過去編第2話 一人の女の子として

「あの〜すいません。

本を返したいんですけど...」

……………

「はい…どうぞ…」

「あっ、どうも」

……………

「おい。今日どうしたお前。

 さっきからずっとぼーっとしてるけど」

「いえ...別に...」

何かおかしい。

「大丈夫そうには見えないんだけど」

「本当に大丈夫ですから…

 いー先輩。ちょっと肩貸してください。」

そういうと、頭を肩に乗せた。

「おいおいどうした今日。

      やけに甘えただな」

「いえ、別に...」

沈黙が二人を包んだ。

肩に少しだけ吐息がかかる。


「いー先輩。アイス奢ってください。」

「どうした?昨日も言ってたけど...」

「無理ならいいです...」 

「分かったよ。今日だけだぞ。」 

「本当ですか!?」

少し笑ってくれた。


「じゃあ玄関の前で待っててください。

  逃げたらだめですからね!」

「あ〜分かった分かった。」

いつも通りのテンションに戻っていた。



「遅い。何が何でも遅すぎる。

 もう7分くらいは待ってるのに」 

教室か?

「まぁ、行ってみるか...」

ため息を吐き教室へ向かった。


たしか教室は2年4組なはず。

「ん?中に誰かいるのか?」

男女の話し声が聞こえる。


「ずっと僕は君のことが好きだったんだ。」

「えっーと...告白、かな...」

「そう。僕と付き合ってくれないかな」

「ごめんなさい。君と付き合うことはできない。」

「どうしてか理由を教えてくれないかな...」

「私には今、好きな人がいるの。」

「もしかしてあの2組の川口のこと?

たしかにめちゃめちゃイケメンだけど...」

「ううん。違う。私、3年の泉っていう先輩が好きだから。」

「その、人のどこが好きなの...」 

「どこがって言われたら困るけど、、、

一緒にいたら落ち着くし頼りになるところかな。」

「あぁ、そうなんだ...

 分かったよ。

  クラスではいつも通りでいいから。」


玄関に戻る途中。

心臓が強く脈打っていた。



「やけに遅かったな。お前。

俺が玄関でどれだけ待ったことか。」

彼女の顔を見るとさらに顔が赤くなった。

「まぁ、その、色々とありまして。」

「それよりアイス食べるんだろ」

「はい!早く行きましょ」

「分かったから。」

その瞬間。

僕は後輩のことを

   一人の女の子として見てしまった。

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