第51話 ホミンとの再会

 その日、俺は朝から商団で仕事をしていた。今日運ぶ荷物を指示し終えて、大行主テヘンスに報告に行こうとしていた時だ。本売りのユンシクが少年を連れてやってきた。


 このユンシク、絶対女だ。俺にはわかる。何か事情があるに違いない。町はずれのしっかりした構えの家に住み、そこで本を作ったり、よそから仕入れた本を売ったり貸したりして生活している。ヤツが作る恋物語が女に人気で、真珠楼にもよく出入りしているようだ。うちの商団の主人のお嬢様がひいきにしているらしく、ここにもよく顔を出す。こいつが描く本の挿絵はどちらかというと、向こうの世界の少女漫画に近いきれいなものが多い。男の感覚ではない。それもユンシクが女だと思う理由の一つだ。


 ユンシクたちが近づいてきた。顔がはっきり見えた時、俺は驚いた。


 ユンシクが連れてきた少年! この子、この口元、あいつだ! あの子だ! すっぴんで男装しているけど、間違いない!


 大学生のはずだが、高校生くらいに見える。目をあけるとパッチリしていてとてもかわいい。ユンシクといるなら安心だ。よかった。ここは気づかないふりをしてやる方がいいだろう。また逃げたら心配だから。


「お、新入りか?」


 その子はえらく緊張していた。無理もない。自分が逃げた相手が目の前にいるのだから。いや、俺のファンなら芸能人に会う感じかもしれない。まあいい。ホミンと名乗っていることが分かった。ちょっとからかって、笑わせようかな。せっかくだから、「漢陽の華」のジンをゴロツキらしく演じ切ろう。


「ユンシクはしけた絵しか描かないが、お前はどうなんだ? ハハハ。まだ若いから無理だろうな」

「描きます! 描かせていただきます!」


 おいおい、お前まだ経験ないだろう? 無理だよ。無理。俺が言っているのは春画のことだよ。


「なんでも描きます!」


 ムキになっているのか? しょうがない奴だ。


「あまり期待してないから、気楽にやれ」

「どんなものがお好みですか?」


 おい、聞くな。お前にそんなことを言えるわけがない。


 結局お任せということにした。しかも無料。それなら仮に描けなかったとしても許せる。


「あのう……兄貴って呼ばせてもらっていいですか?」


 やっぱりこいつ、「漢陽の華」のファンだな。ドラマで俺は兄貴と呼ばれていた。


「おっ? お前、俺の弟分になりたいのか?」

「はい! なりたいです!」


 それなら仲良くなろうじゃないか。俺の貴重なファンよ!


「いいよ。今日からお前は俺の弟分だ。可愛がってやるから覚悟しとけ!」


 可愛いやつ。向こうから来た仲間でもある。大事にしよう。俺は頭を撫でてやった。






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