【仮面世界】 仮面がばら撒かれた世界に派遣された者の活動記録(1章)

M-HeroLuck

1章

1章1節

1章1節1項(1枚目) 仮面の用途

 少なくとも、仮面には道具として4つの用途が存在する。

 1つ目は情報操作を行うとき。

 素顔を隠し、表情を読ませない。真逆の感情を写し、誤解させる。絵柄に注目させ、意識を逸らす。

 真意を他者に悟らせない目的で使用する。

 しかし行動に気を配っていなければ、真意が明らかになる確率は高まる。

 仮面を被る行為は工作手段の1つにすぎない。それ以外を怠れば、当然の結果と言える。口にするまでもないことである。

 2つ目は望む姿へと成り変わるとき。

 演劇でおきな老婆ろうばなどの役柄を表現する。疑念を持たれることなく、任務を支障なく遂行する。

 役柄を演じる目的で使用する。

 もちろん仮面だけに頼らず、服装や挙動を取り入れる場合もある。

 あらゆる視覚もしくは聴覚情報を相手に受け取らせることで演出を理解してもらう。演技の質を念頭に置いていれば、単一の場合が珍しい。

 また先の目的に加え、姿見の手間と費用を削る目的で使用する場合もある。

 この事例は制作側の事情を鑑みた結果と言える。

 3つ目は仲間意識を芽生えさせるとき。

 敬意を払い、敵対する意思がないことを分かりやすくする。社交場への参加を許された存在だと証明する。他者が掲げた旗印や発言した意見に同調する。

 警戒心を下げる目的で使用する。

 ただし色々な意味が含まれる。

 純粋に友愛を求めて、仲良くなり、謳歌おうかした人生を送りたい場合もある。

 秘匿ひとくしている物や情報を手にしたいがために近くづく場合もある。その場合、目的を果たした後の行動は事情と状況で変わるだろう。そのまま居続けるか、もしくは脱退するかは野望次第であろう。

 4つ目は功績を広めるとき。

 己がやり遂げた事実を知らぬ存在に刻み込む。後世に己がやり遂げた事実を証明し、存在を忘却させない。

 後々、あがたてまつらせる目的で使用する。

 つまり他者を服従させる狙いがある。

 己の思想や意見を他者に受け取らせる。己の代行で成果を上げさせる。他者の所有物や権利などを巻き上げる。

 それにより他者を掌握しょうあくし、己の采配で振る舞える。象徴が消失しない限り、その事態の終わりは告げられない。

 この場合の象徴とは仮面を指している。

 仮に仮面の被り手が変わっても、その仮面が存続する限り、事態は続く。

 くまでも他者をきつけているのは仮面である。その被り手は仮面が持つ畏敬いけいの念を失わせない者であれば、誰でも構わない。 

 このように目的次第で仮面の用途はそれぞれ異なる。

 しかしどれも他者の存在を気にしている点は共通している。

 真意を知られたところで問題ないと判断するのであれば、使う必要はない。本性による行動が許されるのであれば、使う必要はない。協力体制をかなくても活動できるのであれば、使う必要はない。しいたげなくてもいいのであれば、使う必要はない。

 つまりせるべき他者がいなければ、無用な長物である。

 それほど重宝されている代物ではない。世界に置ける重要な位置づけに至っていない。故に手段の一種として数えられているだけにすぎない。

 ただしそれは一般的な仮面に限る。

 いにしえにばら撒かれた数々の仮面は違う。その仮面の登場で5つ目の用途が生まれた。

 その仮面は生命体が持ちうる器量を超越しており、使い方次第では不可能を可能に成し得る結果へと導ける代物である。

 その結果、自己主張を強行させる切り札として、世界に腰かけている。 

 理として。決裁装置として。動力源として。

 使い手が限られているから、その意味に拍車をかけている。

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