5,KILLINGFIELD

41

「すでに敵は活動を開始しているようだ、オルチェストラを展開し、トロイメントを占拠、アプルーエ連合王国政府も手出しづらい状況だ。こちらの作戦としてはエッダロキとスルト、セイズ、アンドラング、ナコレヴィーシェーット、ヴィーズブラーインを展開しマーダーエンゼルの支援を受けながらオルチェストラの相手をする。その隙にルーンズを同乗させた、ノルズリ、スズリ、ヴェストリ、アウストリとそれらを護衛するオーディンを敵本部へと潜入させる。トールは本艦の護衛のために待機。これよりリトルバスターズ作戦を開始する」

「え、リトバス作戦?」

羽渠が一度聞き返したが、みんな無視した。

42

 オルチェストラ八個師団、在庫放出といったところか?スーは思った。オルチェストラは複数の種類のアームヘッドを集めた師団として販売しているという名目のアームヘッドらしい。約300機のアームヘッドはそれだけで小国の全戦力に匹敵しヒルドールヴ・スリーピィヘッドが現時点で最大の私設武装組織という証明になっている。

「シュヴァルウウウウツシルウウウウウトオオオオオオオ!」

通信が入る。

「板利・・・」

「おまえをこうやって嬲れる日を待っていたよ!大切な人を奪われて悔しいか?安心しろすぐに同じとこに送ってやる!」

「クズが」

そういって通信を切った。

43

 五機のアームヘッドはヒルドールヴ社の本社の大広間らしきところに着陸した。オルチェストラはほかのアームヘッド、特に、ロキに集中しておりこちらへの興味は薄かったようだ。古城のような外見の建物の城壁に当たる部分や城門をぶち破って侵入したここのほうがもっと危険である可能性はもちろん高かったが。

 ルーンズを放出し、五機は互いを背にしながら周囲を警戒した。

44

 間違えて屋上に来てしまったらしいとフェイは考えた。何事もないかのように静寂な夜。そこに輝く月を見ながらフェイは次はどこに行くべきか考えた。

「お姉ちゃんきれいだね」

急に誰かが話しかける、振り向くと一人の少年がいた、いや子供と言うべきか。彼の割と整った顔立ちは、不気味な不自然さを感じさせた。

「フェイだし、フェイはそこまで年いってないし、誰だし」

フェイはすねたように言う。

「僕はロブ、一応AIRって呼ばれていたんだ」

少年はフェイに答えた。

「フェイのパパはどこにいるの?」

彼女は少年に問う。

「武蔵さんか、どこだろうね、でもこの屋上にはいないよ、お姉ちゃんはバカだな。こんなところにいるわけないでしょ」

ハハッと彼は笑う。

「ひどいやつめ」

フェイはロブをにらむ。とりあえず階段降りなくちゃ。フェイは階段に向かう。

「待ってよ、どうせだから僕の最後につきあってよ」

AIRが光の粒子を手から出す。AIRは空中制御ユニットを加速に使い、フェイに近づいた。

「さよなら」

ロブは言った。

45

「ひどいやつめ」

フェイは音を壁のように発生させ、ビームソードを受け止めた。

「すごいね、フェイちゃん」

「どうだ、だれがさよならだって?」

フェイは自慢げに返す。

「どうやら僕のようだね」

ロブが血を吐く。

「どうしたの?」

「キリングフィールドの限界だ、もうじき僕は死ぬ。もういって、僕の死体なんてみたくないでしょ」

ロブはあきらめたように全武装を収納し、あきらめたように座った。

「・・・さよならロブちゃん」

フェイは少し哀れむように言った。

「さよならフェイちゃん」

46

「面倒くさいんだよ!クソが!」

マンナズは悪態をついた。会議室らしい部屋のイスに座って何度目かの休憩をしているマンナズは近くのイスを蹴っていた。

「ふ、ヒステリー女は敵にもいたんだな」

「だれ?」

普段の癖かマンナズは態度を取り繕う。

「だが冷静に考えてみれば、そういう性格も案外悪くもないかも知れない、なあ?」

短い髪を無理矢理束ねたような髪型をした少年が言う。

「キリングフィールドってやつなの?」

「俺は人間だよ、人間のつもりだった。アレックス。あいつらはMACHINEGUNって俺を言うんだけどね」

アレックスは笑う。

「どうしてキリングフィールドなんかになったのさ」

彼女は興味深そうに問う。

「気にいっちまったのさ」

「いったいなにを?」

「鈍感だな?最後まで言わせるきかよ」

彼は少しためらった後、

「リトゥナだよ!」

アレックスがそういうまで気付いていなかった心中を告白するとMACHINEGUNは全身の重火器を展開した。

「俺は選ばれたんだ!キリングフィールドに!それが儚い身でも!」

アレックスの照準は適当だ。マンナズに当てる気など無いように見える。

「あなたは最高のバカだな!」

「バカでいいんだよ!」

47

 会議室を穴だらけにし弾が尽きても結局彼はマンナズにとどめを刺せなかった。アレックスは膝をついたまま動かなくなった。

「馬鹿な奴」

マンナズはアレックスの目を閉じてやった。

「畜生」

マンナズはつぶやいた。

48

 なんだかテレビがたくさん並んでいる。カノにはそれがなんだか分からなかった。なんだかテレビの下のボタンを押している奴がいる。

「一体なにやってんだ」

カノは問う。

「ゲーム」

髪留めをした少年は答えた。

「おもしろいのか?」

「別に」

「ところでおやじ知らない」

「知らない」

「じゃ・・・じゃあな」

なんか関わらない方が良さそうだ。

「待って、あなたルーンズでしょう」

「じゃあおまえがキリングフィールドか?」

「私はレベッカ、そんなんじゃないわ。私はキリングフィールドのRIFLEなんかじゃない。もう終わったの」

「なにが?」

「ゲームオーバーよ」

RIFLEは腕からライフルを展開した。

「こんなロボットの体なんていやにならないの?ルーンズ?」

レベッカは問う。銃を構えてカノを見つめる。

「私は自分の生まれたままの体で満足しているわ」

「選択肢をミスったのね」

何かを悟ったかのようにレベッカは銃口を自分の口に入れる。

「お・・・おい」

カノはレベッカを取り押さえる。ライフルをレベッカの口から引っ張り出す。

「助けたつもりなの?」

「違う!なんでそんなことするのかって?」

「もうゲームオーバーって言ったでしょ」

レベッカは続けようとする。もう一度カノがやめさせようとしたとき、レベッカは言った。

「終わりのほうが先に来たみたいね」

そういうとレベッカは目を瞑った。目を瞑ったレベッカの口から血が垂れる。

「おい?おい?おい!?」

49

「あ~?」

ハガラズはいいものを見つけた。畳だ、ハガラズは畳の感触が大好きだった。しばらく寝転がっていてもいいよね。

「お嬢さん、道場で寝転がっていけません。ささっ立ってください」

ハガラズは注意されたので仕方なく立つ。

「ちぇっ。ちょっとぐらいいいよねー」

「だめです」

その男の子は”運命”と書かれた掛け軸の近くに座っている。防具を着込んでいる。

「だれー?」

「拙者はジェームズ、SWORDと拙者を呼ぶもの達はみな自分たちが帰らぬであろうという戦場へと行った。もう拙者をそう呼ぶものは誰もいない。忌むべき名ではあったがそこは無念でござった」

「ジェームズくん、私はハガラズー」

「ハガラズー殿、なかなかの手練れだとみた、拙者と最後の手合わせをしてくださらぬか?」

「いいよー」

ジェームズは満足そうな笑みを浮かべ立ち上がった。SWORDは一礼すると、剣を展開した。

「ではジェームズの一世一代の対決だ!」

「こいよー」

50

 剣が折れる。ハガラズはジェームズの一撃に反応し剣を掴み、そのまま勢いで折った。

「またしても我が剣が折られるとは・・・」

ジェームズは折れた剣に目をやる。

「しかし、彼らと再戦できぬのが我が人生唯一の悔やみ、そうだ彼ら、山田殿と際田殿に伝えてくれ。剣は勇敢に戦ったと」

というと落ちた剣を拾い即座に腹に刺した。

「痛い、やっぱ痛いな、いや腹に感覚系はなかったっけ?それじゃあ?」

ハガラズはジェームズを黙って見つめていた。

「どうしてこうなってしまうのかしらね」

ハガラズはつぶやいた。

51

 ”外なる神”五機のうち四機の起動を確認したLEADERは自分以外のキリングフィールドの死亡を察した。自分は”パノプティコン”を操作しなくてはならないので最後まで生きている必要があった。待っていろみんな、すぐにいく。

「ケヴくん?それが例の玩具ぁ?」

見知らぬ誰かが自分のかつての名を口にした。

「私はエイワズ、お父様には興味ないけど。その玩具には興味があるの。くださらない?」

「断る」

LEADERは”パノプティコン”の発射スイッチを押した。

 宙空に存在する”パノプティコン”は目標を性格に完全に抹消できる次世代型光学兵器を使用した宇宙衛星タイプのファントムだ。”パノプティコン”はエイワズにねらいを定め・・・・・・。

52

 ”パノプティコン”の制御画面に映ったのは「ERROR」という文字だった。エイワズはそれを見て、

「まあノルンたら、ロマンティストなのね。愛しの彼の名前をハッキング画面に表示するなんて?」

「どういうことだ?」

「読めなかったの?もうあんたの玩具はもらったよ」

ジェームズに閃光が降り注ぐ。

「ははは」

「貴様・・・?」

息も絶え絶えにジェームズが言う。

「これの威力が低いのかあんたが頑丈なのか知らないけど、まあ死んでもらうまでやらせてもらうわ」

53

 完全に機能停止したLEADERだったものの残骸をみてエイワズは笑った。

「さようなら、アームヘッドもどき」

お父様はこの近くにいる。でもまあ顔を合わせていく必要もないか、三年くらい前に顔を合わせたし。それよりもう一人の奴がエイワズには気になった。この戦場をあざ笑いながらみてるもの。本当の意味での”外なる神”を気にしていた。

0.1

「ふふふふふ、あはははは」

その笑い声は急に広間の奥から聞こえてきた。各機がそこに神経を集中させる。

「いらっしゃい、私のおうちへ」

「だれだ?」

シェネロティカが問う。

「忘れちゃったの?私はリトゥナ、リトゥナ・ヒルドールヴ。人類初のアームヘッドになることに完全に成功した人、”リヴィングフィールド”よ」

その姿は流線型の手足を持ち、髪であった部分はコードになり、目はゴーグルになって口や鼻は遠目からは見あたらなかった。

「さあ、皆さんに紹介します。私の一番最初の友達”HILDOLV”よ」

奥からオオカミの形をしたアームヘッドが現れた。

「さあ遊びましょう」

リヴィングフィールドはHILDOLVの上までジャンプし飛び乗った。

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