第12話
「…ふああぁ…。ああ、おはよう爺さん」
「おはよう、秋よ」
「今、何時だ?」
「ああ、今はお主の世界の時間で二時といった所じゃ」
「ああ、てっきり爺さんの事だから、何かしているんじゃないかと心配したぞ」
「儂をなんだと思っとるんじゃ…」
「誘拐犯」
「うおいっ!その言い方はやめんか!」
秋が寝る前までは12時半。学校だと丁度お昼ぐらいの時間だったので、今が二時だとすると丁度秋は一時間半をお昼寝に使ったという事になる。
「あれ…そういえばその時間で飯を食ってないとなると、腹なんかが減ると思うんだが…」
「ああ、この世界では生命活動に必要な事象や欲求は全てなくなっておる。腹は減らん、飲み物を飲まずとも生きられる。もちろん嗜好品として飲むことは可能じゃがの」
「へえ、やっぱ便利な世界だな。ここは」
「まあ神様の住まう世界じゃからの、なんでもありという点ではその通りじゃよ」
「んで、次に俺は何をすればいいんだ?レベル上げ…とかか?」
「ん?ああ、そうじゃなぁ……。お主の世界は平和じゃ。平和故に武力を知らん。知らん者に教える術を儂は持っておらん。故にそういった武器種を扱えるようなスキルを手に入れて、その補助を受けながら武器の使い方なんかを体に覚えさせていく。というやり方しかとれん。そして武器がない限りではレベルを上げるために魔物を倒すこともできん」
「つまり、やることがない。と?」
「ああ、そうなるのぉ…」
そう、秋は八方塞がりになっていた。敵を倒すためのスキルを手に入れるためには、魔力と時間が必要だが、今の秋に時間をかけていられる余裕はない。要するに時間が足りないのだ。
「じゃ、じゃあどうすれば……」
「―――一応。やれる事はある」
「……!!それはなんだ!爺さん!」
「……神は、一個人に必要な施しをやってはならん。施しを与えるなら人々に平等に、ないしは単位を人々にしなければならない。それが神の―――神界忌録の定め。他にもその強すぎる力を制御するために、我々八神は制約や条約を様々な形で設け、それを守らせている」
「じゃ、じゃあ。爺さんが俺に出来る事はないのか…?」
「―――じゃが、抜け道は確かに存在する」
「………!!」
「今言った例は確かに神界忌録に存在する。じゃが“施し”ではなく“取引”であれば、忌録に反する事もない。という事になる」
「!!!」
「秋よ。取引じゃ。今食べてしまった甘味は儂から何も提供していない。行ってしまえば無銭飲食と同じ。では取引の内容は、今食べた甘味の価値分の魔力をお主に分け与える。という事でよいか?」
「――――!!!ああ、それでいい」
「おお、では取引成立じゃ。ではこれで甘味の量の価値分の魔力を渡すとしようかの」
「その価値の決め方は?」
「何を言うておる。儂から見た価値に決まっておろう?」
「――――信じるぞ。爺さん」
「任せておけ、これでも秋の事は気に入っておるのじゃ。最大限の手助けはしてやるわい」
「……ああ、ありがとうな、爺さん」
「……ホッホ。その言葉。身に染みるのぉ…」
そしてゼウスが立ち上がると、それに続いて秋も立ち上がり、畳の敷いてある間を抜けて離れた場所に立ち、そしてゼウスと向かい合うように立ち会う。
ゼウスは取引にかこつけて秋に自身の最大限の魔力を譲渡する事は約束してくれた。という事実に対して、秋は最大限の感謝を述べる。
「では、確かに契約の通り、今から譲渡を始めるが…その前に秋に一言言うておこう…歯を食いしばれよ。先ほどを思い出せ。あの魔力量を初見で扱えたお主だからこそ、今儂はこの儀式を執り行うことを決心したんじゃ」
「………ああ」
秋は理解していた。ゼウスの行う魔力譲渡の量がとんでもなく。同時にそれを扱わなければならないという事実に。
「お主が気絶しても、神は契約を重んじる。故に気絶したとしても魔力譲渡は続ける。キャパシティを超えた魔力は身を亡ぼす。良いか秋よ」
「―――ああ、やってくれ」
「ホッホ。ある程度覚悟は決まったようじゃのぉ……。良いか、それでは始めるぞ。お主はスキルの準備をしておけよ…!!」
「ああ、任せておけ。爺さん」
そう言い残すと、ゆっくりと右手を秋の心臓に添え、そして秋の眼をゼウスはしっかりと見つめる。覚悟を問う目をして。
秋もまた覚悟を決める。ゼウスの目を通して。
「では、始めるぞ」
そう言い残すとゼウスは目を瞑り、ゆっくりと魔力を手に流す。
魔力はゼウスの手のひら―――秋の心臓――秋の血液――そして秋の全ての肉・骨・細胞に染みわたる。
―――ドンッッッ!!!!
突如に衝撃。
秋は額に脂汗を作りながら、スキルと魔力とを通すパスを解放する。
―――ゴオオオオオォォォォォ…
瞬間。濁流の様にスキルに魔力が流れていく様が鮮明にイメージとして流れてくる。だがスキル自体のその魔力をまるでブラックホールの様に吸い込んでいく。容量などないのだ。
そしてゼウスから流れてくる魔力もまた大きさを増す。秋がイメージとして作ったパスは大きな魔力の流れにも耐えているが、それでもゼウスの更に多くなった魔力の流れには耐えられるか分からない。
この神界の世界ですら汗や脂汗といった体の反応が出るくらいに秋は集中して魔力をスキルに流しているのだ。
だが魔力はただ流れているものではない。秋に流れるその多すぎるほどの魔力は確かに秋の体を蝕む。体の骨が軋み、肉が傷み。細胞が悲鳴を上げているのが意識しなくても分かる。むしろ意識したくなくても意識を向けられるレベルで痛みという純粋な反応が広がっているのだ。
そしてゼウスから流される魔力が35万を超えた。
秋の体はボロボロ。精神が悲鳴を上げているのは見なくても分かる。目からは血涙が流れている。それでもパスを繋ぐことに意識を注ぐ。
もう目に生気は存在しない。ただ己が本能と、微かに残った自我と意識でパスを構築しているだけ。それでもゼウスの魔力はまだ流れている。先ほどとの威力ではない。更に勢いは増している。
「……っ!!!……っあああああああぁぁぁあぁぁあぁぁあ!!!」
叫ぶ秋。もうゼウスから流されている魔力は65万を超えていた。秋の体はもう死んでもおかしくはない。それでも確かに地面に立ち、両手で秋と触れているゼウスの右腕を掴んでいる。「まだやれる。」その確固たる意志が伝わってくるようだ。
そして――――ゼウスから流されていた魔力の合計が70万と少しを超えた所でゼウスは魔力供給をストップした。
「はぁ……はぁ……」
ゼウスもまた肩で息をしている。それだけゼウスにも負荷のかかるものだったのだ。―――そして、神も持って負荷のかかるそれを受け止めた秋は、血涙を流しながらそれでも立ち続けた。意識はないが、それでも確かに生きている。魔力譲渡は成功したのだ。
【スキル:『魔術攻撃威力増加』を手に入れました】
【スキル:『筋力増加』を手に入れました】
【スキル:『スキルランダム創造』のLVが上昇しました】
【スキル:『ステータス成長超微増加』を手に入れました】
【スキル:『剣術』を手に入れました】
【スキル:『攻撃衝撃耐性』を手に入れました】
【スキル:『闇魔術攻撃耐性』を手に入れました】
【スキル:『拳闘術』を手に入れました】
【スキル:『スキルランダム創造』のLVが上昇しました】
【スキル:『光魔術攻撃耐性』を手に入れました】
【スキル:『獣化』を手に入れました】
【スキル:『魔物攻撃耐性』を手に入れました】
【スキル:『支配属性耐性』を手に入れました】
【スキル:『弱小魔獣召喚』を手に入れました】
【スキル:『支配術』を手に入れました】
【スキル:『槍術』を手に入れました】
【スキル:『俊足』を手に入れました】
【スキル:『魔術攻撃魔力消費減少』を手に入れました】
【スキル:『スキル魔力消費減少』を手に入れました】
【スキル:『成長補正』を手に入れました】
【スキル:『雷魔術』を手に入れました】
【スキル:『打撃耐性』を手に入れました】
【スキル:『身体能力上昇』を手に入れました】
【スキル:『魔剣扱いの極み』を手に入れました】
【スキル:『鑑定』を手に入れました】
【スキル:『観察眼』を手に入れました】
【スキル:『弱小の魔眼』を手に入れました】
【スキル:『スキルランダム創造』のLVが上昇しました】
【スキル:『気配感知』を手に入れました】
【スキル:『魔力探知』を手に入れました】
【スキル:『龍属性魔術攻撃耐性』を手に入れました】
【スキル:『龍翼』を手に入れました】
【スキル:『魔族の極み』を手に入れました】
【スキル:『魔武具術』を手に入れました】
【スキル:『魔剣術』を手に入れました】
【スキル:『魔導』を手に入れました】
【スキル:『ノーリミット』を手に入れました】
【スキル:『弱小精霊術』を手に入れました】
【スキル取得条件を満たされたためスキル:『統合』を入手しました】
【『統合』のスキル発動によりスキル:『魔力感知』『魔力操作』『魔力探知』が統合されスキル:『魔力支配術』を入手しました。以降はスキル:『魔力感知』『魔力操作』『魔力探知』は削除されます】
【スキル:『スキルランダム創造』のLVが上昇しました】
【スキル:『スキルランダム創造』のLVが上昇しました。最大まで上昇したので以降はこのスキルのLVが上昇しません】
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ステータス
中宮秋
15歳
学生
魔力:126000/5
スキル
・運命と次元からの飛翔LV1
・スキルランダム創造LVMAX
・精神力強化
・魔術攻撃衝撃緩和
・魔術攻撃威力増加
・筋力増加
・ステータス成長超微増加
・剣術
・闇属性攻撃耐性
・攻撃衝撃耐性
・拳闘術
・光属性攻撃耐性
・獣化
・魔物攻撃耐性
・支配属性耐性
・弱小魔獣召喚
・支配術
・槍術
・俊足
・魔術攻撃魔力消費減少
・スキル魔力消費減少
・成長補正
・雷魔術
・打撃耐性
・身体能力上昇
・魔剣使いの極み
・鑑定
・観察眼
・弱小の魔眼
・気配感知
・龍属性魔術攻撃攻撃耐性(現在使用不可)
・竜翼(現在使用不可)
・魔族の極み(現在使用不可)
・魔武具術
・魔剣術
・魔導
・ノーリミット
・弱小精霊術
・統合
・魔力支配術
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