第19話 麗陽女子学園
次の日、再び繁華街の喫茶店に集まると麗陽女子学園の友達である
本当は紹介などしたくなかったのだが、しょうがなくと言った感じだ。なぜ紅凛に紹介したくなかったかと言うと世里が紅凛の好みに合っていると思ったからだ。
それは顔だったり雰囲気だったりと言った事ではなく、世里がパンツを履く女性だったからだ。
私の中ではパンツを履く女性はすべて紅凛の好みに合うと言う認識になっている。
「おい、神前。それはいくらなんでも僕に失礼じゃないのか? 僕だってパンツ以外の好みはある」
パンツ以外にも好みがあるんだ。私はてっきり紅凛の好みはパンツを履いているかどうかという一点だけだと思っていた。それじゃあパンツ以外の好みって何でしょう。
「手首にある尺骨の突起が綺麗な事」
真剣な表情で自分の手首を見せてくる。
手首にある尺骨? 私は自分の手首の辺りを見ると外側に確かに突起のような骨が出ている。
「そうそう、それそれ。その骨が堪らないんだよ」
何てマニアックな所を見てるんでしょう。そんな所を見て女性が好きかどうか決めているなんて思っても居なかった。
「あの……。私が呼ばれた理由って……」
世里が私たちの話に不安になったのか手を挙げて割って入ってきた。
そうだ。こんな話をするために世里を呼んだんじゃない。危ない、危ない。昨日のパンツ話の二の舞になる所だった。
話題を元に戻し、紅凛に知っている事を世里に話してもらうようにお願いした。
紅凛は魔女に操られてしまった女子高生の特徴を話してもらっているのだが、紅凛は自分の好みの話ができなかったためか少し寂しそうに話している。
「僕が見たのは麗陽女子学園の女子生徒で、ショートヘアの可愛らしい女性だった。身長はそうだな……百五十センチぐらいかな。少し小さいような感じがしたし。それに痩せ型で動きが俊敏だったな」
見た感じの特徴をそのまま言ったのでしょうが、それだと個人を特定するには情報が少ないような気がする。
世里も一生懸命、自分の中で情報に合う人物を検索かけているようだけど、条件に合致する人が多すぎて絞り切れないようだ。
「もう少し分かりやすい特徴とかはなかったですか? それぐらいの特徴だと合う人が多すぎて……」
それはそうでしょう。私たちの高校で検索をかけたとしてもその条件ならかなりの人数がヒットしてしまう。
紅凛は他に特徴がなかったか唸り声をあげながら考えると何か思い出したようだ。
「鎖骨が綺麗だった。後はパンツは青いストライプの入ったパンツを履いていたな」
紅凛の中では骨とパンツ以外に情報は入って来ないんでしょうか。そんなにその二つが好きなら骸骨にパンツを履かせたら紅凛は飛び跳ねて喜ぶんじゃないのかな。
「馬鹿な事を言うな。そんな男か女か分からない骸骨にパンツを履いて貰っても興味なんて湧かない」
その言い方だと女性の骸骨なら興味が出てくるように思えるんですけど……。
ともかくそんな鎖骨が綺麗とか、青い縞パンを履いていたとかで分かるはずないじゃない。
と思っていたのだけど、何と世里は今の情報で思い付いた女性がいるみたいだった。世の中何があるか分からないものだ。
「その子だったら多分、
どうやら紅凛の情報から思いついたのではなく、学校内で流れている情報から思い至ったようだ。
良かった。あんな情報で人物が特定できるなら私は世里の人格を疑ってしまったかもしれない。
「そうか宇城さんって言うのか。その人ってどこに住んでるの? 会ってみたいんだけど」
紅凛がパンツを見たいから会いたいと言っているのではないと信じて私もお願いしてみる。
だけど、高校でできた友達って大体、あそこ辺りに住んでいるって言うのは分かるけど、意外とちゃんとした住所は知らないものだ。
世里も理衣さんとは高校で初めて会って仲良くなったらしく、詳しい住所までは知らないようだ。
それでもおおよその家の場所は聞いた事があるみたいで、私たちはその場所に行って足で宇城さんの家を探す事にした。
宇城さんの家は繁華街から結構離れた場所にあるようで、私たちはバスに乗って教えてもらった場所の近くにまで移動した。
ここからは地道に足で探していくしかない。宇城という苗字はそれほど多くはないと思えるので、その表札があれば当たりかもしれない。
夏の日差しが眩しい中、徒歩でどこにあるか分からない家を探すと言うのは本当に大変な作業だ。
熱中症にならないように帽子をかぶって、途中で買ったペットボトルのお水を飲みながらの探索は私が想像していた以上に困難を極めた。
「熱中症にならないように気を付けてくれよ。辛くなったらすぐに言ってくれ。休憩でも入れるから」
どうしてこう言う時の紅凛は優しいんでしょう。そんな事言われたらますます惚れてしまうじゃないですか。
辛くなった訳でもないけど、時々、休憩を入れながら探す事数時間。西の空がオレンジ色に変わり始め、そろそろ探索を諦めて家に帰ろうかという話をしていた時だった。
私たちはある一軒の家に掲げてある「宇城」という表札を見つけた。何時間も回って見つからなかった「宇城」という名の表札に思わずハイタッチをして喜びを表す。
だけど、この表札の家が私たちが探していた理衣さんの家であるとはまだ確認できていない。
「聞くだけは聞いてみよう。もし違ったらまた明日探せばいいさ」
紅凛はもし違っても私が落ち込まないように言ってくれるが、正直、この作業をまた明日やる事を考えるとげんなりしてくる。
そうならないためにもここが理衣さんの家であって欲しい。
ピーンポーン!
紅凛が家のインターホンを押してここが理衣さんの家かどうか確かめる事にした。
「はい。どなたでしょう?」
インターホンから聞こえたのは女性の声で声の感じからいって理衣さんのお母さんでしょうか。
「すみません。僕は理衣さんの友人なんですが、ここは理衣さんの家であってますでしょうか?」
紅凛は手慣れている感じで淀みなく答えている。これは今回が初めての事ではないな。何度かやった事のある人の対応の仕方だ。
「そうですが……、理衣に何か用でしょうか?」
「最近、理衣さんの姿を見て居なくて、以前教えてもらった住所を頼りにお伺いしたのですが、理衣さんはいらっしゃいますか?」
よくそんな事がパッと浮かんでくるものだ。でも、これだったら私がインターホンを押した方がよかったかもしれない。普通に高校の同級生で通せたから。
「そうですか。わざわざすみません。でも、今、理衣は出かけて居ていないんです」
「そうですか。元気と分かってよかったです。それではこれで失礼します」
どうやら理衣さんは出かけていていないらしい。でも、ここが理衣さんの家と分かったのは大きいかもしれない。
「流石に今からどこにいるか分からない宇城さんを探しに行くのは厳しいよな。帰ってくるのを待ち伏せしても良いんだけどどうする?」
探しに行くのは私も難しいと思う。家を探し出すだけでかなりの体力を使ったのでもう足が棒のようになっているのだ。
正直言うと待ち伏せもあまりしたいとは思わない。誰か人が殺される可能性があるのは分かるけど、あまり遅い時間になってしまうと親が心配して私を家から出さないようにしてしまうかもしれないからだ。。
「そうだよな。僕なんかはある程度放任されてるから良いけど、神前はちゃんと帰らないと両親が心配するもんな」
紅凛は私の事情を理解してくれて今日の所は引き上げる事になった。
こう言う所をちゃんと配慮できるんだから喫茶店でパンツをしないと言う配慮が何故できないのか不思議だ。
繁華街までバスで一緒に帰って私は紅凛と別れて家に帰る事にした。
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