対話3

 大人は自分のループした思考に苛まれて、その扱えない自分の感情に流されながら寂しさと共に夜を過ごすと勘違いした私は、意識してものを考えるようになった。色について、自分について、人について、感情について。

 私の世界はネットを使うにつれ広くなり、段々とたくさんのことを考えるようになった。そして自分のことをよく知りたいと思うようになった。はじめはただ興味のわくこと、不思議なことに対して深く考えるだけだった。昔と同じ。夜でなければ。なぜ夜にだけこうショート寸前になるのか。ふと考える。夜はきっと情報が少ないのだ。暗くて視覚からは何も与えられず会話もなく、本当に自分だけの世界。

 そうやって、どうして、なぜと問い続けるうちに私は元の考え方を思い出していった。そして段々と自問自答と自己否定を繰り返すようになった。


 私が考えるのは私自身のこと。私は誰。誰が私。私の存在意義は。私は私の中の私に問いかける。そして私は答える。私は私であって私じゃない。と。私の思考はこうではない。私というのはこんな人間ではないと。

 

 そのうちに私は知るのだ、普通は私のように思考がループすることはないと。そして段々と思考のループは昔よりも長い長いものとなり私を苛む。私はこうありたいのに私が私を否定する。私が私であることを私が拒むのだ。好きでそうなった訳ではない。昔からの癖と少しの興味と恐怖心が生んだ無価値な行動だ。私はそれを封じ込める方法は知らないし、既にその波にのまれきっている。

 何度も何度も灼けるような脳と凍るような身体と夜を過ごした。あの夜に生産性はなくこれからも生きることはないだろう。それでも私は私と対話し続けるのだ。

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