第16話「道摩と口裂け女その2」

「一つ疑問なんだが・・慧春尼大阿闍梨、何故あんたが直接やらないんだ?あんたがやれば俺は必要ない気がするが」

「道摩さんは、自信がないのですか?」

「そんな事は言っていない」

「でしたら、良いではありませんか。それに私は道摩さんのお力を直接見てみたいのです」

「俺の力を?」

「はい。これからの日本には、いえ、世界には沢山の困難が待ち受けている可能性があります。その時に力になる人材を探しているのです」

「話が見えないな」

そうでしょう。いずれ時期が来ればお分かりになります。それともこの件から降りられますか?」

「いや。やるよ。あんたの思惑がなんであれね。どうせ断っても巻き込むつもりなんだろう?」

「はい」

慧春尼は童女の様に微笑んで言った。

「いつもそうだ・・・いや何でもない」

―いつもそうだな。お前は。

道摩はそう言いかけて気が付いた。

今のは?

慧春尼は涼しい顔をしているが、市川警部補が訝しげに道摩を見ていた。

「さて、じゃあ最初は口裂け女退治だな。その他はどうする?」

「一気にやらずに一つ一つ対処していきましょう」

「分かった。あの映像を見る限りでは物理的な攻撃は効果が薄そうだな」

「報告では警察官二人が9発、奴に実弾を打ち込んでいるがそのまま向かってきたそうだ。発砲した警察官二人の内一人は、背骨を反対側に真っ二つに折られて死亡。

生き残った警察官の証言では、相撲での決まり手の鯖折りで真っ二つにされたそうだ」

その話を聞いた道摩が言った。

「とんでもない怪力って事か。まあ、包丁で人の体を真っ二つに出来る位だからな。ところで生き残った方は何故生き残れたんだい?」

「分らん。部下がやられたのを見て腰が抜けて気絶してしまったそうだ。気が付くと既に姿がなかったそうだ」

「ところで道摩さん。十二神将は使役出来ますか?」

「安倍晴明とまではいかないが、真似事位はね」

「今回の相手はそうですね・・十二神将の中でもが良いでしょう。ご準備にどれ位かかりますか?」

「一日有れば大丈夫だが」

「では、明日ですね。口裂け女を退治に行きましょう」

「分かった。所で大阿闍梨、ってのは?十二神将の誰の事だ?」

「それはですね・・・」




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