背徳の紅"第二話、憤怒"

「ちっす、出迎えありがとさん。」

「礼を言われるようなことじゃねぇだろ。」


今日、"群"に一人また新しい人材が来た。

俺がいる"群"は、この世界の4つの国にいずれも属さない組織。

捨て子、無実の追われ人。様々な存在に溢れている。


俺は両親の仇に関する情報集め。

そして知人であり新人である、アルトゥール=ゲオル=パラケリアは・・・


「まさかおまえが狙ってる"鉤爪"に狙われることになるとはなぁ。」


といった理由である。

金髪のセミロングでメガネをかけた、愛称"アル"。

女性らしさより頼もしさを感じさせる。


俺たちの世界にある、四つの国。

そのうち、俺とアルの出身である"白辰"は砂漠の地。

魔法の有無に関わらず、技術の発展に力を注ぐ反面、治安は最低。

俺の両親の暗殺や、誰か一人狙われるといった事情そのものは珍しくもなかった。


しかし、慣れてるとはいえ死んでは意味もないということで、アルは追われ人になり、俺が招待して群に逃げ込むような形で入ることになった。


「・・・なんでお前が追われてんだ。」

「知らんよ。まっ、私の錬金術の腕前が買われたってことかな!」


アルはからから笑いながら言うが、他人事ではない。


「・・・でもイグニス、おまえに理由があるかもしれんぞ。

覚えてるか?おまえが1年前、大怪我して私の所に転がり込んできたの。」


忘れないはずもない。

その出会いによって、俺は一度命を救われ、更に俺が戦う理由を知ったアルは、現在の大剣"ブレイズ・ディザスター"を作って俺に授けた。

その時に俺を襲ったヤツらの所属は不明だったが・・・。


「まさか・・・。」

「そ、どうもあれ、"鉤爪"からの差し金だったらしいんだよ。」


それを聞いた俺の頭で何かがキレる。

重要な手がかり以上に、かつてない程の衝動が・・・。


「まぁ依頼で討伐でも・・・イグニス?」


殺さなければならない。

理由は恩人を狙ったこと。

理由はそれで充分だ。


「・・・止めても無駄、か?」

「・・・」

「・・・分かったよ、おまえに依頼する。

でも誰かは連れて行けよ。」


踵を返す。

だが俺は・・・


「無理だな。」


そう言って走る。

アルが後ろから何か言うが、まるで聞くつもりもなかった。




──────────





白辰にて、それは起こった。


砂漠の一帯で、戦闘は起きた。

片方は数人、所謂ターゲット。

片方は単騎、イグニス=クリムゾン。


「死ね。気に食わねぇんだよ。」


姿を見せれば襲いかかった暗殺者たちにイグニスは冷たく言い放つ。

ああ、確かに前に襲ってきた連中だと認識しながら

無情に、理不尽に、身体強化にて負荷も考えずに授かった大剣で肉体に還元する。


相手は獣人か、或いは翼人か?

どうでもいい、殺せば終わりだ。

無茶を平然と行いながら、次から次へと鏖殺する。


そして最後の一人───────


「・・・ハッ!」


武器が鉤爪だった。

鉤爪ではあるが、"ヤツ"ではない。

分かっていながらも、口角を上げた狂笑が抑えれなかった。


「くはっ、はははははッ!!」


無惨に殺してやろう。

大剣は大きく振り上げられる。

後は振り下ろすだけ。


「──────あ?」


敵は、尻もちをついて、涙を流していた。

"やめてくれ"と。

"知っていることなら話すから"と。


大剣はゆっくり下ろされる。

冷めた目で、何も言ってないのに、語り出す敵を見る。


狙っているのは、優秀な研究結果を残した人物を中心としているだとか。


もう面倒だ、とイグニスは思った。

また、命乞いの言葉しかでなくなった敵に手を差し出して─────


「死ね。」


炎魔法にて、盛大に灰にした。

生かして情報源にする手もあったが、恩人を狙ったことが、どうしてもも許せなかった。


「・・・帰るか。」


身体強化で体が痛い。

擦り傷やら切り傷も多少受けたのも合わさって。

そんな傷を見て慣れたと言って己を嘲笑い、帰路についた。

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