第4話 優美さんとお昼ご飯

優美  「今授業終わったからそっち行くね!」


昼休みになってすぐに優美さんからLINEがくる。チャイムが鳴った瞬間にLINEの通知が来たのでその速さに思わず笑ってしまった。そして俺もLINEを返す。


春樹  「了解です。でも俺昼ご飯いつも購買なので買ってきてもいいですか?」


 俺は高校に入ってから毎日購買生活をしている。うちの両親は共働きでどっちも忙しくお弁当を作ってもらうなんていうのは夢のまた夢の話で。それに俺自身、自炊できるほどの料理の腕前もないので結論、購買で買う選択肢しかなかった。

 だが購買はいつも人が多くて実際に食べたいものを買えるかは微妙なライン。ちなみに俺は焼きそばパンとコロッケパンにオレンジジュースがお決まりなんだけど毎回、購買まで全力疾走してようやくゲットできている状態で正直あれ億劫なんだよな……

 俺はそんなこと思いながら購買に小銭入れ片手に向かおうとすると目の前に肩で息をして少し汗をかいている優美さんが現れた。


 「はぁ……はぁ……よかったまだ購買行ってなかった」


 「どうしたんですか? そんなに息荒げて。それに俺が購買行ったらなんかまずいんですか?」

 俺が首を捻って訊ねると、優美さんは一瞬ニヤッとして俺の手を掴む。

「とりあえず行ってからのお楽しみ! ほら行くよ!」

そういって俺は優美さんにただついていく。あれ俺の昼ご飯どうする気なんだろ……まさか飯抜き? あっまさかそういうプレイ? ………何いってんだろ俺。

 自分の頭の悪さに少し悲しくなりながらとりあえずついていく。そしてついた先は3年生の校舎の人気のない階段だった。


 「よし、人はいなさそうだね。じゃあここで食べよっか」

優美さんは「よいしょっと」とおばあちゃんみたいな声を出して階段に腰をかける。俺も少し距離を置いて隣に座った。


 「あの、俺のお昼ご飯は……?」

俺が恐る恐る優美さんに聞くと、優美さんは手持ちの保冷バックから何やら取り出す。そして、


 「じゃじゃーん! はいこれ春樹くんのお昼ご飯!」


 「はへぇ? こ、これって」

 俺は思わず気持ち悪い声を出してしまう。だがそれも無理ない。だってなぜなら目の前に「俺の」お弁当箱があったから。しかもこれ小学生から使ってたやつだしてかなんで持ってんの? えっ?

 俺が状況を把握できずにいると優美さんは説明するように話し出した。


 「私ね、春樹くんがずっと購買で食べてるの実は知ってたの」

 んん? 知ってたの? どゆこと? あぁ美香経由か。姉妹だもんな。美香、俺のこと優美さんになんて話してたんだろうな……ヤベェ悲しくなってきた。


 「私ずっと春樹くんのこと見てたから」


あれ? 美香経由じゃない? てか見てた……?

しかもずっと?


 「それで、どうにかして春樹くんに栄養の良いご飯を食べさせたいと思って昨日、春樹くんのお母さんにLINEで相談したら「優美ちゃんが作ってあげてくれない?」って言われたからせっかくだから春樹くんが使ってるお弁当箱をもらっちゃったんだ。えへへ」

………wow。えへへとか言ってるけどやってること割とやばくね? てかなんでうちの母さんとLINEやってんの? えっ? 何? 俺がもう思考がごちゃごちゃになってわけわからないことになっていると優美さんは俺の顔をしたから覗き込むように少し上目遣いで


 「だから味は分からないけどよかったら食べて欲しいな……?」

……いやでも流石に……でもそんなこと言われたらさ……
















 「ぜひ! めっちゃ嬉しいです食べさせてもらいます!」

 ……まぁそりゃそうなるよね。だってさ? 学校一可愛いって噂されてるような人が俺の栄養のためにお弁当作ってくれたんだろ? もう幼なじみのお姉ちゃんだとか俺のこと観察してたとかどうでも良いや〜いただきまーす。

 俺はそのまんま何も考えず勢いでお弁当を開ける。中身は卵焼きに唐揚げにミニトマトにその他おかずが入っているとてもシンプルだが栄養面の考えられたもので構成されていた。俺はそれに思わず「うまそう……」と口をこぼした。

 すると優美さんは嬉しそうに「ほんと?! よかったぁでも味はどうかなぁ……」と不安そうに俺をじーっと綺麗な瞳で見つめてくる

 そして俺はゴクリと唾を飲み卵焼きを口にした。そして俺はその味付けに思わず驚いてしまった。ちなみになぜ卵焼きなのかって理由はシンプルに一番俺が好きなものってのとだいたい卵焼き食べれば他がうまいかどうかわかるって何かの動画で見たから。


 「やばい、まじでうまいですこれ……」

卵焼きの味は俺のドストライクの少し甘めの味付けで俺はその勢いで他のおかずも食べ進める。そしてそのどれもが俺の大好きな味付けで気づけばあっという間に半分ほど食べてしまっていた。


 「すごい食べっぷりだね。そんなに美味しい?」


 「めっちゃ美味しいです。これなら毎日でも食べたいです本当に」

俺が素直にいうと優美さんは大きく息を吐いて安堵の笑みを浮かべる。

 

 「はぁ〜……よかったぁ。作った時から食べてもらえるか不安だったから」


 「優美さんがせっかく作ってくれたものなら何だって食べますよ」

俺が笑うように言うと優美さんは少し照れた表情で


 「もうっ、そういうところが春樹くんの優しくてかっこいいところだよね」


「い、いやそんな……」


「ふふっ照れちゃって可愛いなぁ〜さっ私もたーべよ。ん〜! 美味しいねこれ。


 俺と優美さんはそのあと仲良く話しながらご飯を食べ進めたが俺は優美さんに言われたことにドキドキしすぎて正直、話の内容なんて頭に入ってこなかった。




 









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る