第71話 ホミンに会える!
「本当に偶然なんですが、私の目の前でホミンが事故に遭いそうになって、気を失ったんです。あ、ぶつかったわけではないので、大丈夫です。安心して聞いてくださいね。顔を見て、すぐホミンだとわかりました。気を失っている間、向こうの世界に行っていたみたいです。それで、病院で検査しても体に特に異常はなかったし、本人が大丈夫と言うので、明日会うことになりました」
「もっと詳しく聞かせろ」
ユンシクはその時の様子を細かく教えてくれた。
「それに、もう一つすごい偶然があるんです! ツイッターで、「
やはりそうなのだ。携帯の待ち受けも、ノートの落書きも俺だった。素直にうれしい。
「明日は旦那を二条城へ案内する予定でしたが、京都御所に変更しますね。ホミンの大学が近いので、そこで会うことになっているんです」
オーディションは明後日だ。その前に会えるとは。ユンシクは、ホミンに関する情報をしゃべり続け、コーヒーのおかわりを飲みながら今度は俺が帰った時のことを根掘り葉掘り聞いた。既に二杯目のコーヒーも空っぽになって久しい。
「それでは、明日の朝、私がここのロビーに迎えに来ますね」
自分のことは何一つ話さずに帰って行った。向こうではもっとクールなやつだったが、ずいぶん変わったもんだ。この年代の女性というのは実に口が達者で力強い。
俺はその夜、興奮して眠れないかと思ったら、意外にもぐっすり眠れた。今までと違う満たされたものを感じていた。
翌日は9時からユンシクと俺とマネージャーの3人で京都御所を見学した。ユンシクは「みやび」だとか、「洗練されている」とか言っていたが、俺の感動には言葉が見つからない。ここへ来て良かったと思った。
十分堪能したが、約束の十時半にはまだ早かったので、御苑を散策することになった。ユンシクは化粧室に行くというので、俺たちは先に入口へ向かい、首にかけていた拝観者のプレートを係員に返して御所の外に出た。
だだっ広い砂利道は静かで、ほとんど人の姿はなかった。向こうから一人で歩いてくる女の子がいた。なぜかその子が気になって目が離せなかった。白いダウンジャケットにふんわりしたスカート。そのシルエットが初めて会った日のホミンと同じだった。まだ約束の時間には早いけれど、あれは絶対ホミンだと俺にはわかった。
顔がはっきりと見えてきた。化粧をしている。ぱっちりした目、俺好みのあごのラインにツンとした唇、やっぱりかわいい。マネージャーにはホミンと会う事は伝えてあり、みんなでお茶でも飲もうと言っていたのだが、どうしても二人だけで話したくなったから、先に行ってくれと頼んだ。
「ユ・テハ、顔くらいは拝ませてくれるだろう?」
「かまわない。すれ違う時に、あまりじろじろ見ない程度で頼むよ」
「わかった」
ホミンは立ち止まり、バッグの中を探り始めた。俺は立ち止まってマネージャーを先に行かせた。ホミンはバッグの中から携帯を取り出した。マネージャーがホミンの横を通る。よしよし。自然に追い越してくれた。ホミン、やっと会えた。お前に伝えたいことがある。話したいことが山ほどある。感無量だった。俺はゆっくりとホミンの方に歩いて行った。
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