第25話「第6のチャクラ」
道摩が眼を開けると、そこに慧春尼の姿が有った。
「奴は?」
「斃しましたよ。道摩さんが」
「なに?俺が?一体どうやって?」
「三鈷杵を使って胸に刺しました」
「気を失っていたのにか」
「無意識下でも戦闘は出来ますよ」
確かに、仮面の男が居た所に三鈷杵が落ちている。
道摩は改めて慧春尼を見た。
嘘を吐いている様子は無い。
「道摩さん。手当を」
「ああ。だがその前に」
道摩はそこに結跏趺坐して、呼吸を整えた。
軽く眼を閉じチャクラを下から順に開いてゆく。
体のダメージを自身で正確に知るためだ。
「これは」
道摩は感嘆の声を上げた。
出血が止まる。
体が治癒に向けてフル稼働していくのが分かる。
神降ろしをせずとも、知覚が拡がり身体能力が高まっていく。
今までに無い感覚。
第6の額のチャクラが開いたのである。
道摩は自身の額のチャクラが開くと同時に気が付いた。
慧春尼もまた、第6の額のチャクラを開いていると。
第6のチャクラが開いた事で、他人の気脈の流れが分かる様になっていたのだ。
道摩は慧春尼の法力の高さの訳が、垣間見えた気がした。
そして道摩は驚いた。
自分自身に。
額の、第6のチャクラを己が開く事が出来る様になるとは思ってもみなかったからである。
正直どんな修行をしたら良いのかさえ分かっていなかった。
道摩は立ち上がった。
死闘を終え、満身創痍であるはずなのに、力が湧いてくる。
慧春尼は、そんな道摩の様子を満面の笑みで見ていた。
―やっとここまでたどり着いてくれましたね。
「大阿闍梨。あんた第6のチャクラを既に開いていたんだな」
「ええ。道摩さんも開けた様ですね。おめでとうございます。」
「ああ・・」
道摩は礼を言い掛けて止めた。
―全て、慧春尼の思惑通りなのではないか?
一瞬そんな考えが浮かんだ。
「どうかされましたか?」
慧春尼には、笑顔のまま道摩に問いかけた。
道摩には、そこに邪念は無い様に思えた。
「いや・・戻ろう。市川警部補が結果を待っているだろう」
「はい」
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