第2話 異性として 「一部訂正」
「私じゃダメかな?」
優美さんは俺を見つめて顔を真っ赤にしながら真剣な顔をしてそう言ってきた。正直、何を言われているのか全く理解できず思わず黙り込んでしまう。だが何も言わないのは流石に違うし悪いので俺は頭をフル回転させて必死に答えを導き出す。そして唯一導き出した答えはーー
「……俺が振られたから励ましてくれたんですよね? 優美さん昔から俺が凹んだ時は慰めてくれたし今回もそうやってーー」
「違うよ!」
俺がまるで自分を納得させるかのように早口で言うと優美さんが大きな声で遮ってくる。その表情は今までに見たことないくらい真剣で俺はその瞬間、察してしまった。優美さんが本気で俺のことを「男」として見ていると言うことに。
「………本気なんですね」
「本気じゃなきゃこんな事言わないよ……春樹くんのバカ、アホ、ラブコメ主人公」
優美さんはかおをぷくーっとフグのように膨らませて俺の胸をペチペチと叩いてくる。その仕草は美香が怒ったときとそっくりでやはり姉妹なんだなと一人感心してしまう反面、まるで美香にされてるようで少し心が痛んだ。てかラブコメ主人公って何? え? ひどくない? てかラブコメ主人公なら幼なじみとイチャイチャルートなんだよなぁ……俺がそんなことを考えていると優美さんは
「今、美香のこと考えてたでしょ」
「えっ?! い、いやそんなことないですよ」
俺は優美さんの思わぬ発言に思わず動揺して突拍子もない声を上げる。すると更に優美さんは、
「絶対嘘。私のこと見て「美香に似てるな〜」って 思ってる顔してたもん春樹くん」
と俺の考えまでビタ読みしてきた。いやエスパーかよ……すると、優美さんはさっきから握り続けている俺の手をジワジワとくる痛みで抓ってきた。
「いや、あの……い、痛いんですけど……」
「私せっかく頑張って春樹くんに告白したのに他の女の子のこと考えてた罰」
優美さんはふんっと鼻を鳴らしそっぽを向きながらまだ俺の手を抓ってくる。あのそろそろもう俺の手が赤くなってきて……うぅ痛いぴえん。
「他の女の子って言っても優美さんの妹じゃないですか……」
俺が抓られながらせめてもの反論をすると優美さんはそらしていた顔を俺に向けてじっと見つめ少し頬を赤らめながら
「妹だって恋愛になったら関係なく敵だもん……それに嫉妬だってしちゃうもん……」
「……………っ」
俺はあまりの可愛さに思わず口籠ってしまった。いやそれはずるいよね?流石に。ただでさえ容姿が良くて大人っぽい雰囲気の優美さんが途端に甘えん坊みたいな顔をして甘えてきたらみんな即落ち間違いないしだよこれ……てかなんでこんな可愛い人が俺のこと好きなんだよほんと……俺がそんなことを考えていると優美さんは自分が抓ったところを優しく撫でながら
「春樹くんからしたら私は幼なじみのお姉ちゃんかも知れない。だけど、私ずっと昔から好きだったの。男の子としてずーっと。だから美香が春樹くんを振ったって聞いたとき正直、チャンスだなって思った。悪い子だよねほんと……だけど本気なの私。だから幼なじみのお姉ちゃんとしてじゃなくて女として、真剣に考えて欲しい」
優美さんは俺に想いを素直にぶつけてくれた。俺は胸が熱くなる。今まで誰かに「好き」なんて言われたことなんてなくて美香を追っかけるのが当たり前だった。当然、告白されたこともない俺からしたらなんて答るのが正解なのかかわからない。だから俺も自分の想いを素直にぶつけた。
「正直、振られたばっかりで気持ちの整理がつかられてないんです俺。だから優美さんの気持ちには答えられません。今はまだ」
「……今はまだ?」
優美さんは「どういうこと?」という顔で少し涙目になりながら首を傾げて聞いてくる。
「今はまだ付き合うとか考えられないし幼なじみのお姉さんって思っちゃってるけど、「友達」として優美さんと俺も仲良くしたいって思ってます。だからそのその……」
俺は一度間を開け、大きな深呼吸をして
「まずお友達からじゃダメですか……?」
俺がか細い声で優美さんの様子を窺うように聞くと優美さんは天使のような笑顔で目から涙を溢しながら
「……うんっ! 改めてよろしくね春樹くん!」
こうして俺と優美さんは今更ではありながら友達になった。
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