第2話 ツイッターの仲間
杏奈は大学一年生。アイドルや恋バナにはあまり興味が持てず、今は韓国の時代劇、「
インターネットで調べてみると、演じているのはユ・テハという名前の俳優だった。30歳、独身。時代劇の扮装では髭を生やしていておじさんに見えたが、年は意外に若い。普段の洋服を着た彼の写真は、表情もファッションも本当にかっこよく、そのギャップがたまらなかった。
彼はかつてはアクションを武器に、時代劇に出演し、主人公を支える役などもしていたが、デビューから10年ほどたった今では脇役が多いようだ。「漢陽の華」では、役作りのため老けて見せているのだろう。その努力にも萌えを感じてしまう杏奈だった。
ジンへの熱い思いは大学の友達には全く伝わらなかった。逆に彼女たちが騒いでいるアイドルのどこがいいのか杏奈には理解できなかった。線が細くて頼りなく思えてしまうのだ。そもそも大学には韓流時代劇を見ている人がいない。それは高校の時から慣れっこではあるが。
また、杏奈は日ごろから黙々とイラストを描いたり、二次小説を書いたりしてネットに投稿するのに夢中だったが、理解してもらえるとは思えないので、それを見せることもなかった。
一応友達としてつきあっている。みんなは杏奈を明るいキャラだと思っている。しかし、何かが違う気がして、大学での生活は灰色に感じていた。そんな杏奈が心を通わせている友人は、ツイッターの韓流アカで交流しているフォロワーたちだった。
杏奈はツイッターでは「みかん」という名前で、1日に何度もジンへの愛をつぶやいていた。みかんのフォロワーは116人いる。韓流時代劇専門のアカウントなので、フォロワーは、ほぼ韓流時代劇のファンであるが、その中でも「漢陽の華」のファン3人とは、よく会話をした。毎日つぶやく、みかんのジンへの愛の言葉に対しては三人三様の答えが返ってくる。
みかん『今週はテストだったからまだ録画見てない。ジンに会いたい』
ユリ『今週はたくさん出ていたよ! ジン、かっこよかったよ』
みかん『あ、ユリさん、もう娘さんのところから帰ったの?』
オウル『ジンのおっさん、腹が出始めているぞ。ところで、今週の話で王が倒れたが、この王の死因は脳卒中だったみたいだよ。彼は世継ぎができなかったから、次の王になるのは歴史上初めての庶子の子なんだ』
マカロン『オウルさん、えら! マカロンは期末テストボロボロ」
みかん『ジンかっこいい。はやく家に帰ろ』
マカロン『マカロンにはおじさんの魅力わかんない』
時には悩みも相談する。
みかん『昨日友達と勉強してたのに夜9時15分に家に帰ったら、お父さんにめちゃめちゃ怒られた』
ユリ『わ~、高校生並みだね。きっと、お父さんはみかんちゃんが、とってもかわいいんだね』
みかん『オニですよ。オニ! 自由になりたい! 一人で生きていきたい! 』
ユリ『一人で生きるのは大変よ。それに親だって子供を育てるのは大変なんだから』
みかん『絶対一人の方がマシ。一人で暮らしたいなあ』
顔が見えないので、年齢など気にせず何でも話せる。こんな調子で、杏奈はツイッターで知り合ったフォロワーに支えられ、ジンへの愛を糧に日々を過ごしていた。そんな杏奈の目の前にいるのが、ジン、その人なのだ!
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