第16話

夜空の世界に秋が潜ってから。秋の体感で2時間が経過した。


秋はあのスキル『完全武装術』を創造してから、その夜空の世界―――『スキルランダム創造』の操作方法を完全に会得したのだった。


そして秋は夜空の世界で自分の体を完全に制御し、そして自由に移動する事に成功したのだ。今秋は、まるで泳ぐように夜空の世界で宙に浮き、体を横にして飛んでいる。


夜空の世界―――その世界は要素とスキルの可能性に応じて広さを変える。そして夜空の世界に浮かぶシャボン玉は、その要素が織りなすスキルの可能性を示し、そして真っ黒な世界を照らす星々もまた、スキルが及ぼす自身の可能性。そしてスキル所持者である仲岡秋の可能性を示しているのだ。


それをシャボン玉に触れた時に情報として伝わり、スキルを創造した際に完全に理解したのだ。


「さて……どうするか」


秋はこの夜空の世界で迷っていたのだ。それはいくら世界を動き回ったとしても、自分が望むスキルの形―――自分の求める要素で織りなすことのできる強力なスキルが存在しないのだ。


「大体どれも俺が欲しいスキルじゃない……。あれだけの要素があればどうにか強いスキルが創造できるんじゃないのか……?」


秋の求めているスキル。それはゼウスの言うところの“とある一分野に特化した万能スキル”なのだが、秋が夜空の世界を動き回って見回ったとしても、それに叶うスキルはないのだ。


「思い出せ……あの時、どうやって俺は『完全武装術』を作ったんだ……?」


秋は目を閉じて思想に耽る。情景を浮かびだす。秋があの時どのような思いでこの夜空の世界に触れて、どのような思いであのスキルを創造したのか


「完全武装術………スキル………夜空の世界…シャボン玉………ハッ。まさか念じる事か?」


スキルの操作。それは全て思念といった脳内で思ったことがそのままはい・いいえの選択肢になったりなど、スキルやステータスのそれはほとんどが脳内で念じるという操作を必要としたのだ。


「よし……念じてみるか。ただ、ひたすらに」


秋は再び目を瞑る。思想に耽り、そしてゆっくりと自分が必要な、自分にとっての今の最強をイメージして創り上げる。


分野は―――魔術。異世界に行く上で必ず必要不可欠なその要素が織りなすスキルは、自分のイメージによってその構造を作り上げる。


そしてそのイメージをスキルという実像にするべく、構成要素を思い浮かべる。



――構成要素:魔術・術式・魔術×3・闇魔術・光魔術・雷魔術



秋は自らの魔術スキルを創造する構成要素を創造し、形作る。構成要素が秋のイメージにより形を変えてスキルと成し、そして要素は溶け合い、混ざり合い、そして違う形に転化する―――。



【魔術・術式・魔術×3・闇魔術・光魔術・雷魔術の要素を組み合わせ、スキル『極・創魔導法』を創造いたしました】



秋が念じると、秋の脳内に言葉が響き渡る。その言葉は新たなスキル『極・創魔導法』が創造されたことを示すメッセージ。


そして秋の下から『完全武装術』のスキルと同じように、ほとんどのシャボン玉が放つ可能性の光をかき消すような強い光が秋の下から現れ、そして今度は秋が手を掴むまでもなく秋の胸の中にスッと入ってきたのだった。


そして秋は新たなスキルである『極・創魔導法』を創造したのだった。



そしてその瞬間。秋の目の前から光が消えた。







―――バタッ。



「秋⁉大丈夫か!!」

「あ、ああ、大丈夫だ爺さん。所で今、何時だ?」

「ん?おかしなことを聞くの。お主がスキルを作ると言ってからまだ3分も立っておらんわい」


秋があの夜空の世界から現実の世界に戻ってきて最初に目にした光景は、天井か壁か分からない白い地面が最初の光景だった。その後にやってきた倦怠感と疲労感。そして脱力感が体を覆った。だが案の定気絶したりといったわけではなく、意識がしっかりと備わっているのは秋のとっては僥倖だったのだ。


「あ、ああ……そうなのか…」

「ん?お主スキルの作ったのかの?」

「ああ、成功したぞ。二つ作れた」

「おお!どれどれ、見てもよいか?」

「ああ、構わないぞ」



ゼウスは秋の中に新しく芽生えた二つのスキルと、その効果を確認した。




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完全武装術

全ての武器を統べる物に送られる称号ともいえるべきスキル。その能力は全スキルの中でも最高クラスに位置する。仲岡秋専用のオリジナルスキル。


・全武器補正

全ての武器の扱いに強い補正がかかる。


・真化

仲岡秋本人の成長によりこのスキルも進化を繰り返す。


・完全武装術

他人の武術をコピーしたり、自分で新しい武術を作るなどといった行為の全面的なサポート・バックアップを行う。他人の武術は一度見れば自動で自分用にアレンジを繰り返し自分だけの武術に転化させられる。

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極・創魔導法

人間が到達しうることのない魔術の領域に、スキルの力を借りて至ろうとした者が創り上げた、人々の中では最強に到達しうる魔術系統のスキル。仲岡秋専用のオリジナルスキル。


番外系統魔術

人々が最も得意とする四属性炎・水・風・大地以外の属性因子を使って放つことのできる魔術を扱う事のできるスキル。番外系統の因子を持つ構成要素をこのスキルに与える事によって番外系統魔術を扱う事ができる。

現在扱う事のできる番外系統の魔術。

・闇魔術

・光魔術

・雷魔術


基本属性魔術

人々が最も得意とする四属性を際限なく扱う事のできるスキル。基本属性の因子を持つ構成要素をこのスキルに与える事によって基本属性魔術を際限なく扱う事ができる。

現在扱う事のできる基本属性の魔術。

無し


叡智の簒奪

魔術を一度見るだけでその構成式を読み取る事ができる。種族的・血統的制約は存在しない。扱う事のできる魔術が存在するのなら、その魔術を放つことも構成式を読み取り解析することも、改変する事も可能になる。


真化

仲岡秋本人の成長によりこのスキルも進化を繰り返す。


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「まあ及第点といった所じゃの」

「あんたのレベルとは比較になんねえよ…」

「ホッホ。未来がある若者に期待するのは爺の特権みたいなものじゃよ」

「あんたが言うと嫌味に聞こえてくるなぁもう…まあいいや。それでも確かに強くはなってると思うぞ?」

「確かにそうじゃな……うむ。これならいけそうじゃ。次のレベルにの」

「…………?次のレベル?一体なんだ?それは」

「魔物との戦闘。じゃよ」


爺さん――ゼウスはまた、秋に無理難題を吹っ掛けるつもりのようだ。


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