第3話 唐突なお誘い 「一部訂正」

「なぁ拓真。幼なじみのお姉ちゃんとのラブコメってあると思う?」


 俺は授業休み早々、学校で拓真にそんな質問を投げかけた。何故かって? 俺がいまだに昨日優美さんに告白されたことが信じられないからに決まってる。実際、「友達からーー」的なこと言っちゃったけど今考えたらそれもそれでおかしかった。別にその場凌ぎとかのつもりじゃなかったんだよ? あの時は頭がテンパってて……

 俺がそんなことを頭で巡らせていると拓真は「こいつなに言ってんの?」みたいな呆れ顔で

 「いや、質問の意図が全く読めないしつい最近までその幼なじみに振られて絶望してた奴がどうしてお姉ちゃんとラブコメしようとしてるんだよ」

 と「幼なじみに振られて」のところをあえて強調してくる。そして更にはdisり半分正論半分の回答を投げ返してきた。

 はぁ俺だってしたくてこんなことしてるわけじゃないんだよ……

 ちなみに紹介し忘れたがこいつの名前は篠崎拓真。俺の中学生からの友人だ。まぁ腐れ縁的な奴? まぁそれは置いといて。

 こいつは俺と違って運動もできて勉強もできておまけに容姿もいい。言うなればこいつは完璧DK(男子高校生の略)なのだ! はぁ本当神様って不公平。俺かも少しくらい分けてくれてもよくね? 俺はそんなことを思いながら八つ当たりのように拓真に言い返す。

 

 「幼なじみに振られたのところ強調するあたりやっぱお前嫌いだわ。くたばれ完璧DK」

 俺が冗談半分のいつものノリで返す。すると拓真は笑って紙パックのジュースをストローですすりながら

 

「あはは。まぁでもいいんじゃね? 坂本のお姉ちゃんってうちの学校のあの坂本優美だろ? あんな綺麗な人とのラブコメならしてみたいよ俺も」


「お前知ってるんだ優美さんのこと」


「そりゃうちの学校でNo.1って呼び声もある人だからな。流石に知ってるだろ」 

 やっぱ優美さんってそんなにレベル高いのか……てかじゃあ尚更俺に告ってきた理由が謎いし理解できない。てかだいたい「昔からーー」なんて言ってたけど優美さんが俺を好きになるタイミングなんて一つもなかった気がするんだよな……


 「てかさ」


 「ん?」


 「さっきの話に当てはめるとお前もしかして坂本優美に告られたか?」


 「ぶふぉっ?!」

 俺は思わず飲んでいたジュースを吹き出し思いっきりむせる。するとその様子を見て拓真は「ははーんそういうことね」と何やら悪名高い顔をしていた。

 するとそれと同時にクラスの男子たちが何やら騒ぎ出した。


 「ーーおいあれが3年の?」


「えっ? めっちゃ可愛くね?」


 「うわっ、やべぇぇぇえ! LINE交換してもらってこいよ!」

 

 俺は騒ぎが気になってそっちに目をやると、そこには今ちょうど話していた「幼なじみのお姉ちゃん」本人である優美さんが立っていた。

 ただ昨日の俺と話していた時の表情とは違ってとても凛々しく大人っぽかった。だが俺を見つけた途端、一瞬だけ笑顔になったが少しむくれた顔をして俺の方に近づいてくる。


 「もう昨日LINEしたのに何で気付いてくれなかったの?」


 「えっ?! 俺にLINE送ったんですか?」

 俺は急いで携帯を開いて確認する。するとそこには「優美」という名前のアカウントから2件の通知が来ていた。そうだ俺昨日はもう何も考えたくなくて最近出たゲームのリメイクやってたんだった……そして俺はトーク画面を開き内容を確認する。するとそこにはーー


 優美  「あ、あのさっきはいきなりなのに「友達から」って言ってくれて嬉しかったよ! ありがとう!」


「それで、よかったらそのあ、明日一緒にお昼ご飯食べない?」



 ………んんんん? なんだこのLINEは。俺はLINEのトーク画面と優美さんの顔を交互に見て今の状況を必死に理解しようとする。


「もう私、返信来なくて心配しちゃったよ。昨日のはやっぱ嘘だったのかって……」

 優美さんは悲しそうなまるで子犬のような目で俺を見つめてくる。だからその容姿でその仕草はずるいんだって……


「あ、いやそういうわけじゃなくてただ単に気付かなかっただけで……」

 俺がすかさずフォローすると優美さんは俺の顔色を窺うように


「本当……? じゃあ私とお昼ご飯食べてくれる?」

 俺は助けを求めるべく拓真の方にちらっと目線を向ける。すると拓真は


「あっいいですよ坂本先輩。こいつさっき「優美さんともっと話せるようになりたいな〜」って言ってましたから」

 て、てめぇ……! 余計な事を……こいつ絶対許さねえ。俺が内心そんな事を思いながら拓真を睨むと優美さんの方から 「えっ、ほんとっ?! そうだったの春樹くん!」とめちゃくちゃ嬉しそうな声音が聞こえてくる。

 まぁ当然この状態で否定なんかしたら悲しませることになるし別にまず俺だって食べたくないわけじゃないんだけど……でも何て優美さんに言えばいいんだよ。まじ拓真許さねえからな。この悪ガキリア充。


 「そ、そのせっかく昨日友達になったんで俺も少しずつでもいいから話したいなってその思ってて……」

 俺は苦し紛れの言い訳(?)をすると優美さんは俺に満面の笑みを向けながら

 「じゃあ昼休みになったらまた後で来るね! 行く前にLINEするから今度は必ず返してよねっ? じゃあまた後でね〜!」と手を振ってその場を去っていく。

 するとその様子を見てたクラスの男子の目線が明らかに殺意剥き出しになっていた。やめてただでさえ拓真以外友達いないのにこれ以上敵意向けないで……


「いや〜坂本先輩ってあんな表情もするのかギャップだな」

  拓真は何やら感心した様子で話し始めた。


 「何がギャップだ。お前のせいでこんなことになったんだぞ。人が助けを求めたのにハシゴ外しやがって」


「いや愛する子には旅をさせろっていうじゃん?」


「何が愛する子だよ。気持ち悪りぃ……」


 俺は拓真に文句を垂れ流しながらも内心、昼休みを少し楽しみにしている自分に嫌気が差していたのだった。


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