第18話 喫茶店にて
私は一体何をしに喫茶店に来たんでしょう。
喫茶店に来る前にメッセージアプリでフォルテュナから紅凛が昨日、コンタクトを取った女子大生の残したアイスティーを飲み干したと聞いたって言うのを話してから何かおかしいような気がする。
冗談のつもりで「変態さん」と言ったのだが、これが悪かったのでしょうか。
更にフォルテュナから聞いた話で戦っている最中に女子高生のパンツに気を取られ負けそうになったと言う事を皮肉を込めて紅凛に言うと止まらなくなってしまった。
『それはあれだ。登山家って山があったら登りたくなるって言うだろ? それと同じで目の前にパンツがあったら見たくなるじゃないか』
とか
『目の前に女子高生が履いているパンツが見えるとするだろ? それは僕にとって最後に見るパンツかもしれない。それなら見るでしょ!』
とか明らかにおかしな事を真剣な顔で私に言ってくる。ここまで来ると狂気さえ感じ始めてしまう。
そもそも女性である私が女性のパンツに目を奪われるなんて事がある訳ない――と言うのが紅凛には分からないのでしょうか。
それからも言葉巧みにパンツの素晴らしさを私に伝えようとしてくるんだけど、どうしても私は紅凛が言っている事ができなかった。
ついにはショートケーキを持ち出してまで伝えてきたんだけど、今度、本当にパンツを乗せてショートケーキを出してみようかしら?
勿論、私のパンツは恥ずかしいので、買ってきたパンツをくしゃくしゃにして使用感を出してみてだけど。
私がそろそろお互いの情報の交換と今後の行動方針を決めたいと言おうとした所で急に紅凛が立ち上がった。
アイスティーを飲んでいた私はいきなりの行動にゴクリと口に含んでいたアイスティーを飲み込んだ。
あっ、これは変な事を思いついたな。
私は直感で分かってしまった。あぁ、もう早く諦めてくれないかなぁと思っていると思わぬ人が現れた。そう、ウエイトレスさんだ。
『お客様。このような場所であまりそのような話題は他のお客様のご迷惑になりますのでご遠慮ください』
何て頼もしいウエイトレスさんなんでしょう。雰囲気的には大学生ぐらいでしょうか。
だけど、紅凛はウエイトレスさんに怯む事なく自分の変態性を披露し始めた。
『私、ノーパン派なので』
ある意味、ウエイトレスさんの方が上手だった。だけど、その回答だと矛先が私に向いてしまう。
案の定、紅凛の視線は私の下半身に向いてきた。当然私はパンツを履いているのだけど、なぜそんな事をこんな場所で告白しなければいけないんでしょう。
ともかくウエイトレスさんにコテンパンに打ちのめされた紅凛はやっと大人しくなってくれた。これで話が進められる。なぜ本題に入るまでにこんなにも時間が掛かったのか不思議でならない。
落ち込んでいる様子の紅凛に昨日私に起こった事を伝える。
いきなり男が現れエヴァレットを奪われそうになった事、相手が魔術を使う事、新興宗教の教祖をやっている事。私が知っている情報はすべて話した。
少し落ち着いたのか紅凛は真剣な表情で私の話を聞いてくれた。良かった。どうやら元の紅凛に戻ったようだ。
「魔術を使う宗教家で、魔女を奪おうとする理由が教義のためって言うのが怪しさ満載だよな」
うん。やっぱり紅凛はこうやって一生懸命何かを考えていたりする所の姿の方が格好良い。
「じゃあ、僕の方なんだけど……」
そう言って紅凛が自分に起こった出来事を話してくれた。
内容は殺人犯の正体は魔女で、女子高生を心も体も支配していると言う内容だった。
魔女に心も体も支配されてしまうなんてにわかには信じがたい話なんだけど、紅凛がここまで真剣に話してるって事は本当の事なんでしょう。
紅凛も私に負けず劣らず危険な目に遭っていたのがよく分かる。それにしてもこの街はどうしてしまったのでしょう。こんな変な事が立て続けに起こるなんて今までなかったのに。
「魔女を奪おうとする宗教家も、殺人をしようとする魔女もどちらも早く対応した方が良いんだろうけど、僕たちだけでは手が回らないよな。製作者も探さなきゃいけないんだし」
そうだった。私たちは元々製作者を探しているんだった。変な人に襲われてその事を失念していた。
「それでもどれを一番最初に対応しないといけないかって言うと、やっぱり殺人犯の魔女だよな」
製作者は今の所、動きは見えないし、宗教家の方は私たちには危害を加えてくる可能性があるかもしれないけど、一般の人まで襲ったりはしそうにない。
そうなると紅凛の言う通り、殺人犯の魔女が一番危ないし、被害が大きくなりそうな気がする。
そうは言っても、製作者と同様に殺人犯の魔女がどこにいるか何て私たちには分からない。
「だがな、その女子高生って言うのが制服を着ていたんだよ」
それは大きな手掛かりかもしれない。製作者のように全くどこにいるか分からない人より、ここには確実にいるって分かっているなら探しやすい。
それで? その女子高生はどこの高校なの?
「
あのお嬢様学校か。私は学校の名前を聞いただけでも溜息が出てしまう。
お嬢様学校と名高い麗陽女子学園はその噂に違わずお高い感じの女性が多いのだ。私も麗陽女子学園の友達は一人しかいない。
「マジで? 神前って麗陽女子学園に友達いるの?」
あぁ、紅凛の目が輝き始めてしまった。男子高校生がお嬢様学校に興味を示すのは分かるんだけどね。
でも、絶対に紅凛には友達を紹介しない。どんな条件を出されてもだ。
「今度好きなパンツを買ってあげるよ」
紅凛は本当に馬鹿なんじゃないでしょうか。そんな中年男性がセクハラ発言するような事を言われて喜んで教える訳ないのに。
「むっ。これでなびかないのか。じゃあ、仕方ない。ここの支払い、スイーツを追加注文して良いから僕が出すよ」
うーん。これはなびいてしまいそうだ。スイーツか。何が良いかなぁ。ここのベイクドチーズケーキは美味しいって有名だけど、期間限定でやっているかき氷も捨てがたい。
私がスイーツを何にするか悩んでいるのをまだ条件が足りないと思ったのか紅凛は更に条件を追加してきた。
「これが僕が出せる最後だ。僕のパンツを付けよう」
乗った! 紅凛に友達を紹介してあげましょう。
ちなみに私は決して紅凛のパンツが欲しかった訳ではない。悪までもスイーツを何にしようか悩んでいたら紅凛が勝手に条件を追加してきただけで、パンツの有無は関係なかったと言い訳をしておく。
実際友達を紹介するのは後として、麗陽女子学園に行ってその操られている女性を探してみた方が良いかもしれない。
だけど、外を見ると陽が傾きかけている。そのほとんどがパンツの話の時間だったなんて時間を無駄に使った気がする。
「じゃあ、麗陽女子学園に行ってみるか」
ちょっと待った! 紅凛は何か忘れているんじゃない? 私はまだスイーツを食べていない。約束ではスイーツも入っていたはずだ。
私は美味しいって有名なベイクドチーズケーキを選択し、十分に堪能してから麗陽女子学園に向かう事にした。
繁華街からバスを使って麗陽女子学園に着いた私たちは麗陽女子学園をみて愕然とする。なぜなら今日は終業式で麗陽女子学園には人っ子一人いなかったのだ。
「僕たちはもう夏休みに入っていたから忘れていたけど、今日が終業式だったんだな」
紅凛の声が麗陽女子学園の門も前で立ち尽くす私たちの周囲に響く。
仕方がない。友達に連絡を取って会う約束をしますか。本当は紅凛がいない所で情報を聞きたいのだけど、操られている女子高生を見たのは紅凛なので会わせるしかない。
友達に連絡を取ると明日会ってくれる事になった。紅凛にもその事を伝えると今日の所は帰って明日、話をしようと言う事になった。
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