第3煙 安田末子の最後

「なぁ京介。俺らしばらく働かなくていいんじゃねぇか?」


「るせぇな。ジャグラー打ってくらぁ」


「相変わらずだな。京介は」


京介はパチプロだ


「さぁて俺は愛煙タバコ吸いますかね」


天馬の愛煙タバコはショートホープ

短いけど憎めないアイツだ


「ショッポはうめぇなぁ。タバコはショッポに限るな」


そう。この喫茶店には天馬専用ショッポカートンが置いてある。もちろん金はマスターが払っている。金を預けてあるからだ


「京介いねぇし。不安だなー。最近物騒だからな」


「カランカラン」


「…」


マスターは客に無口だ


「コーヒー1つ」


そう言って男性は注文をした

中肉中背といったところだろうか


「客か…珍しいな…まぁ俺とは離れてるしなにもないだろうな」


しばらくしてマスターが声をかけにきた


「…あちらの男性がお呼びです」


「は!?!?」


「ということで君に依頼をしたいんだけど…いいかな?」


そういった男性は天馬にある事件のことを語った。

その事件とはこの前あったキャバクラ嬢殺害事件のことだった


「それで俺になにをしろって言うんですか?」


天馬は当たり前のことを当たり前に聞いた


「あの事件は私が担当弁護士なんだ。はい。名刺ね。事件のことを解決したのはここにいる若者だと聞いてね。君だと思った訳さ」


「なるほど…弁護士さんですか」


渡された名刺には本庄弁護士事務所と書いてあった


「本庄さんでいいんですか?」


「ああ。私が本庄だ。よろしく頼む」


「事件のこと話せばいいんですか?」


「そういうことになるな。なるべく詳細に頼むよ。君はお金次第だと安田末子さんから聞いてる。いくらがいいかね?」


「お金次第なんてことはないっすけど。面倒なことならそうなりますね。本当は事件のこと黙っといてやるからと言って100万円と吹っ掛けた訳で…」


「なるほど。君は彼女のことをかばおうとした訳だ。彼女が自首しなかったら君は罪人だった訳だ」


「そ、そんなつもりは無かったんすけど」


「まぁいい。その辺の話を詳しく聞かせて欲しい。いくらで引き受ける?」


「あの俺の相棒がパチスロに行ってるんで相棒にも確認したいんすけど」


「京介くんだろ?話には聞いてるが生憎私は喧嘩なんてするつもりはないから安心したまえ。えーと。名前はなんというんだい?」


「天馬っす」


「わかった。それで天馬くん。あの事件はなんの手がかりもなく未解決事件になろうとしていた。お手柄だと思うよ」


「いや。そんなつもりはなかったっすけど」


「まぁそう言うのはわかっていたよ。手付金20万でどうだい?情報提供次第ではもう少し払うよ」


「生憎俺も金に困ってないんでそんなに金払ってもらわなくてもいいっすよ?」


「君は面白いね。若いのに金に無頓着だとはね。まぁこれはとりあえず受け取ってくれ」


「ありがとうございます…」


「マスター。いつも通りによろしく」


そう言った天馬はマスターに20万ほど入った封筒を渡した


「…預かります」


「んで俺の知ってる範囲でしか話せないがそれでもいいってことですか?」


「勿論。多くは求めないよ」


天馬はこの前の事件についてなるべく詳細に話した


「ほう。汚れた金と女を燃やしたと。面白い。弁護のしようがない。」


そう言った本庄は笑っていた


「安田末子は罪を償うと言ってました。そして自首したんです。やったことは人殺しです。罪は重いでしょうけどなんかこう。どうにか出来ませんかね?」


「自首してきただけでも弁護するに値するけどこれは難しいね」


「ですよね…本庄さんは今情報を集めてるんですか?」


「それは警察の仕事だよ。私はあくまで君にプライベートで話を聞きに来ただけで仕事のつもりではないよ」


「それって最初の情報提供次第ではお金がって話と噛み合いませんけど…」


「なるべくいい情報が欲しかったんだ。それと情報提供次第といったが天馬くんを証人にしたかったといえば私の本音が分かってもらえるかな?」


「俺がですか?」


「証人は必要不可欠だ。まぁ天馬くんに不利になる。黙っといてやるつもりだった。という言葉は聞かなかったことにするよ」


「ありがとうございます…俺次第で判決が決まる訳ですか?」


「そうとも言えない。私の弁護力にもよるよ」


そう言って本庄はまた笑っていた


「裁判はいつなんですか?」


「来週だ。どうせ天馬くんは空いてるだろう?」


「失礼っすね。まぁ空いてますけど」


「無礼は許してくれ。冗談のつもりだったんだ。」


本庄は笑っている


「カランカラン」


「おお天馬。また依頼か?」


「京介!実はこういう訳でな…」


天馬は京介に事を話した


「その前に一服しないか?本庄さんとやらも吸うから喫茶店なんかに来たんだろ?」


京介はタバコを持ち出した


「いや私は天馬くんに会いに来ただけでタバコを吸うつもりじゃなかったが。いいよ。付き合ってあげよう」


「じゃあ俺も。マスター!ショッポ!」


「本庄さんはハイライトなんすね」


「天馬。ハイライトは庶民のタバコとして有名だ。弁護士さんだからといってハイライトを吸うなってのもおかしいだろ?」


京介が説明する


「それもそっか。ハイライト美味いっすもんね」


「あぁ。ラム酒の香りが心地いいよ」


3人で安田末子の弁護を開始することとなった


「ってことで証人になってくれてありがとうね。天馬くん」


「いえ。安田末子はきっと更生してくれるはずです。その為に証人になったまでです」


「京介くんはいなくていいのかい?」


「あいつは表で待たせてます。さすがに本庄弁護士事務所で喧嘩はおきないっすよ」


天馬は笑っていたが内心は不安と緊張しかなかった


「明日が裁判の日だ。より詳細に聞かせてもらおう。っとその前にだ。証人になってくれた時点で天馬くんは仕事をしてくれてる訳だ。50万。財布に入らなかったら振込でもいいよ」


「え。もう貰っていいんすか?振込っても俺口座とかないんで財布には入らないですけどバッグに入れておきます。どうせマスターに預けるだけなんで」


軽快にトークをする2人

しかし本庄は本題に入った


「天馬くんが自首させた。これで十分なんだ。あとは私の仕事だ。明日の裁判ではありのままを話してくれればいい。もちろん100万吹っ掛けた経緯は抜きでね」


「わかりました」


そうして1日が過ぎ裁判当日


「あら。本庄さん。探偵さんと一緒だなんてどういうことかしら?」


「久しぶりです安田末子さん」


「探偵さんに依頼なすったの?」


「いえ。プライベートな用事で出会い。話を聞いたら証人になってくれたので」


「そう。探偵さんまた儲かったわね」


安田末子は判決前とは思えない顔で笑っていた


そして裁判は進み証人である天馬が事件のことを語った。程なくして裁判は終わった

主文 安田末子被告に執行猶予10年懲役28年を言い渡す。といった具合で裁判は幕を閉じた


「執行猶予付きだなんて。さすが探偵さんね。ふふ。」


「いえいえ。本庄さんの弁護のおかげですよ」


「私には分かるわよ。探偵さんの優しい気持ちがね」


「そんなつもりじゃないっすよ。」


無事安田末子の裁判が終了した

これで全て終わりを迎えた

探偵天馬にくる次の依頼はどんな依頼か

それは傍聴席にいた京介にも分からない

ただいつしか探偵喫茶と呼ばれるように

なっていった。

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