第4話 映画館デートの約束
授業の始業を告げるチャイムが鳴る。上条のせいで休み時間に二宮さんと話すことが出来なかった。とても残念だ。
それにしても映画のチケットか。映画をタダで見れなくなるのは辛いけど、二宮さんと一緒に見れるならその出費も痛くないかな。今週末、二宮さんを誘って映画を観に行こうと授業中ずっと考えていた。お陰で授業の内容は全く頭に入ってこない。まあ、頭に入った所で俺の頭じゃすぐに抜け落ちるんだけどな。ははは。
退屈な授業も終わった所で休み時間になったので、二宮さんの所に向かった。
「ごめんね二宮さん。さっきの休み時間上条に絡まれちゃってさ」
「あの……上条さんは東郷君のこと好きだと思うよ……」
「ん? ああ。知ってる。だって、俺上条に告白されたし」
「え? ええ!? 上条さんに告白されたのに、私と付き合ってるの? 何で?」
「何でって、二宮さんの方が好きだからに決まってるだろ」
二宮さんは随分とおかしなことを訊くなあ。男子たるもの可愛い女子が好きなのは当然なのに。
「それよりさ、今度の土曜日にさ、映画観にいかない? 十三人目の来訪者っていう映画なんだけどさ」
「そ、それって確かホラー映画だよね?」
二宮さんの顔がみるみるうちに青白くなる。この反応はまさか……
「もしかして、二宮さんホラー映画苦手だったりする?」
「え? ち、ち、違うよ。苦手とか全然違う。むしろ得意。得意ジャンルだよ! だから一緒に観に行こうよ」
あー。これは俺に合わせて無理をさせてしまっているパターンか。苦手なら苦手と素直に言ってくれたらいいのに。
「あ、二宮さんの肩に白い手が」
「ひぃ!」
二宮さんはその場で天井まで飛び上がりそうな勢いで体が跳ね上がった。余りにびっくりして顔の表情がとても崩れてしまっている。それにしても美人は凄いな。顔の表情が崩れても美人のままなんだから。これがブスだったら見るに堪えない顔になってるだろうな。
「お、脅かさないでよ……」
「やっぱり二宮さんホラー苦手なんだ。じゃあ別の映画にしようか」
「だ、大丈夫だよ! 観れる! ホラー映画全然観れるから! 私頑張るから」
頑張るとか言っている時点で苦手なのはバレバレだ。
「ねえ、二宮さん本当に無理しなくていいんだよ。二宮さんが観たい映画でいいからさ」
「だって……だって……もし、私が十三人目の来訪者を観なかったら、東郷君は上条さんと一緒に観に行っちゃうでしょ?」
俺は二宮さんのあまりにも可愛らしいヤキモチに思わず吹き出してしまった。
「わ、笑わないでよ」
「ごめんごめん。上条とは一緒にいかないよ。二宮さんが嫉妬しちゃうからね。観に行くんなら梅原と一緒に行くよ」
そういえば、梅原はホラー大丈夫だったっけ? 俺の記憶が正しければ、あいつは林間学校の肝試しの時に泣きわめいていた記憶があったけど……まあいいや。苦手でも無理矢理連れて行こう。
「そうなんだ……良かった。私、上条さんに東郷君が取られるんじゃないかと思って心配してたんだ」
二宮さんはほっと胸を撫で下ろした。俺を取られることを心配するくらい、二宮さんの中で俺の存在が大きかったのか。俺は何だか嬉しくなってしまった。
「じゃあさ、今度の土曜日一緒に映画を観に行こうか。観る映画は二宮さんが決めていいよ」
「えっと……じゃあ、私は桜の季節っていう恋愛映画が観たいかな」
「へー。二宮さんって恋愛系のジャンルが好きなんだ。何か。女の子って感じがしていいな」
「ありがとう。東郷君にそう言ってもらえると嬉しい」
観る映画も決まった所で、そろそろ次の授業が始まる時間になってしまった。
「二宮さん。それじゃあ俺はそろそろ席に戻るね。デートの待ち合わせ時間と場所とか詳しいことはまた後で決めようね」
二宮さんとデート。楽しみだなあ。俺の人生初のデート。期待と高揚と緊張と不安が同時にやってくる。初デートで失敗しないかな。ちゃんと二宮さんをエスコート出来るかな。女子ってデートの時どんな服装で来るんだろう。と色々考えを張り巡らせる。
◇
昼休み、俺は二宮さんと一緒に過ごしたかったのだが、梅原が声をかけてきやがった。
「おーい。真人ー。一緒にウノやろうぜ」
「梅原……俺はこれから二宮さんの所に行かなければならないだ。放っておいてくれ」
「何だよー。お前彼女出来た途端に付き合い悪くなるタイプかー。そういうの良くないと思うぜ」
まあ、確かに梅原の言っていることは正論ではある。彼女が出来た途端に友達付き合いが悪くなるやつはハッキリ言って最低のクソ野郎のゴミカスである。そういう奴に限って、いざ彼女と別れると、男友達に依存するようになる。「やっぱり男の友情は最高だ」なんだとか言ってな。
しかし、二宮さんとの約束を破るわけにもいかない。俺は彼女に休み時間は必ず一緒に過ごすと約束をしてしまったのだ。となると……
「なあ、梅原。二宮さんも一緒にウノに誘ってもいいか?」
「ん? まあ、俺は構わないが」
というわけで、二宮さんを誘って梅原と男友達数人でウノをやることになった。
「えっと……私、その男子と遊ぶのって初めてで……」
最初こそ二宮さんは緊張していたが、しばらく遊んでいると。
「はい、梅原君。ウノって言ってない」
「だー! やられた!」
どうやら俺達に馴染んでくれたみたいで良かった。こいつらも学年一の美少女の二宮さんと一緒に遊べて嬉しいと思っていることだろう。
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