狂気
狂気1
抵抗3で、私は私に真顔で目を合わせられる。と書いたが私のその顔はがらんどうだ。だからこの私は私である確証がない。私という自己を確立させるものとして基本的に人格があり、外見的なものでは顔や体が存在する。その顔自体が空洞で、人格は私の中の私の時点で覆すことが出来ない。私が多数の人格を所有してると言われたらそれまでだが、生憎私は、解離性同一性障害ではない。
じゃあ私は誰で、誰が私なのか。
私が私と会話するときその光景は暗闇ではない。靄がかかったようではあるがしっかり人が映る。毎回ではないが。鏡と面と向かっている自分を想像してほしい。その鏡には上からひょこっと言ってくるやつなんかもいる。それはすべて私である。
私はその私の動きで私の感情を察する。あきれていたり、怒っていたり。なぜ自分をなだめなくてはいけないんだ。
そのうちに耐え切れなくなって叫びたくなる。
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい......」
その叫びは周りのそれに対する抗議でかき消される。
「うるせぇもっと考えろ」
「おまえがまいた種だろ」
「きみがあんなことしたのが悪いんだ」
脳が熱く熱くなっていく。これを狂気と呼ばずしてなんていうのだろう。明らかに狂っている。空虚な顔の自分が自分に向かって叫びだす状態。
鏡を見ているのなら自身の境目が分かる。ただこれは境目がない。どの視点から自分が見ているのかすらわからない。自身がどれであるかわからなくなり、自己の確立があやふやになり発狂する。私はだれ。誰が私。私はどんな人。
熱が脳に集まり末端が冷える。氷のようだ、酸素は足りない。狂い切らないように私は右手で自身の左手をつねる。爪でひっかく。痛みで多少の感覚が戻る。手や足が痙攣する。私が私に何か言っている。私も何か言っている。なんて言っているかはもう聞こえない。
そのうち私は意識を手放す。
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