6、LOSTMAN

54

 エッダロキはほとんどのオルチェストラを破壊したものの本体の損傷が大きく、地上に着陸するしかなかった。ほとんど破壊されたアームヘッドの群れの上に降りた。一機のアームヘッドがこちらに向かってくる。エッダロキはソードを構え、その方向に向かった。

「黒盾ええええええええええええええええええ」

「板利ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

二機が交差する。瞬間両機は自壊する、しかしコクピットはすでに開いており、飛び出した人影が、お互いに銃口を向ける。

「貴様がいなくなって!私は総てを喪ったんだ!おまえには消えてもらう!」

「私は新しい生き方を見つけた!」

お互いの銃が発射される。アマサワの、レーザーガスは黄盾の放った弾丸を焼き尽くした。スーは銃を持ち替え再び撃つ、第2撃が遅れた板利はそのままそれを心臓に喰らう。

0.2

 HILDOLVは後ろ足で立ち上がり、首が体の側に向かって倒れた。爪であった部分に手足が生え、オオカミの頭があった部分に新しい顔が現れた。

「さあ行きましょう」

リヴィングフィールドはHILDOLVの中に溶けて無くなった。

HILDOLVの片方の目に光が出る。

 そしてもう一つ、額の第3の目が・・・。

0.3

「うごかない、うごかないの?」

際田は言う。

「こちらヴェストリ行動不能」

シェネロティカも言う。

ノルズリもスズリも動かない。あのアームヘッドの特殊能力のせいか?

0.4

「オーディンいけるね」

宝生は問う。オーディンだけは動ける、というなぞめいた核心があった。そしてオーディンはそれに答えた。オーディンは三つ目の怪物へと向かっていく。原因はあの三つめの目だ。

「動けるのはお姉ちゃんだけみたいね。さあ遊びましょう」

<少しだけ待ってくれ、我が姫よ>

誰でもない声がリトゥナに語りかける。

「ヒルドルブ?」

0.5

<私はヒルドルブと呼ばれていたものだ。私はかつて女王に裏切られた王であった。だがそうもうどうでもいいこと、私にはリトゥナがいる。彼女の憧れに従ってあなたの姿を取っていた無礼は詫びよう。ユグドラシルの王よ>

HILDOLVが語る。

「ヒルドルブ・・・」

<リトゥナ、残念だが、きみのリヴィングフィールドも完璧ではなかったようだ。きみと一体化した私には分かる。だが私もきみと共にどこまでもいこう>

「いいのよ、わかっていたわ」

<さあ私と戦うのだ!オーディン!私はきみをたおし、彼女の憧れそのものになる!>

「来なさいマイフット」

マイフットと呼ばれた物体が奥の広間からやってくる、壁と天井の間で反射と屈折のような動きを繰り返しながらここにやってきた。それは瞬く間に槍の形に変形する。

0.6

 オーディンがグングニルを構える。HILDOLVはマイフットを構えて突進する。グングニルはマイフットをさばく、オーディンはHILDOLVに蹴りを入れる。のけぞったHILDOLVに槍の一撃を加える。グングニルは第3の目を貫く。

0.7

<やはり、きみは強いな。私の負けだ。リトゥナすまない。私が弱いばかりに>

「いいえ、いいのよ」

「気をつけて!」

宝生は殺気を感じた。床や壁、天井から触手が生えた。宝生の言葉に気付いた各機は第3の目から解放され、その触手をかわす。しかしHILDOLVはその触手の一撃を食らう。

<ケヴもやられてしまった。ヨグ=ソトースも目覚めてしまったようだ>

「ヒルドルブ、もう少しだけがんばって!宝生お姉ちゃん!ちょっと付いてきて!」

<いいのか?リトゥナ>

「もういいのよ!あなたはがんばったわ!」

<聞けオーディンよ!この城全体が一機のギガースなのだ。その中枢のアームコアが私たちの来た場所にある、嘘だと思うならそれでいい、私たちだけでいく>

HILDOLVは奥の広間のほうへとはいずりながら向かっていく。

「みんな聞いて!ここはまかせたわ、私はあの子について行く!」

宝生が言う。

羽渠は指を立てて、

「がんばれよ!」

といって見送った。

0.8

 鳴動するアームコアが1つそこには存在した。その近くで一匹のオオカミと少女は満足そうに座っていた。

 グングニルはアームコアに向かって構えられた。投げられた槍が装置を破壊し、鳴動は止まった。宝生が気付くと二人は消えていた。

55

 天井が落ちてくる、怪物の最後の悪あがきだろうか?ノルズリ、スズリ、ヴェストリ、アウストリは四カ所で天井を支えた。

「ねえどれくらいもつんだ?」

シェネロティカが問う。

「しらねえよ、ランと礼、さっさと逃げるんだよ」

イブリーが言う。

「俺は抜きかひでえな」

56

「助けに来たぜ!ハニー!」

スルトだ、炎の剣を構え、天井崩落寸前の大広間に現れたのはスルトだった。炎の剣は大広間より上の部分を焼き尽くした。

「太郎・・・」

「私たちは脇役ですね、分かります」

羽渠がつぶやいた。

0.9

 ヒルドルブは月に向かっていた。トンドルと呼ばれたあの月へ、ああ平穏なあの日々に戻りたい。きっとエクジコウだって笑う図々しいお願い。きっとかなわないだろうけど。空を飛ぶのは今のヒルドルブには無理そうね。でもほら、あっちの下の方にもお月様が・・・。きっとみんなが待っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る