1章1節2項(2枚目) 世界再興物語と現実の共通点①
これはある星に点在する1つの物語。
細部に違いはあっても、大筋はほぼ同じ。
冒頭はそう、
そのような文脈で語られていく。
続きは次のようになっている。
その事実を語る証明として、星の頂点だと自負していた人類は人口数を大きく減らしていた。
大規模な群集を維持できなくなり、身内ほどの小規模な集落に分割され、各集団で生活を営んだ。
生活がひっ迫しないようにするため、できるだけ人数を抑えた。
しかし抑えすぎれば、生活に必要なものが手に入らない事態に陥る可能性もあった。
何とも判断が難しいところだった。
どちらにしても規模を縮小したことは変わらない。
その影響により、かつて世界各地、それぞれの場所で誇っていたとされる数々の建造物は
それだけに留まらず、交通網・流通網・資源採掘場なども無くなった。
終いには秩序と慣習が失われ、文明が滅びた。
長い年月をかけて積み重ねてきた結晶が崩れ去った。
そうして人間社会は
持ちうる力が小さくなったため、当然と言える。今を生き抜くので精一杯だった。その場を
それほどまでに人類は衰えた。
救いとしては水や植物や大地や空など、自然に
人類以外のあらゆる生命体の生息数も大きく減らしていたものの、絶滅していたわけではなかった。
つまり衣食住が欠けていなかった。
生命活動を維持するための食糧や水分。体温調整のための動植物の皮。雨風を
生き永らえる物資の存在により人類は辛うじて生存できていた。
それは人類以外の生命体にも言える。1人の人間が亡くなれば、それを糧にする生命体がいる。お互い様である。
それでも十分ではなかった。
使い果たしていく一方なので、このままでは全てを狩り尽くしてしまう。修復や育成に費やす余裕もないため、資源の枯渇と全生命体の絶滅は
その有り様から星は滅亡すると推察されていた。
しかしその運命は一変した。
正体不明の存在が世界各地に仮面をばら撒いた。そのときを契機に運命の歯車は狂い始めた。
もちろん、良い方向に向かってである。この星に生きとし生きる生命体にとって。
きっかけとなった代物はある一定の性質が宿る、特殊な仮面だった。
宿りし性質はかつてこの星に存在していたとされる性質ばかりである。
今はなき性質。使い手のいない性質。本来持ちえたものから遠のいた性質など。
仮面に宿っていた性質は大きく分けて6つ。
1つ目はサイコキネシス・ブレインコントロール・サイコメトリー・シンパシーなど、超常現象を引き起こす力を持つ性質。
2つ目は熱・雨・風・雷・氷など、自然現象を引き起こす力を持つ性質。
3つ目は反射神経・筋力・学習能力・問題解決能力など、肉体の枷を外し、潜在能力の解放を促す力を持つ性質。
4つ目は動物・昆虫・細菌など、他の種族、特にかつての星に存在した生命体に変身する力を持つ性質。辛うじて生息している生命体も含まれる。
5つ目は神仏・悪魔・妖精・妖怪・怪物など、他の種族、特に空想の存在だと扱われた生命体に変身する力を持つ性質。実在しても表舞台に立たなかった生命体も含まれる。
6つ目は享受・伝播・所有・波乱など、事象や概念をモチーフにした力を持つ性質。
仮面がばら撒かれた当時、揃えるのが困難な性質が多かった。
それでも揃えられた。
何でも星に刻まれた史実から汲み取り、凝縮・抽出した。
世界各地に仮面をばら撒いたとされる正体不明の存在がその方法を可能にする仮面を所持していた。
それが性質を揃えられた理由だとされている。
さらにその正体不明な存在は揃えた性質を仮面に封じ込める仮面も所持していた。
だから特殊な仮面を作製でき、世界各地にばら撒けた。
そのように伝えられている。
しかし特殊な仮面とはいえ、単体だけでは意味をなさなかった。
仮面に宿る性質を発揮する方法。
それは仮面を被ること。
生命体、もとい人間を媒介に仮面に宿る性質を再現する。それを以ってして、資源と労働力を生み出した。
しかし人類はすぐに仮面に飛びつかなかった。
仮面をばら撒いた存在はどれほどの成果を生み出せるかを知っていた。
けれど人類はその事実を知らない。
突如、ばら撒かれた仮面を初めて手にした人類は不安を抱いた。
仮面を被るとどのような影響を受けるのか。自分の身に危険が迫らないか。
好奇心より恐怖が先行したため、仮面を被ろうとする者は少なかった。
また仮面を被った後の内容が印象に残ったため、その数をさらに減らした。
仮面を被った後、誰が発したのか不明な肉声を耳にする。周囲に誰もいないときにもその声が聞こえるから不気味さはより増した。
その現象を解明できず、自分なりの答えも見出せなかったため、当人は怯えた。他者にその体験談を
さらに仮面を被り、肉声が聞こえた後、体が
これは仮面に宿る性質に合わせ、肉体が変態しただけである。その性質を最も発揮できるように体を組み直した結果である。
突然、耳元で大声で呼びかけられれば、声を上げてしまう。この事実を知らない者からすれば、驚くのは当然だった。
心配事や不安が現実になり、姿が変わったことに注目した。仮面の有能さを知る前に恐怖を抱いた。
仮面を外した後、元に戻れる。
それで安堵するものの、仮面を被れば、今までの自分とは異なる姿に
そのことを思い出して、二度と関わらぬまいと決断した人間が多かった。
仮面を被った後の姿を見ていた者も同様の感想を抱いた。
その体験談も
けれどその内容を疑問視する人数が多かったため、その有能さは広まらなかった。
非難され、差別され、
仮面を
これでは仮面をばら撒く前と大差はなかった。
しかしこのままでは駄目だと人類は理解していた。
習慣を変えなければ、今までと同じ。他に方法はない。これから先、見つけられる保障はない。心配事や不安を検証しなければ、疑念は消せない。
そして目にした、耳にした内容を
小さな観点からすれば、個が消失する。大きな観点からすれば、種が絶滅する。
無謀だと蛮勇だと言われても、被らなければならなかった。これから先、生きるためにも。
そのような心情の変化を経て、少しずつ人類は仮面に手を伸ばした。
また仮面の有能さを語る者の声に多くの人が耳を傾けてくれたのも一因だった。
多くの人に受け止めてもらえない理解しつつも、
何よりも自分本位に走りすぎなかったことが大きかった。
見境なく接触を図らなかった。付き
必ずしも怒りを覚えさせなかったわけではなかった。
それでも周囲に
さらに他者に寄り添う心得で伝える努力を怠らなかったのも大きかった。
仮面に宿る性質を教えた。その性質が生活に役立つことを説いた。見本を示し、そのことを証明した。姿が変わったまま、一生を過ごさないことも話した。もちろん、その証明も行った。
それにより各個人が抱いていた不安や心配事を打ち消し、人々に仮面を被る気を起こさせた。
こうして人類は仮面の有能さを知った。いくつものの要因が実を結んだことにより。
そして人類はかつての発展を取り戻していくかのように行動した。
小規模な集落の垣根を崩し、より大規模な群集を築いた。
それが巡り、星は活気に満ちていく。
人類が仮面を活用した結果、理想の現実に近づけようとする活力が生まれた。その指標に向けた行動を取れるようになった。
人類は再び、明日へと続く道を切り開けるようになった。
未知の代物を
そして人類の発展に多大な貢献を果たした存在。
人々はそのように呼称して、
もちろん功績はその存在だけではない。
仮面を被り、その身を削り、頑張ってくれた者たち。仮面を被れなくても、自分ができる限りのことを行ってきた者たち。その全てに贈られる。
仮面に宿る性質は誰もが扱えるものではなかった。
仮面を被る者との結びつきがあって、初めて発揮できる。
つまり相性が重要である。
無理矢理使えるものではなかった。仮面に宿る性質との相性が悪ければ、
逆を言えば、親和性が高い者ほど、仮面に宿る性質の真価を発揮できる。
それが理由で仮面を被れる者は限られている。
それでも被れる者は必ず存在した。
そして仮面に選ばれなくとも、歩みを止めなかった者たちの働きがなければ、今日の世界は成り立っていなかった。
付け加えると、仮面をばら撒いた存在も忘れてはならない。
本来振るえたはずの存在の代役を務められる。その引継ぎを容易にする。
その技術を持ちえた未知の存在がいなければ、確実に星は失われていた。その星に生存していた生命体も救済されていなかった。自然も絶えていたであろう。
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