対話2
私はそのうち考え事をすることを辞めた。寝る時間に干渉されることが減ったのもあり、本や漫画を読むようになった。受験の時に父親に本をすべて隠されたときは書斎の新書を。そうこうするうちにループすることは無くなっていった。ふと思い出したように恐怖が襲ってくる以外は。
思考のループは他事をすることで止むが、恐怖のループは何をしていても終わらない。なにも手がつかず、手が震え冷たくなり手先まで鼓動を感じてかゆくなる。その恐怖の対象は自分ではどうしようもない自然災害であったり、突如思い出す自身の将来であったり様々だ。そうなってしまったら最後気を紛らわせるように本を漁り、時には勉強までして夜を過ごす。
夜は綺麗だと思っていた。大人が静かに騒がしく過ごす夜。綺麗に見えていた夜は綺麗なのではなくただただ孤独な時間だった。穢れた大人が独りを過ごす時間。寂しさを紛らわせるように人は集い酒を飲む。明かりを沢山灯すことによって怖さを上書きする。子供の時に見ていたあの素敵な夜は、大人の虚無感だったり喪失感だったりの儚い虚像が見せていた大人への憧れでしかなかったのだ。
そう私は悟った。こうやって他の大人も気を紛らわせているのだろうと。そしてこの感覚すら麻痺したとき何かが壊れるのだと、本当にそう思っていた。
普通、こんなに思考がループすることなんてないと知ったのは高校に上がってからだった。
私の世界はまだ上下3学年程度の狭く浅い世界だったので知る由もなかったのだ。知っていたらこの後ループしなかった自身の思考をまたループさせようなんて思うはずがないのだから。
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