第18話
秋が目を開ける。そこは見渡す限りの海と、空。雲という夏のきれいで純粋な海を模した世界だった。
「やった!!成功だ!!」
秋は喜んでいる。そう、秋の望み通りの世界に到達する事に成功したのだ。
◇
秋は今、このどこかも分からない異なる世界。その時空でただ宙に浮いて漂っていた。
秋の足元には青い海。秋が上を大きく見上げるとそこにはまた蒼い空。そこはまるで見る者の心をクリアにするような青々とした光景がただひたすらに、そう神界のように続いていた。
「―――俺の思った通りの世界だ」
秋はこの世界を見てそう現したのだ。あの夜が光る星空の世界などではなく、青い世界。そこを秋が選んだのには理由がある。
「やっぱり、要素の一つ一つが扱いやすい。満足だ」
そう。秋の足元に広がっている海。これは要素の海。スキルの要素が形作る海なのだ。
(さてさて……じゃあ、やってみるか、要素の海から、特定の要素を『掬う』)
秋はそう念じる。掬うイメージを以てして要素の海に働きかける。すると要素の海は答えたのだ。
音もなく、どこからともなく現れた透明の様な波打つ球体。その球体は要素の海に波の一つすら立てずにスウッ…と秋の目線の高さまで浮かんできたのだ。
(よし、掬えた。じゃあ次は……そうだな、『掬う』。そして『混ぜる』)
秋が創造しようとしている魔剣創造スキル。その構成要素の材料とは魔剣×2・魔武具・極・支配術。この“要素の力”が今持っている要素の中でもピカ一に強いこの三つを混ぜるためには、オートでやるには扱う事のできないものだったのだ。
そしてもう一つの要素。“魔武具”の要素が浮かび、二つの水球が音もなく合流した。そして突如銀色の光を上げて神々しく輝いたかと思うと、そこには芸術品の様な水銀を思わせる純全足りえる銀の色をした球体が宙に浮いていた。
(そして最後だ――――要素。“極・支配術”)
秋は最後にそう念じると、銀色の球体の隣にそっと置かれたもう一つの水球。それが“極・支配術”の要素。
元々の秋のコンセプト。それはお互いに我の強い二つの要素を支配術で強引にスキルにしてしまおうという作戦。幸いな事に魔剣には使用者の魂を喰うものや使用者に反逆の意志を示すものなども十分にあるというゼウスからのアドバイスを聞いていたため、そして我の強い要素に他の要素を混ぜすぎるとケガをするという秋の直感からこういった要素を行使してスキルを作ろうと決意したわけだ。
そして秋は最後に念じる。『混ざれ』と。
その意志に従いお互いを飲み込もうと水の球体と銀の球体が近づいていく。そして球体としての輪郭がお互いに食われ始めたころ。秋は若干額に汗を浮かべていた。そう、混ぜるのに苦労をしているのだ。
感覚としてはS極とS極というお互いに同じ極同士をくっつけようとしている感覚というべきだろうか、そういった力の反発から出てくるもどかしさが余計に秋の力を行使させる。
だが、ついにその成果は現れた。
違いの輪郭を保ちながら混ざることなかれとしていたお互いは、その輪郭を徐々に塗りつぶし始め、そしてついに一つの球体として完成したのだ。
―――ピカッ!!!!
突如電気を貰った電球の様に銀色の光を放つ球体が金色へと変化する。それは銀と白金の光。お互いがお互いを潰すことなくその色を放ち、そしてお互いの色に影響を受けながら同調していく。その光もまたやがて一つとなり、完全な白金となったが、白の中に微かに残っている銀の粒子がなんとも幻想的だ。
「―――綺麗だ」
思わず秋が声を漏らしてしまうぐらいには。
そしてその球体は迷う事なく秋の胸元へと飛び込んでいき―――そして吸収された。もはやあの球体は完全に仲岡秋のものになったのだ。
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魔剣創造・極
ある昔、未知に挑もうとした少年が未知に立ち向かうために自らに最高の剣を用意しようと創造したスキルの一つ。仲岡秋専用スキル。
魔剣創造
魔力を消費して魔剣を創造することができる。創造に必要な魔力は使用者が求める強さのランクによって魔力消費が大きくなる。
魔剣異界保存術
一度作り出した魔剣を異界から取り出す事ができる。魔力消費は存在しない。
魔剣支配
創造した魔剣を完全に支配することができる。常時発動。
滅刀流第十三の型・阿修羅
魔剣9本分を消費して発動することができる。魔剣を9本まで操る事を可能にする。
滅刀龍奥義・千手滅観音(※現在このスキル能力は使えません。制限がかかっています)
魔剣を無制限に創造・支配する事が可能となる。大きな魔力消費を持って初めて可能とするスキル。
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「うわ………やっぱりすげえな……これは…」
そして、慣れない世界で慣れない作業をした秋には、当然ともいうべきか意識が遠のいていく。そして秋は途方もなく強くなった自分の武器を用いて、また現実世界に戻るのだった。
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