無慚軌跡
無慙軌跡"プロローグ"
─────ふと、気がついた時から"ソレ"が不快だった。
他者に理不尽に振り翳す暴力が、罠が、略奪が、非人道的な実験が、或いはそれ以外も。
この世のありとあらゆる"悪"が不快だった。
なんだアレは、アレが赦されるものか。
まるで汚物だ。塵芥だ。屑だ。
生かしておけるものか、在ってなるものか。
滅ぼしてやる、一人残らず──────!
彼は、始まりからして人間ではないと思わせる。
彼の幼い頃、その両親は金に目が眩み白辰の人体実験を行う機関に彼を売り出そうとした。
売り出される当日。
彼の家には、両親と機関の受け取り人の死体があり、生き残りは瀕死の彼だけだったという。
そして、手にはナイフ。
そう、殺めたのは彼だ。
彼は抵抗したのだろう。
だから痛めつけられた。
それでも抵抗した。
更に痛めつけられた。
それでも。
それでも。
負けず、死なず、諦めず。
遂に殺して見せた、一片の躊躇もなく。
その後、病院にて彼は一言も誰かと会話を弾ませることはなかった。
質問をされれば、必要なことだと理解したものだけに返答した。
退院後は、孤児院にて育つ。
そこでも彼は異端だった。
相も変わらず会話すらしない彼はイジメを受けたが、それら一切を尽く無視した。
またも独りになった彼は、ある日を境に敷地内の端で毎日素振り始めた。
剣は無いので仕方なく棒で。
そしてその一振全てに、怨念じみた殺意が在った。
大の大人ですら恐怖し、誰1人として近寄れなかった。
ある日素振りをしていなかった彼に、孤児院の教師が質問した。
"何故素振りを始めたの?"
それに対し、彼は即答した。
"この世の屑を、一人残らず殺す為だ。"
その怨念、その殺意。
それに対して教師は何も言えなかった。
彼のことを、最早人間と思う者は誰も居なかった。
それどころか、魔族ですらない。
もっと何か、別のイキモノとして彼は思われていた。
そして数年後、僅か14歳で孤児院を出る。
全ては、この世の悪を滅ぼす為に────。
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