第13話


「―――秋っ!!!秋よっ!!!………起きろ秋っ!!!」


その僅かに聞こえるしわがれた声で、秋の意識はほんの微かに覚醒した。


たった少しの覚醒。だがその覚醒が僅かで、木の中でも枝葉程度の意識が覚醒したとしても、その枝葉から呼び起こされた他の枝葉にそれが伝播し、やがては幹すらをも覚醒させうる。


そう。秋の意識は、ほんの微かな、それも奇跡の様な覚醒から、ゆっくりと幹を揺らし起こしたのだ―――。







(んん……ああ、ここは……どこだ?…)


「秋!!聞こえるかっ!!秋!!」


(誰だ…?この声…聞き覚えがある……爺さん?)


「んん、あああ……」

「秋!!起きたか秋!!」

「あああ……あ、ああ……こ、ここは…?」

「ここは神界じゃ。お主は魔力譲渡の儀式を行い、命からがらで助かったのじゃ」


ゼウスの簡潔な説明で、秋の脳内にある記憶が覚醒していく。


「じ、爺さん……魔力譲渡は…」

「あ、ああ、ちゃんと成功しておるよ、お主のスキル欄が凄まじい事になっておった。じゃが、本当に、本当に生きててよかった…っ!!」


ゼウスが心の底から、本当に心の底から、人間の様に心配し、横になっている弱弱しい秋の手をしっかりと握り項垂れる。


「ありがとう爺さん。あんたのおかげで俺は効率よくあいつを救える―――異なる世界に行くんだ。俺はそのために、なんだってしなくちゃならない……そこは俺にとって1から100まで分からない。だからこそ、自分を強くしておかないといけないと。思っている……」

「………。そうか……お主は、しっかりと覚悟しておったんじゃな」


そう、秋もまた覚悟していたのだ。この神界であそこまで痛い思いを出来たのは、一重に未知の世界で何が起こるか分からない恐怖と、それを打ち砕くための力が、強い力が必要だと秋はずっと思い、覚悟を決めていたからなのだ。


「そうか…、秋の思いよくわかった。その思いに、お主のスキルも答えておるよ。立ち上がれるかの?一応主要な傷は残っていた魔法でふさいでおいた。体力や増血はどうしようもなかったが…」

「ああ、だが手を貸してはくれないか?」

「ああ、いいとも」


そしてゼウスの手を握り立ち上がると、定位置とも呼べる畳の間の座布団に腰を落ち着ける。


「じゃあ、ステータスを見てみるぞ」

「うむ。しっかりと確認するのじゃぞ?」



==========

ステータス

中岡秋

15歳

学生


魔力:126000/3200


スキル

・運命と次元からの飛翔LV1

・スキルランダム創造LVMAX

・精神力強化

・魔術攻撃衝撃緩和

・魔術攻撃威力増加

・筋力増加

・ステータス成長超微増加

・剣術

・闇属性攻撃耐性

・攻撃衝撃耐性

・拳闘術

・光属性攻撃耐性

・獣化

・魔物攻撃耐性

・支配属性耐性

・弱小魔獣召喚

・支配術

・槍術

・俊足

・魔術攻撃魔力消費減少

・スキル魔力消費減少

・成長補正

・雷魔術

・打撃耐性

・身体能力上昇

・魔剣使いの極み

・鑑定

・観察眼

・弱小の魔眼

・気配感知

・龍属性魔術攻撃攻撃耐性(現在使用不可)

・竜翼(現在使用不可)

・魔族の極み(現在使用不可)

・魔武具術

・魔剣術

・魔導

・ノーリミット

・弱小精霊術

・統合

・魔力支配術

==========


「…………は?」

「まあスキルは言わずもがな、儂はお主に70万の魔力を送っておったから前のスキルレベルを鑑みても35個のスキルが創造されてる計算じゃ。そしてあれだけの魔力を制御したのなら、いくら魔力に対して弱い人という種族といえども12万という数値になるのは自明の理じゃ。なんせ70万レベルの魔力を制御しそのスキルに注いだのじゃからな」

「……え?…は?」

「それになんといってもスキルランダム創造のレベルがMAXになっておるではないか!ホッホ。これでようやくお主の超強化が始められるというもの。…ん?どうした秋よ。まだ傷がいえておらんのか?」

「え?あ、ああ…いや、ま、まさか自分がここまでになっているなんて、お、思いもしないというか……ハハ」


さすがの秋も、これには狼狽を隠せないようだ。なんせあの一件で35個もスキルが増えるなど考えられる話ではない。というかあり得ないのだ。実際に起こりえない事が今秋の目の前では確実に、しかも自分の身に降りかかっているのだ。


「何を言うか!神の巨大な魔力を己の身一つで制御し、死にそうになりながらも力を求めた秋の覚悟は、並みの人間のそれとは比較にしちゃいかんぞ?―――そうじゃなぁ…あの魔力を一般人にぶつけていたら、おそらく2千は確実に死んでおったぞ?」

「う、うわあ……やっぱ。あんたって神様なんだな」

「ホッホ。ようやく気付いたか」


その理屈でいうのなら、秋は神様の2千を殺せる虐殺の力を自分の身に宿し、それをあまつさえ制御して自分の力に変えた化け物という認識になるという結論に至るのは、もう少し後のお話になる。


「おお、そうじゃ秋よ。お主、お主の世界の時間はもう六時を回っておる。帰るとよかろう」

「ええ?…ああ、そうか。分かったよ爺さん。今日もありがとうな」

「ああ、確かに頂いたぞ。今日は退屈せんで済んだ。こちらこそじゃ。また明日も来ると良いぞ」

「ああ、確かに。それじゃあな」


そうして秋は『運命と次元からの飛翔』を使い、次元を超えて地球へと帰った



―――【スキル:『運命と次元からの飛翔』のLVが上昇しました】



中岡秋は、着々と成長を遂げていたのだ。

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