を吐いたことに。
こんなことなら、嫌でも一緒に連れて歩くべきだった。俺が目指す、ホコアドクに行ったことがある経験者を優遇しておくべきだったな。
悪党の一味だと思われたくなくて、すぐに始末したのがいけなかった。問題だと決めつけるのが早すぎた。始末することには変わりないから、恩情をかけてやるのも悪くなかった。そのときが早いか遅いかだけだから、もっと目標のことを考えるべきだった。
1人でもいれば、もっと早くに着けた。
思い直しても、結果は何も変わらんけどな。
しかし道に迷っても問題はすぐに解決した。
日頃の行いがいいせいか、幸運はすぐに訪れた。
そんなとき、ちょうどよく、道を教えてくれる者たちが現れて、嬉しかった。例え、人相が悪く、金品を
同じ失敗をしないよう、道案内させたのが功をなした。下手に時間を食わずに進むことができた。
抵抗されないよう、手足を引きちぎったのも功をなした一因だろうな。サボらないようにと思ってやったことだが、そのおかげで下手な抵抗されずに済んだ。生き永らえる道は俺に従うしかない、と素直に受け止めてくれたから、サクサクと進めた。大人しく話してくれたからこそ、道は開けた。
四肢をもいだ程度で諦めるしかない心意気だったから、あっさりといけたもんだろうな。雰囲気に流され、行動を起こしただけの貧者では容易いと言うことだ。まともに思考を巡らせることなく、決断した
そんな奴は1人いれば、十分だったから、残りを目の前で始末したのもその助けになっただろうな。暴れてくれず、下手に疲れずに済んだ。止血してでも生き永らえさせた価値くらいはあったというわけだ。
とはいえ、見逃しはしなかったけどな。
感謝はしても、手を緩める理由にはならない。
ホコアドクへの道順とその場所の動向を探るための情報収集の邪魔になると判断して、立ち寄った町の近くで始末した。人目のつかないところで生き埋めにした。治安組織に目を付けられ、足止めを食らいたくないから、処分した。
口を縛った上で土を被せたから、もうこの世にはいないだろう。助けを呼ぶための声を上げられないから、間違いなく、死んでいるだろう。
やりすぎかもしれないが、俺は被害者である。金品を狙い、暴力を振るわれたのだから。道化の仮面を被って、あっさりと返り討ちにはしたが、仕掛けたのはあっちが先だ。数に頼り、俺を襲った報いだ。
俺はやり返しただけにすぎないし、道理を守るつもりのない奴を人間扱いするつもりもないだけだ。相手を選んで非道なことをしているだけだ。痛い目に
しかし事情を知らない者からすれば、俺は間違いなく、悪党であろう。
俺の仕打ちを見れば、事情を説明しても信じてもらえないのは明白だ。大多数がそうであり、俺だって、そう思うわ。
顔が売れている凶悪犯でもない限り、周りは加害者を
いくら
よほどの
どっちにしても俺が求める情報は手に入らない。危ない人間だと思われれば、警戒心を抱かれ、距離を取られることになるし、相手になろうとする者も現れないだろうよ。面倒事には関わりたくないし、被害も受けたくないから、自然とそうなる。俺も無駄に費やしたくないから、同じ状況に立ち合えば、そうするわ。
無理強いでやるのも
ほどよくしていたこともあって、行く先々で俺が知りたい情報は
いくつものの目印を教えてもらえたから、1人でも行きやすかった。通るべきものが所々にあったから、道を見失わずに済んだ。見当たらなくても探せば済む問題だったから、そこまで苦労はしなかった。
それでも見当違いな方向には進んでしまったし、そのせいで時間もかかってしまったが。
しかし俺が
突然現れ、1つの町を根城にしている
未だに誰からも討伐されずに居座り続けていることは
過程はどうであれ、驚いたことには変わりなく、さらにこの町の最終的な監督役である、
1年近く町を支配する悪党を潰すため、
討伐したことだけを伝えるかのような動きではなかったから交わりたくなった。
衆目に晒されることになっても、確実に潰そうとする気概が感じ取れたから気になった。
まるで因縁の相手に差し向けるかのような勢いだったから、
勘違いであれば、それはそれでいい。流れてきた情報が大げさであっても、それはそれでいい。関わったがために死んだとしても、それはそれでいい。
ともかく退屈な日々を打ち破る可能性を秘めているのなら、行動する理由にはなる。刺激なき、人生など、面白くもないから、殺されたとしても全く構わん。死に際になっても後悔などしない。死にかけにならんと分からんことではあるが、そのくらいの念はある。
少なくとも
特に
この体が激情に満たされるのなら、どこにでも飛び込むさ。抜け殻になって、干からびて、ただただ生き永らえるよりはマシだ。短い人生であっても、
危険なのは百も承知。喜びを感じられるのであれば、あらゆる犠牲を払ってでも
命を大切にするのなら、実家など、飛び出していない。忠実に受け継いできた想いをずっしりと胸で受け止め、次代に
それだけは自信を持って言える。過去に戻れるチャンスを恵んでやると言われても、クソ喰らえ、と言える自信はある。俺が求めるのは未来にしかない。心拍数を跳ね上げる出来事に巻き込まれる日々にしか興味はない。
これからの出来事が分かり切った過去に用はない。痛い目に
俺の至上はそこにはない。俺が笑えなければ、いくらでも否定してやる。
世間一般で間違いであることを冒すことになっても、周囲の意見を拒絶してやる。排されることになっても構わん。ズタボロな目に
ともかく俺が楽しめればそれでいい。傷つくのも1つの楽しみだ。俺の未熟さに気づける、いい機会だ。
悔しく思ったのなら、さらなる
周囲など、割とどうでもいい。俺が欲するものが手にできるよう、気にかけているだけであって、割に合わなければ、平気で手にかける。与しないのであれば、生かす価値はなく、処分する方向に走る。
そんな心境で旅立ち、ホコアドクに着いたのはいいのだが、一体、どういう状況か。
町を囲う
門を潜れば、ただっ広い空間があるだけだ。奥に見える屋敷とその周辺を除けば、酷い有り様だった。
建物だったと思えるものはなくなっていた。火事でも起きたのか、燃えカスしか残っていない。そのカスも崩れかけており、空気の
町を
俺が到着する前に
そしてどちらかに軍配が上がっているのか。
既に勝敗がついているのなら、俺は完全に出遅れた形だ。好奇心で動いたはいいが、関わることなく、終わってしまったことになる。
不完全燃焼だ。わざわざ遠出したのにガッカリだな。
ただ本当にそうなのかもまだ分からないから、落ち込むのはまだ早い。
いや、まだ終わっていないと俺は思っているからこそ、町の中へと踏み込んだ。往生際が悪いわけじゃない。
確信ではないが、未だに
一見何もしていなささそうな人たちもいたが、周りにキョロキョロと目を向けていた。誰かが襲撃してこないか、警戒しているかのような目配りをしていた。いち早く気づくための動きに思えた。
それらを見れば、まだ
そこにいた人たちが
それに
そういう事情も加味すれば、迷うわけがなく、作業に当たっていた人たちが
奴らの正体とは関係なくなるが、その場所で受けた被害は火事によるものではないように思えた。間接的な原因ではあるが、直接的な原因ではないように思えた。
とてつもない力に当てられた、例えば、突風が直撃したのではないかと考えた。火事のせいでつむじ風が発生して、その被害を受けたから、ここまでボロボロにされたんじゃなかろうかと思っている。実際に見たわけじゃないから、分かったもんじゃないが。
それらに行き当たった考察はどうでもよくて、終わっていないと判断した最もな理由は傷付いた人たちの治療に当たる人たちが見えたからだ。その処置を続けるための緊急措置かもしれないが、酷く損壊した場所に留まる理由はそうそうないだろう。
設備が整った場所で治療する方が効率的であろうし、そこまで持たせるための処置を施していれば十分なはず。わざわざ建て直す必要はあるまい。時間がかかるのであれば、まだしもな。
これは推測でも何でもない。ただ思い至っただけだ。
見てもいない出来事の正体など、考えを膨らませたところで知ったことではない。近しい答えは分かっても、正確なところは分からん。
だから事実を知ろうとして、ホコアドクに立ち入る前にその外にあった
結果から言えば、分からず仕舞いだった。教えてくれなかった。
逆に危ない目に
割と簡略だが、そういう制度になっている。
しかし
抱き込むのなら、別だろうが、基本、仮面を持つに相応しい人物でなければ、持つことができない。申請するまでは同じだが、審査を通過して、初めて保持できる。
金銭はいらないが、自分の有能性を証明しなければならない
そういう事情があるから
そういった
だから金を積むだけで仮面を持てる、
中には違反してでも
はぐらかすのが困難な証拠の数々が突き出されれば、引き渡してしまうが、そうでもない限り、知らんぷりで押し通す。
当然だが、違反者にはそれなりの見返りを要求している。危ない橋を渡る手引きをするため、その分の苦労に対する手間賃は当然の権利だと言わんばかりに請求している。
俺は
そして
それでも怪しい者だと見初められれば、取り上げられることは十分にあり得る。
何か良からぬことを企んでいるかもしれないから没収する、とか理由をつけてな。
本格的に狙われれば、逃げ切るのは無理。
俺は
真っ当な戦いとなれば、間違いなく、負ける。1人の
だからこそ、さっさと逃げた。
仮面の存在が明らかになっていないから下手に言い訳せず、抵抗せず、その場を後にした。俺が何かに首を突っ込む際の重要な武器になるから手放したくなかった。
気概だけでは
幸いにも逃げ切れた。
捕まらずに済んだのはよかったが、結局、分からず仕舞いだった。
俺を
逃げられた理由はいいとして、
人っ子1人見当たらないから、そこで起きた火事がどれだけの
まさかとは思うが、
だとすれば、
分からないことに腹を立てても仕方ないが、別に本気で怒っているわけではないが、騒動が終わったかどうかの判断は不自然に残っている屋敷を確かめた後で判断しよう。
火事のおかげで最短距離で屋敷に向かえる。
もしも
この騒動の結末を見届けるためにも取り入るとしよう。
話が通じれば、いいものだな。
向かう先に
前に聞いた話の限りだと、町に堂々と居座っているようだから、そこにいるのはほぼ確定的ではあるが。その場所までは知らないが、
全部、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます