第7話 勇者の石を探す旅へ
冒険者ギルドに向かう途中、メイドのヘレンに出会う。
「マリー様!一体どこに行かれていたのですか?!魔物達が街に来ています!早く逃げる準備を!」
「ヘレン、魔物なら討伐されたよ」
「そうなのですか?さすがは冒険者です。それなら早く冒険者ギルドへ行って報告しに行きましょう」
ヘレンは私の手を握り、冒険者ギルドへと向かう。
「ヘレンさん、マリー様は見つかったのですね!」
「はい、ご心配をおかけしました」
冒険者ギルドに着くと、冒険者ギルドの職員の人が慌てて聞いてくる。
もしかして、私を探し回っていたのだろうか?置き手紙か何かしとけば良かった。
「すみません。職員さん」
「無事に帰って来てくれたのでしたら良いんです。マリー様」
そうだ…!ヘレンにこの街を出て勇者の石を探しに旅に出たいって言わないと。
「ねぇ…」
待ってね。もし言ったとして、絶対に行かせてもらえない。
私がヘレンの立場なら自分の専属の10歳のお嬢様が『私勇者の力を集める旅に出たい!』と言ってきても行かせないと思う。
今から寝て、ヘレンには置き手紙をして早朝にこの街を出よう。
そう決心する。
部屋に戻り鍵を閉める。
「妖精さん…いる?」
「いるよ!どうしたの?」
「まずね…あの時助けてくれて、ありがとね」
あの時とは、ミノタウルスが剣を投げようとしていた時に、背負っている剣を使えと助言してくれた時だ。
「良いのよ、勇者を導くのが私の仕事だから」
「それに、名前でマリーって呼んでくれて嬉しかった!」
「あの時は夢中だったから…」
「妖精さんのお名前は?」
妖精さんはモジモジとしながら小さな声で言う。
「エリー…」
「妖精さんってエリーっていうの?なんだか私の名前と似てるね!」
「う〜、なんだか姉妹みたいで恥ずかしくてずっと言えなかったのよ」
妖精のエリーはモジモジとしながら赤らめる。
「それなら『エリー・オレ』にしちゃえば?グラントリスは流石に名乗れないけど」
「良いの?私と姉妹みたいになっても?」
「うん!よろしくね!エリー!」
「ありがとう!こちらこそ、よろしく!マリー」
一気にエリーとの距離が近づいた気がする。
「それでね、エリー。私明日の早朝に抜け出して勇者の石を探す旅に出ようと思うの」
「うん、それで良いんじゃない」
「それでね、必要なものって何があるかしら?」
「う〜ん、食べ物とか着替え…アイテムボックスには無限に入るから持ってきたいだけ持っていけるよ」
食べ物か…。服は冒険者ギルドから4着ほど着替えは貰っているから大丈夫だけど、食べ物はお金が要る。
「お金どうしよう…」
「お金ならあるよ」
エリーの手からジャラジャラとお金が出る。
「どうしたの、このお金?」
「100年前の勇者様達が持っていたお金を妖精女王様のアイテムボックスに預けていたから、そのアイテムボックスを私が引き継いだから、お金は山程あるから大丈夫だよ!」
「それじゃあ今から食器や食材を買って準備しよう!」
私は、コッソリと冒険者ギルドから外に出て、街で大量の水と食料や調理機器や食器を購入した。
部屋に戻り、ベットで寝ようと思ったが自分の汗臭さや、体がベタベタするのが気になって起き上がる。
ミノタウルスと戦ったり、食料などを歩き回って買ったせいだろう。
「どうしたのマリー?」
「いや…私ちょっと臭わない?」
エリーは「う〜ん」と考える。
「マリー、便利な魔法を教えてあげる。『クリーンボディ』「ウォッシングボディ』っていう、体を清潔にする魔法だよ」
「なにそれ!教えて!」
「『クリーン」は体と身に付けている物のや、目の前の人や物の汚れやゴミを落とす魔法で、『ウォッシングボディ』は体と身に付けている物を泡で洗って綺麗にすることが出来る魔法だよ。『ウォッシングボディ』は使ってもビタビタになるわけじゃないから便利だよ」
旅の道中、お風呂なんて入れるわけがないので是非教えてほしい。
「教えて!教えて!」
「じゃあ、おでこ出して」
私は前髪を上げる。
エリーはおでこに手を当てるとブツブツと何か言う。
「これで使えるようになったよ!」
「もう?結構簡単なのね。それじゃあ…『ウォッシングボディ!」
私は半信半疑で魔法を唱えてみる。
体がまるで洗われているような感覚が全身にくる。
「んっ…」
全身を人に洗ってもらっている感覚で、気持ち良くて思わず声が出る。
「凄い…本当にスッキリした…」
大変満足である。生まれ変わったようだ。体の匂いも石鹸の匂いがする。
良い魔法を教えてもらった。
「ありがとう、エリー。エリーも洗ってあげようか?」
「私はいいから早く寝なさい」
「そう?じゃあ寝ようかな。おやすみなさい、エリー」
「おやすみ、マリー。早朝に起こしてあげるよ」
こうして、1日が終わった。
起きたら旅か…。
勇者の力で世界を救う 語黎蒼 @961037
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