第40話 拷問
ユンシクとホミンは支度を急いだ。女性の姿になると、やっぱりユンシクは大人の色気があるとホミンはうっとり見ていた。
「どうした?」
「やっぱり、
「
2人はお互いを小突きあいながらころころと笑った。
ホミンは化粧をしたユンシクの横顔を見ながら思った。
(
しかし、おそらく両想いと思われる陽明君との恋も王族であるがゆえに自由ではない。世子ならなおさらだ。側室に迎えることすら、相応の家柄を必要とするからどう考えても無理だ。
(師匠、早く向こうの世界に帰って全部忘れられた方が幸せなのかも。師匠には幸せになってほしいな)
ホミンは切なくなってきた。
2人が連れて行かれたのは、チェ・ユンソンの実家だった。ホミンはジンを思うと眠れなかったが、翌朝まだ夜が明けぬうちに、ユンソンとともに山に向かった。
***
ジンの尋問の準備は既に整っていたが、世子の命令で、長官が呼び出されてなかなか帰ってこなかったため、午後に持ち越されることになった。しかし、それ以上長官を足止めするのも限界で、かといって、ジンだけ取り調べを延期するわけにもいかず、ついに尋問は始まってしまった。
ジンはいきなり拷問用の椅子に座らされた。尋問もなくいきなり拷問するなど、何か裏の力が働いているとしか思えなかった。
この拷問は、椅子に縛り付けて固定され、両足の間に2本の長い棒をクロスして挟み、両方の棒に上から力をかける、シュリというものだ。太ももをねじられるので、長時間にわたると、大腿骨骨折、または股関節を脱臼するというむごい拷問だ。あまりの苦痛に、死に至るものもいた。
ジンの罪状はジンが雇われている商団の売上金の横領だった。訴えたのは、
「そなたがやったのだな」
やってもいないものを認めるわけにはいかない。
「俺は何もやっていない!」
棒に力が加えられた。
「う!」
我慢強いジンでも、声が漏れてしまう。しかし、必死で痛みをこらえた。
「しぶとい奴だ。もう一度……」
そんなことが何度も繰り返された。その時だ。
「待て!」
「世子様!」
皆が頭を下げた。
「これを見よ!」
持ってきたのはジンが隠していた裏帳簿だった。
「たった今、私が調査を依頼した者より、この帳簿が持ち込まれた! これが証拠の品となるであろう。内容の確認と、筆跡の鑑定を求める!」
帳簿は長官に渡された。役人たちが慌て始めたが世子は続けた。
「帳簿を診れば一目瞭然だ。この者は横領などしていない。これは、商団の不正である。そして、その不正に得た金を袖の下として、重臣たちに渡していたのだ。直ちに名前が書かれた重臣を捕らえ、商団のすべての者の筆跡鑑定をせよ!」
ジンの縄はほどかれた。そして、すぐに筆跡鑑定で明らかに別人と判断され、ジンは釈放された。
ジンが拷問で痛められた足を引きずりながら捕盗庁の外に出ると、ホミンが待っていた。
「兄貴、ごめんなさい。僕がもっと早く帰ってくることができたら、こんな目には……」
「ありがとう。ホミン。おまえがいなかったら、俺は死んでいたかもしれない」
ホミンはジンに肩を貸した。というより、すっぽりと包み込まれているようなものだったが、ジンの体重を少しでも預かっていることで役に立てるのがうれしかった。この世界では、こんな時でもタクシーを呼べないのかと、胸が痛んだ。門を出ると、外でインスと体格のいい男が2人で荷車を用意して待っていた。
「兄貴! 大丈夫ですか? これに乗ってください」
ジンはインスと男に支えられて、荷車に乗せられた。荷車が動き出すと、振動が響くのか、時々ジンが顔をしかめるのが、ホミンにはつらかった。
家に帰ると布団は捕まった時のままだったので、少し整えてジンを寝かせた。ジンは今までじっと耐えていたのだろう。少しばかりうめき声をあげて、横になった。
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